第七話 曹操会長サザン上手いけど、メジャーな曲しか歌わない説
十月某日。
放課後。
旧校舎第三準備室。
僕は真顔で言った。
静寂。
「何がだ?」
周瑜先輩が炭酸水を飲む。
僕はゆっくりホワイトボードへ向かった。
そして。
書く。
『曹操会長
サザンメジャー曲しか歌わない説』
「暇か?」
周瑜先輩が言った。
だが。
僕は本気だった。
*
事の発端は、
文化祭前夜祭。
曹操会長は、
またしてもサザンを完璧に歌い上げた。
だが。
選曲。
『真夏の果実』
前回。
『TSUNAMI』
その前。
『いとしのエリー』
全部。
超メジャー。
「……」
僕は気づいてしまった。
この人。
マニアック曲を歌わない。
*
「確かに……」
劉備小桃が腕を組む。
「会長、“匂艶 THE NIGHT CLUB”とか歌わんな」
「逆に部長知ってるんですね」
「父親の車で流れてた」
妙にリアルだった。
その時。
関羽先輩が言う。
「でも、メジャー曲しか知らないだけでは?」
静寂。
その可能性。
あった。
*
「いや待て」
周瑜先輩が言う。
「桑田慶介だぞ?」
確かに。
名前からしてサザン圧が強い。
「そんな奴が“愛の言霊”止まりなわけない」
「愛の言霊十分濃いですよ」
すると。
呂布が静かに口を開いた。
「……“慕情”歌えたら本物です」
全員振り向く。
「お前知ってんの?」
「母がファンなので……」
呂布、
妙に守備範囲が広い。
*
「つまり」
僕は言った。
「曹操会長が本当にサザンガチ勢か確かめる必要がある」
「なんで?」
「知的好奇心です」
「お前最近青春を無駄遣いしてるぞ」
*
翌日。
放課後。
カラオケボックス。
なぜか全員いた。
「なんで俺まで……」
関羽先輩が困惑している。
「会長を自然に誘うためだ」
「自然とは?」
その時。
ドアが開く。
「……」
曹操会長だった。
圧。
「貴様ら」
低い声。
「なぜ俺を呼んだ」
怖い。
アウトレイジ感ある。
だが。
劉備小桃は笑う。
「今日は親睦会だ!」
絶対違う。
*
数十分後。
普通に盛り上がっていた。
関羽先輩、
ゆずを歌って泣いていた。
「夏色ってなんか泣ける……」
「情緒どうなってるんですか」
石嶺先輩は普通に上手かった。
なんか悔しい。
そして。
ついに。
「次、桑田会長お願いしまーす!」
来た。
全員が静かにモニターを見る。
曲名。
『希望の轍』
「あっ」
メジャーだ。
またしても。
「……」
僕たちは顔を見合わせた。
やはり。
疑惑は深まる。
その時。
周瑜先輩が小声で言った。
「やるぞ」
「え?」
「揺さぶりだ」
怖い。
*
歌い終わる。
大拍手。
うますぎる。
そして。
周瑜先輩が自然を装って言う。
「会長って、“シャ・ラ・ラ”とかも歌うんですか?」
静寂。
空気が止まる。
会長の眉が少し動いた。
来た。
「……」
会長は静かに水を飲む。
そして。
言った。
「……あれは」
ゴクリ。
「難しい」
「うおおおお!!!」
部室メンバー大興奮。
「やっぱり!」
「メジャー以外弱い!」
「孔明当たった!」
「違う!」
曹操会長が立ち上がる。
珍しく動揺していた。
「俺は!!」
ドン!!
机。
「“栞のテーマ”まではいける!!」
「微妙なライン!!」
店員が覗きに来た。
*
その夜。
帰り道。
秋風。
笑い声。
なんか。
どうでもいいことを本気で騒げるのって。
少し幸せだった。
その時。
曹操会長が隣で小さく言った。
「……孔明」
「はい?」
「次は“Ya Ya”練習しておく」
「なんの宣言なんですか」




