第二話 新入生サバイバル面接
くじ引きの結果。
六十三名いた入部希望者は、二十名まで絞られた。
翌日放課後。
旧校舎三階、ダイエット部兼モルック部兼三国志同好会部室。
二十人の新入生が、ぎゅうぎゅうに座らされていた。
空気が重い。
前には机。
劉備、孔明、関羽、呂布。
そして。
なぜか当然のようにいる卒業生。
曹操
スーツ姿。
腕組み。
妙に怖い。
孔明が小声で言う。
「だからなんでいるんですか」
「OB枠だ」
「そんな枠ないです」
新入生たちは完全にビビっていた。
壁には関羽が書いた紙。
⸻
「本気の者のみ来たれ」
⸻
怖い。
劉備が立ち上がる。
劉備
「では面接を始める」
孔明が補足する。
孔明
「まあ気軽にいきましょう」
その瞬間。
関羽。
「では最初の質問だ」
全員が緊張する。
「もしモルックの最中に熊が出たらどうする」
沈黙。
新入生たちが固まる。
「えっ」
「フィンランドではあり得る」
「ここ東京です」
孔明が頭を抱える。
次。
呂布(武田猛)
「好きな炭水化物を発表してください」
新入生。
「……え?」
「あと順位も」
「なんで?」
呂布は真剣だった。
「人間性が出ます」
曹操がうなずく。
「わかる」
「わかるんですか」
さらに劉備。
「サウナ後に飲みたいものは?」
男子。
「ポカリですかね……」
関羽。
「浅い」
「何が!?」
孔明。
「普通に正解ですよ!?」
部室の空気がどんどんおかしくなっていく。
そして突然。
曹操が立ち上がった。
全員静まる。
曹操は新入生を見渡す。
「では」
「変顔だ」
「ええっ!?」
ざわつく新入生。
孔明が叫ぶ。
「なんでですか!」
曹操は真顔だった。
「追い込まれた時、人間は素になる」
「絶対違います」
だが始まった。
変顔大会。
白目。
鼻膨張。
ほっぺを伸ばす者。
変なダンスを始める者。
関羽が妙に真剣に採点している。
「こいつは覚悟がある」
「どこで判断してるんですか」
その時だった。
後ろの方に座っていた、印象の薄い男子。
普通。
本当に普通。
顔も普通。
背も普通。
空気。
名前は中山ミツル。
中山ミツル
その中山が。
急に。
ものすごい変顔をした。
白目。
顔面波動。
鼻があり得ない方向へ曲がる。
部室が静まる。
関羽。
「……戦士だ」
呂布。
「強い」
孔明。
「変顔で評価しないでください」
次。
女子。
美人。
空気が変わる。
渡辺美由。
渡辺美由
劉備が聞く。
「志望理由は」
「石嶺先輩です!」
即答。
強い。
その瞬間。
渡辺が笑う。
少し出っ歯。
しかし妙にかわいい。
曹操が聞く。
「もし石嶺先輩とモルック、どちらかを選べと言われたら?」
「石嶺先輩です」
即答。
関羽がうなずく。
「誠実だ」
「基準がおかしいんですよ」
そして最後。
爽やかな男子が手を挙げる。
空気が妙に整う。
名前。
周律。
周律
曹操が名簿を見る。
止まる。
「……周?」
周律が軽く頭を下げる。
「はい」
曹操。
「お前、周瑜の……?」
部室が静まる。
周律。
「弟です」
沈黙。
孔明。
「えっ」
劉備。
「周瑜って本名だったの!?」
関羽。
「あだ名じゃなかったのか」
呂布。
「完全にあだ名だと思ってました」
周律が困ったように笑う。
「よく言われます」
曹操が急にニヤつく。
「周瑜の弟かぁ……」
空気が嫌になる。
「兄ちゃん元気?」
「はい」
「まだナルシスト?」
「まあ……はい」
「やっぱりか」
周律だけ、なぜか曹操の圧に耐性があった。
その後も面接は続いた。
だが。
空気がおかしかった。
質問がおかしい。
ノリがおかしい。
関羽が急に腕立てを始める。
呂布がプロテインを飲み始める。
劉備がサウナ論を語る。
曹操の圧が怖い。
面接終了後。
辞退者が続出した。
「なんか怖かった」
「宗教みたいだった」
「変顔必要なんですか?」
「モルックって何?」
翌日。
部室。
残った入部届は三枚だけだった。
中山ミツル。
渡辺美由。
周律。
孔明が呆然とする。
「……二十人いましたよね?」
関羽が腕を組む。
「生き残る者は少ない」
「部活なんですよこれ」
劉備は静かに三枚の入部届を見る。
「だが」
「濃い」




