第九話 地区大会メンバー選抜 50デスマッチ前半戦
夕暮れの校庭。
並べられたスキットル。
風。
沈黙。
ホワイトボードには大きく書かれていた。
⸻
地区大会代表選抜
50デスマッチ
⸻
ルールは単純。
50点ぴったりで勝利。
超えたら25点へ戻る。
一投が命。
外せば地獄。
タモリが腕を組んで見ている。
「ようやくモルック部っぽくなってきたな」
参加者は十名。
劉備。
孔明。
関羽。
呂布。
中山ミツル。
周律。
渡辺美由。
石嶺先輩。
曹操。
そして――
野球部から来た男。
丸刈り。
ガタイ良い。
右腕が太い。
甲子園地区大会二回戦まで進んだエースピッチャー。
突然グラウンドに現れた。
「お願いします!!」
全員振り向く。
男は深々と頭を下げた。
「野球部二年、牧田です!」
「自分もモルック部に参加させてください!」
関羽。
「なぜだ」
牧田。
真顔。
「石嶺先輩のファンだからです!」
石嶺先輩。
「わぁ、ありがとう〜」
孔明。
「またか……」
しかし牧田は続けた。
「ですが!」
「ただのファンではありません!」
突然語り始める。
「毛遂、自らを薦む――!!」
沈黙。
野球部員とは思えぬ流暢さ。
「戦国四君の平原君に対し、自らを売り込み――」
孔明。
止まる。
「なんで故事成語詳しいんですか」
牧田。
「好きなので」
怖い。
関羽が小声。
「怪しいな」
劉備。
「……よし」
「お前、今日から馬謖」
牧田。
停止。
「えっ」
馬謖
孔明。
「なんか雰囲気が馬謖っぽい」
牧田。
「泣いて馬謖を斬るの馬謖ですか?」
「そうです」
「俺斬られるの!?」
周律が冷静に言う。
周律
「まだ何もしてないのに処刑ルート入ってるの怖いですね」
こうして。
50デスマッチが始まった。
第一投。
呂布。
フォームが異常に綺麗。
日頃の地道な練習とアウフグースで鍛えた体幹。
回転。
投擲。
ドゴッ!!
一発で12。
ざわつく。
タモリ。
サングラスを少し上げる。
「……化け物か」
呂布。
淡々。
「最近、肩甲骨の可動域が良くなったので」
周律。
「熱波師理論が本当に役立ってる……」
次。
関羽。
気合。
投げる。
ドゴォ!!
勢いだけはすごい。
しかし。
全部飛ぶ。
0点。
沈黙。
孔明。
「関羽先輩……」
関羽。
「太った」
「知ってます」
関羽は最近サウナ後の飯が美味すぎてリバウンドしていた。
動きが重い。
呂布が小声。
「重戦車タイプですね」
次。
孔明。
静かに構える。
投げる。
カン。
7点。
堅実。
次も。
6。
8。
5。
着実。
周律。
「孔明先輩、安定してますね」
孔明。
「こういうのは期待値管理です」
しかし内心。
焦っていた。
呂布が強すぎる。
次。
曹操。
適当。
明らかに適当。
フォームも雑。
なのに。
カン。
9点。
次。
倒れたスキットルが跳ねて12。
さらに偶然倒れて8。
曹操。
「流れ来てるな」
孔明。
「なんで?」
周律。
「運だけで戦ってる……」
タモリ。
「一番怖いやつだ」
次。
馬謖。
野球フォーム。
豪速球。
ドゴォ!!
スキットル大爆散。
しかし。
点は入る。
最初は雑だった。
だが。
二投目。
三投目。
徐々に覚え始める。
回転。
距離感。
修正。
タモリの目が変わる。
「……こいつはひょっとして......逸材」
馬謖。
「野球と似てますね!」
孔明が嫌な顔。
「なんか本当に馬謖っぽくなってきた……」
周律。
「フラグ立てるのやめたほうがいいですよ」
その頃。
石嶺先輩。
普通に弱い。
石嶺先輩
「えーい」
ポフ。
1点。
中山ミツル。
それを見る。
尊すぎて投げられない。
0点。
鼻血。
周律。
「試合中に鼻血出すのやめてください」
夕暮れ。
スコアボード。
トップ。
呂布。
追う。
曹操。
孔明。
馬謖。
そして。
関羽、沈む。
タモリは腕を組みながら呟く。
「……面白くなってきたな」




