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第二十一話 後北条埋蔵金

織冠高校校歌


一、


秩父の峰に 雲流れ

九国の丘に 朝は来る

機の音ひびく ふるさとに

学びの鐘は 高らかに


ああ 織冠高校

若き希望を 胸に抱き

友と励みて 道拓く

栄えあれ 我が母校


二、


遠く富士嶺を 仰ぎ見て

多摩の流れに 心澄む

真理を求め 技を磨き

世界へ羽ばたく 翼持つ


ああ 織冠高校

誠の旗を 高く掲げ

力を合わせ 未来呼ぶ

栄えあれ 我が母校


三、


夕焼け染まる 丘の上

桜の並木 風歌う

歴史を受けて 夢つなぎ

新たな時代を 切り開く


ああ 織冠高校

理想の光 胸に宿し

正しく強く 歩みゆく

栄えあれ 我が母校



六月。


都大会進出。


その興奮も冷めぬある日。


部室。


劉備が突然立ち上がった。


「北条埋蔵金を探す」


沈黙。


孔明。


「は?」


劉備。


真顔。


「見つけて部費にする」


呂布。


「発想が戦国武将」


関羽。


「埋蔵金……熱いな」


周律。


「乗るんだ」


劉備はホワイトボードへ向かう。


書く。



織冠高校 裏校歌



ざわつく部室。


渡辺美由。


「なにそれ」


劉備。


小声。


「織冠にはな」


「正式校歌とは別に」


「“裏校歌”がある」


風。


妙な空気。


孔明。


「急に伝奇もの始まった」


劉備。


「その歌詞が」


「北条埋蔵金の在り処を示しているという噂だ」


周律。


「都市伝説研究会なんですかここ」


劉備は古びたノートを取り出した。


黄ばんだ紙。


そこに書かれていた。



♪ 狭山の風は西へ吹き

 七つの丘を越えてゆく

 夕日の沈む観覧車

 白き馬飲む水の下


 鐘が三度鳴る時に

 影なき松を掘るべし

 若き獅子らよ目を凝らせ

 黄金眠るは冠の地 ♪



沈黙。


孔明。


「いや観覧車入ってるじゃないですか」


劉備。


「だろ?」


孔明。


「遊園地では?」


関羽。


「風水的にはあり得る」


「急に専門家みたいな顔するな」


そして。


日曜日。


“宝探しの日”。


しかし。


朝。


グループLINE。


呂布。


「ジム」


渡辺。


「美容院」


馬謖。


「野球部練習試合」


関羽。


「町内会の餅つき」


「六月に?」


周律。


「法事です」


嘘だった。


全部。


周律が裏で調整していた。


目的。


二人きり。


現在。


集合場所。


駅前。


いるのは。


劉備と孔明だけ。


沈黙。


孔明。


「……あれ?」


劉備。


少し赤い。


「二人だな」


気まずい。


だが。


出発。


向かった先は。


多摩丘陵。


緑。


風。


そして。


遠くに見える遊園地。


劉備。


指差す。


「西武遊園地だ」


孔明。


「逆に怪しいですね」


劉備。


「だろ?」


孔明。


「いや、ないな」


しかし。


裏校歌。


“夕日の沈む観覧車”。


一致していた。


劉備。


「……行くしかない」


孔明。


「ただ遊びたいだけでは?」


そして。


とりあえず入園した。


理由。


「調査のため」


絶対違った。


まず。


ティーカップ。


回る。


回る。


回る。


劉備。


大笑い。


「はははは!!」


孔明。


「回しすぎ!!」


観客席のおばあちゃん。


「仲良いわねぇ」


二人。


停止。


次。


ジェットコースター。


絶叫。


「うわああああああ!!」


「待って待って待って!!」


終わったあと。


二人。


無言。


孔明。


「……全然怖くなかったですね」


劉備。


「うん」


手。


震えてる。


次。


お化け屋敷。


入口。


孔明。


「こういうの苦手なんですよね」


劉備。


「私も別に怖くない」


中へ。


五秒後。


「うわああああ!!!」


抱き合う。


完全に。


お化け役も引いてた。


「仲良いな……」


出口。


二人。


顔真っ赤。


劉備。


「……暗かったからな」


孔明。


「仕方ないですね」


その時。


帰り際。


孔明が止まる。


遠く。


ベンチ。


男女。


帽子。


サングラス。


しかし。


見覚えある。


劉備。


視力3.0。


止まる。


「……周瑜先輩」


その隣。


橘さん。


仲良さそう。


ジュース一本を二人で飲んでる。


沈黙。


孔明。


「……黒ですね」


劉備。


「黒だな」


周瑜たちも気づく。


周瑜。


硬直。


周瑜


「やば」


橘さん。


逃走。


周瑜も逃走。


「待って橘さん!!」


孔明。


「青春してるなぁ」


夕暮れ。


帰り道。


結局。


北条埋蔵金は見つからなかった。


でも。


劉備と孔明の距離は、


少しだけ縮まっていた。





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