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諸葛亮と呼ばないで〜陰キャ高校生ダイエット部の軍師になり無双  作者: 座山食空
第二章 勝ち得たもの、失われていくもの
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第十四話 劉備小桃への気持ち

十二月某日。


雪こそ降っていなかったが。


空気は完全に冬だった。


そして僕――山田阿斗は。


今。


とんでもない場所へ向かっていた。



『誕生日会やるから来い!』


劉備小桃からのLINE。


軽かった。


だが。


その下。


『許嫁も来る』


重かった。


「……」


駅から続く坂道を歩きながら、

僕は深いため息をついた。


なんで高校生で許嫁イベント発生してるんだ。


時代設定がおかしい。


ラノベか!



劉備家。


否、佐藤家。


合宿の時も見たが、やっぱりでかかった。


門。


庭。


松。


城みたいだった。


「金持ちだ……」


僕が震えていると。


「孔明ー!」


劉備小桃が走ってきた。


そして。


僕は止まった。


「……え」


かわいかった。


かなり。


ニット。


髪。


少しだけ化粧。


冬の空気。


最近、

どんどん女の子っぽくなっていた。


まずい。


心臓が。


「どうした孔明?」


「いや別に!」


「顔赤いぞ?」


「寒いんです!」


「暖房効いてるけど?」


逃げ場がなかった。



その時。


「君が孔明くん?」


声。


振り向く。


許嫁だった。


「……」


なんか。


普通にイケメンだった。


長身。


爽やか。


しかも。


妙にノリが軽い。


「いや〜聞いてるよ!」


笑顔。


「孔明!軍師!モルック!」


「どこまで伝わってるんですか」


「全部!」


最悪だった。



そのまま。


なぜか。


会食になった。


豪華だった。


刺身。


鍋。


寿司。


関羽先輩いたら泣いてる。


その時。


許嫁が笑った。


「じゃあさ」


嫌な予感。


「三国志知識勝負しない?」


静寂。


「……」


「……」


「……」


無理。


僕、

ふわっとしか知らない。


街亭すら怪しい。


その時。


劉備小桃が小声で言った。


「頑張れ孔明!」


「無茶言うな」


だが。


僕は閃いた。


「……いいですよ」


「おっ」


「ただし」


僕は言った。


「モルック勝負で」


静寂。


許嫁が笑う。


「モルック?」


「はい」


「面白い」


余裕だった。


完全に。


だが。


次の瞬間。


「実は俺」


許嫁が笑う。


「ボウリング、奥多摩地区高校チャンピオンなんだよね」


「なんで奥多摩限定なんですか」


でも。


嫌な予感がした。


投擲系。


強い。



数十分後。


劉備家の庭。


なぜか簡易モルックコートが作られていた。


広すぎるだろこの家。



勝負開始。


許嫁。


フォーム綺麗。


うまい。


「ほう」


周囲がざわつく。


だが。


甘かった。


「……」


僕は静かに構える。


冬の空気。


ナイター。


そして。


カコン。


完璧。


「……!」


さらに。


カコン。


連続命中。


「えっ」


許嫁が固まる。


最近の僕。


普通に強かった。


そこそこ練習してるので。



そして。


最後。


僕は静かに50点を決めた。


静寂。


「……負けた」


許嫁が笑う。


爽やかだった。


「いや〜本職は違うな」


その時。


許嫁がふと聞いた。


「でもさ」


「?」


「なんでそんな必死なの?」


風。


冬の空。


そして。


僕の口が勝手に動いた。


「……僕は」


心臓。


熱い。


「僕は小桃が好きです」


静寂。


「……」


「……」


「……」


自分で驚いた。


声。


強かった。


こんな声、

出せたんだ。



劉備小桃が止まっていた。


頬が赤い。


「……孔明」


その顔は。


今まで見たことないくらい、

女の子だった。



その時。


許嫁が小さく笑った。


「やっぱりか」


「え?」


「実は最初からわかってた」


静かな声。


「そして、芝居だって」


「……」


「でもさ」


許嫁は劉備小桃を見る。


「見てたらわかった、芝居だけど本気の芝居なんだ」


冬の風。


「小桃って昔から変だったじゃん?」


「おい」


「でも」


笑う。


「孔明くんの前だと、ちゃんと女の子なんだよね」


静寂。


劉備小桃が真っ赤になる。


「なっ……!」


「僕が小桃を小さいころから知ってると思ってたけど、何もしらなかったみたいだ」


許嫁は俯いて


「でも、諦めないよ、許嫁とかそういうのではなく、僕は待ってるよ」


こいつ意外といいやつだ。



少し離れた縁側。


劉備父が、

静かにその様子を見ていた。


「……」


昔から。


娘は男の子みたいだった。


走り回って。


騒いで。


天下統一とか言って。


でも今。


笑う顔が違う。


少し寂しい。


遠くへ行ってしまう気もする。


だが。


同時に。


嬉しかった。



誕生日会は。


穏やかに終わった。


帰り道。


冬の夜。


門の前。


「山田くん」


劉備父だった。


「……はい」


父は少し笑った。


そして。


静かに言った。


「娘をよろしく」


静寂。


僕は何も言えなかった。


不自然な苦笑いと、会釈を返した。


ただ。


冬の空気だけが、

静かに白かった。

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