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第三話 平凡な変人

放課後。


旧校舎三階。


ダイエット部兼モルック部兼三国志同好会。


正式に残った新入部員は三名。


中山ミツル。

渡辺美由。

周律。


部室には妙な空気が流れていた。


理由は単純。


中山ミツルが、薄すぎた。


中山ミツル


劉備が名簿を見る。


顔を見る。


もう一度名簿を見る。


「……いたっけ?」


「います」


中山は普通に答える。


本当に普通。


身長普通。


顔普通。


髪型普通。


声も普通。


特徴が、ない。


孔明が興味津々で聞く。


孔明


「趣味は?」


「映画鑑賞です」


普通。


関羽。


「好きな食べ物は」


「カレーです」


普通。


呂布。


「好きな三国志武将は?」


「特にいません」


逆に怖い。


渡辺美由が小声で言う。


「逆にすごくない?」


周律もうなずく。


周律


「ここまで特徴ない人、初めて見たかも」


中山は困ったように笑った。


その笑い方すら普通。


孔明が分析し始める。


「AIに“日本の男子高校生”って入力して作った感じなんですよね……」


「言いすぎですよ」


だが。


その時だった。


廊下から声。


「おつかれ〜」


部室の空気が変わる。


全員が振り向く。


現れたのは。


大学帰りの石嶺先輩だった。


石嶺先輩


トートバッグ。


ゆるい笑顔。


そして紙袋。


「新入生入ったんだ〜」


瞬間。


中山ミツルが固まった。


停止。


完全停止。


劉備が気づく。


劉備


「……中山?」


返事がない。


中山は直立不動だった。


顔面蒼白。


石嶺先輩が袋をごそごそする。


「今日ね、オートミールマフィン作ってみたんだ〜」


部室がざわつく。


「手作り!?」


「え、すご」


「意識高い」


石嶺先輩は笑いながら言う。


「去年は毎日作ってたじゃん」


その瞬間。


中山ミツルの呼吸が止まりかけた。


石嶺先輩が一人一人に配る。


渡辺美由。


「おいしそ〜!」


周律。


「ありがとうございます」


呂布。


「うれしい、でも、タンパク質量気になりますね」


「まず味の感想を言え」


そして。


中山の番。


石嶺先輩が近づく。


「はい、新入生くんも〜」


限界。


近い。


近すぎる。


中山は視線を完全に逸らした。


窓。


壁。


天井。


絶対に石嶺先輩を見ない。


手だけ震えながら前に出る。


「あ、ぁ、ありがとうござ……」


声が消える。


孔明が困惑する。


「えっ」


さらに異変。


中山がカバンを開けた。


中から出てきたのは。


透明ケース。


妙に高級。


緩衝材入り。


呂布が引く。


「専用ケース?」


中山は真顔だった。


オートミールマフィンを丁寧に入れる。


角度を調整。


完全密封。


関羽が聞く。


「食わんのか?」


中山。


「……観賞用です」


沈黙。


孔明。


「純度が高い……」


石嶺先輩は普通に笑っていた。


「え〜食べなよ〜」


その瞬間。


中山ミツル。


限界。


石嶺先輩が話しかけた。


たったそれだけで。


中山は、


「すみませんッ!!」


と叫び。


走った。


部室を飛び出す。


階段を駆け下りる音。


ドドドドドド。


全員沈黙。


劉備。


「……逃げた」


周律。


「逃げましたね」


渡辺美由。


「ガチ勢だ……」


石嶺先輩は困惑していた。


「えっ、私なんかした?」


その後。


中山ミツル。


二日間学校を休んだ。


理由。


「精神的オーバーヒート」。


孔明は日誌に書いた。



新入部員、中山ミツル。


石嶺先輩耐性ゼロ。



関羽がうなずく。


「純粋だな」


「方向性がおかしいんですよ」

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