第二十話 勘違いするなよ
熱い戦いが続いていた。
『諸葛亮と呼ばないで』らしくない。
スポ根展開だった。
一秒が数週間に感じられる。
まるで、
読者が試合開始前までは中学生だったのに、
試合終了時には高校生になっているみたいな。
そんな時間だった。
⸻
孔明が破った。
シンデレラストーム。
黒龍高校最大の罠。
そこから。
空気が変わった。
いや。
世界が変わった。
実況。
「流れが完全に織冠高校へーーー!!」
観客。
総立ち。
ペンライト。
タオル。
回す。
回す。
回す。
熱波。
もう意味がわからない。
黒龍高校も焦っていた。
坊主主将が叫ぶ。
「落ち着け!!」
だが。
落ち着いていなかったのは、
自分たちだった。
呂布。
投げる。
ドゴッ!!
12。
実況。
「また12ーーー!!」
黒龍。
ざわつく。
馬謖。
笑う。
馬謖。
「これぞ背水の陣!!」
周律。
「便利ですねその言葉」
劉備。
完全復活。
余計な感情が消えた。
風だけを見る。
仲間だけを見る。
投げる。
カン。
9点。
タモリがうなずく。
「それでいい」
孔明。
静か。
冷静。
もうヤジも聞こえていない。
観客3000人。
全部熱波に変わった。
関羽。
応援席。
泣いてる。
「これが……青春……」
周律。
「急に概念化しないでください」
中山ミツル。
なぜかずっと石嶺先輩を見ている。
「尊い……」
「試合見てください」
そして。
終盤。
スコア。
織冠49。
黒龍47。
最後。
投げるのは。
劉備。
会場。
静寂。
風。
夕日。
タモリは静かに言う。
「力抜け」
劉備。
小さく頷く。
そして。
投げた。
カン―――。
1。
倒れる。
50。
沈黙。
一秒後。
実況。
「決まったぁぁぁぁぁ!!!!」
「織冠高校ォォォォォ!!!!」
「都大会進出ゥゥゥゥ!!!!」
河川敷。
大爆発。
歓声。
タオル。
熱波。
なぜかペンライト。
関羽。
号泣。
「天下統一ィィィィ!!!」
馬謖。
泣いてる。
「街亭回避ィィィ!!!」
周律。
「基準低いなぁ」
呂布。
静かにガッツポーズ。
孔明。
その場に座り込む。
劉備。
笑う。
その笑顔は。
最初にサウナを語った夕暮れの日より、
ずっと綺麗だった。
そして。
タモリ。
静かに帰ろうとする。
その背中へ。
孔明が叫んだ。
孔明
「先生!!」
タモリ。
止まる。
劉備。
「熱かったです」
呂布。
「ありがとうございました」
馬謖。
「ご指導、まさに水魚の交わりでした!」
周律。
「なんで全部故事成語なんですか」
タモリ。
背を向けたまま言う。
「……勘違いするなよ」
風。
夕日。
サングラス。
「おまえらが全国制覇したら」
「俺の給料が上がるんだよ」
「それだけだ」
そう言って。
タモリは歩き去る。
誰も見ていない。
はずだった。
しかし。
周律だけは見逃さなかった。
涙で。
ほんの少しだけ曇った、
あのサングラスを。




