第十三話 完全アウェイ
昨年全国ベスト4。
黒龍高校。
現れた瞬間。
空気が変わった。
全員。
坊主。
綺麗に坊主。
しかもデカい。
圧。
筋肉。
統率。
完全に強豪校。
周律が小声で言う。
「坊主で統一されると急に強豪感出ますね」
渡辺美由。
「でもなんか……」
「ちょっと丸くない?」
確かに。
ぽっちゃり。
去年より明らかに太い。
理由は単純。
ダイエット甲子園対策だった。
体重増加からの減量で数字を稼ぐ。
最低だった。
しかし。
その黒龍高校が。
タモリを見た瞬間。
止まった。
黒龍主将。
目を見開く。
「……え?」
さらに。
副主将。
「本木さん!?」
ざわつく黒龍ベンチ。
「マジかよ……」
「戻ってきたのか……?」
「今年の織冠、本木さん監督!?」
観客席もざわつく。
タモリことレオナルド本木。
無表情。
そして。
地面へ。
ペッ。
唾を吐いた。
「違ぇよ」
低い声。
「単なる引率だ」
黒龍側。
静まる。
しかし。
選手たちの目は輝いていた。
タモリを見る目。
明らかに。
“伝説を見る目”。
周律が気づく。
「……やっぱりすごい人なんだ」
タモリ。
聞こえないふり。
そして。
試合開始。
だが。
織冠高校。
空気が最悪だった。
劉備。
無言。
劉備
明らかに機嫌が悪い。
原因。
孔明と石嶺先輩。
そして。
孔明。
さっきの“あーん”。
観客3000人。
全員見てた。
結果。
孔明。
完全に敵認定。
観客席。
「孔明ゆるさねぇ……」
「ライチゼリー野郎……」
「公開処刑しろ!!」
周律。
「なんでそんなヘイト買ってるんですか」
さらに。
劉備。
嫉妬。
自己嫌悪。
混乱。
全部混ざっていた。
馬謖が話しかける。
馬謖
「劉備先輩、大丈夫ですか?」
劉備。
「集中しろ」
怖い。
馬謖。
「はい」
周律。
「完全に八つ当たりモードですね」
そして。
試合開始。
黒龍。
強い。
坊主だから強い。
ぽっちゃりなのに強い。
フォームが安定している。
特に。
主将。
12を連発。
実況。
「黒龍高校、やはり強豪!!」
一方。
織冠。
バラバラ。
劉備。
外す。
孔明。
観客からヤジ。
「あーんしろーー!!」
「ライチゼリー食えーー!!」
孔明。
「うるさい!!」
センス振る。
またカッポレみたいになる。
周律。
「もうそれ正式フォームなんですか?」
呂布だけが冷静だった。
呂布(武田猛)
投げる。
ドゴッ!!
12。
また12。
黒龍側もざわつく。
「なんだあいつ……」
タモリ。
腕組み。
無言。
だが。
心の奥。
少しだけ熱い。
呂布。
馬謖。
孔明。
劉備。
未完成。
バラバラ。
しかし。
どこか昔の自分に似ていた。
実況が叫ぶ。
「織冠高校!!」
「悲願の都大会進出なるかーーー!!」
夕日。
歓声。
怒号。
地元なのに完全アウェー。
その中で。
タモリがゆっくり顔を上げた。
サングラス越しのその目の光は。
ここにいる誰もが見えていない、ひとすじの細い光の未来を見つめていた。




