第六話 曹操会長のメッセージ(忘れられないHeat&Soul)
文化祭前日。
放課後。
校内は完全に浮ついていた。
段ボール。
絵の具。
脚立。
謎のテンション。
青春だった。
「うおおおおお!!!」
劉備小桃が叫ぶ。
「文化祭前夜祭ぃぃぃ!!!」
「声でかい」
現在、
ダイエット部(三国志研究会)は、
文化祭準備に追われていた。
『モルック体験会』
『低糖質カフェ』
『石嶺先輩監修』
完全に人気出そうだった。
そして実際、
めちゃくちゃ人気だった。
*
「石嶺先輩いますか!?」
「整理券もうないんですか!?」
「関羽先輩と写真撮りたいです!」
「えっ俺!?」
最近、
関羽先輩が本当にモテていた。
特に女子一年。
「なんかかわいい」
「包容力ありそう」
「優しそう」
「大型犬感ある」
「大型犬ってなんですか……?」
本人はまだ混乱していた。
その横で。
呂布こと武田猛。
「……」
女子から話しかけられるたび、
挙動不審になっていた。
「呂布くんモルックすごいね!」
「ふぁっ」
それを思い出しては吹いた。
麦茶を。
「汚っ!!」
部室が騒然となる。
*
その時だった。
ガラッ。
静寂。
空気が変わる。
「……」
曹操会長だった。
桑田慶介。
今日も無駄に威圧感がある。
黒シャツ。
腕組み。
完全に裏社会。
「会長!」
劉備小桃が敬礼する。
「来たか曹操!」
「……視察だ」
絶対違う。
この人、
普通にダイエット部が好きなんだと思う。
その時。
会長は静かに周囲を見回した。
文化祭装飾。
低糖質スイーツ。
モルック。
騒ぐ部員。
そして。
「……」
僕を見る。
嫌な予感。
「孔明」
「はい?」
「お前、最近モテてるらしいな」
静寂。
「違います」
即答した。
だが。
「耳を澄ませ、聞こえてくるぞ、『爆発しろ!』の怨嗟の声が」
「……」
「……」
「爆発しろ」
「あんたが今言ったんだろ!?」
*
その時。
校内放送。
『文化祭前夜祭カラオケ大会、まもなく開始しまーす』
ざわっ。
周囲が反応する。
そして。
劉備小桃がゆっくり振り向いた。
嫌な予感。
「……曹操」
「なんだ」
「今年も出るよな?」
静寂。
会長は少しだけ目を閉じた。
そして。
「……仕方あるまい」
終わった。
*
数十分後。
体育館。
超満員。
照明。
歓声。
「次の出場者は――」
司会が叫ぶ。
「三年!桑田慶介くん!!」
うおおおおおお!!!
女子悲鳴。
男子歓声。
なんなんだこの人。
そして。
イントロ。
サザンオールスターズ。
『真夏の果実』
「また季節ズレてる」
九月末だった。
しかし。
歌が始まった瞬間。
空気が変わった。
うまい。
めちゃくちゃ。
体育館全体が静まる。
「……」
「……」
「……」
歌が始まると打って変わって周囲の女子が完全に落ちていた。
劉備小桃まで聞き入っている。
関羽先輩が泣いていた。
「なんで泣いてるんですか」
「秋が……沁みる……」
情緒が終わってる。
*
歌い終わる。
拍手。
大歓声。
そして。
会長は静かにマイクを持った。
「……青春とは」
始まった。
「減量である」
「違います」
会場爆笑。
会長は少し笑った。
「だが」
静かに言う。
「無駄な時間ではない」
体育館が静かになる。
「遠回りも、失敗も、全部後で効いてくる」
その瞬間。
僕は少しだけ思った。
この人。
普段ふざけてるけど。
たまに、
めちゃくちゃ良いこと言う。
その時。
会長がこちらを見た。そしてまるで僕に言うように、
「みんなも、選べるうちに、ちゃんと選べ」
「……え?」
意味深だった。
めちゃくちゃ。
でも。
その時の僕には。
まだ。
何を言われたのか、
ちゃんとはわからなかった。




