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諸葛亮と呼ばないで〜陰キャ高校生ダイエット部の軍師になり無双  作者: 座山食空
第二章 勝ち得たもの、失われていくもの
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第三話 九月の湘南 遅すぎた夏(水着回)

時は少し遡って、八月某日。


「海だぁぁぁ!!!」


劉備部長がグループLINEで暴れていた。


『湘南!!』


『焼きそば!!』


『ラーメン!!』


『天下統一!!』




しかし。


問題があった。


部活で海に行く日の天気予報。


降水確率80%。


「……終わった」


関羽先輩が呟く。


「俺の夏が……」


「まだ降ると決まったわけじゃ」


僕が言いかけた時。


劉備部長がこちらを向いた。


嫌な予感。


「孔明」


「はい?」


「なんとかしろ」


「無理です」


「赤壁でも風向きかえただろ」


「多分あれ作り話です」


だが。


なぜか。


その場の空気が、

“孔明ならなんとかする”

みたいになっていた。


なんで。



そして僕は。


やってしまった。


「……」


深夜。


自室。


僕は祈祷を行っていた。


やり方はわからない。


でも。


なんか。


やらなきゃいけない気がした。


机。


ろうそく。


レモン汁。


モルック棒。


そして。


「天候よ……」


何やってんだろう俺。


「どうか晴れてください……」


翌日。


台風が来た。


「なんでだよぉぉぉぉ!!!」


劉備部長から電話が来た。


「孔明ぃぃぃ!!!」


「僕のせいじゃないですよ!!」


「お前祈祷しただろ!!」


「しましたけど!!」


「赤壁を超える東風吹かせてどうする!!」



結果。


海イベント。


中止。


関羽先輩は三日くらい口数が減った。


周瑜先輩からは、


「お前もう二度と天候いじるな」


と言われた。


石嶺先輩だけは笑っていた。


「でも逆にすごいね」


「よくない方向にですけどね」



そして。


九月。


リベンジ開催。


場所。


藤沢。


江ノ島近辺。


空は高く、うろこ雲。


夏の終わりみたいな風が吹いていた。


「……人少ないな」


周瑜先輩が海を見る。


「九月だからな」


でも。


僕は少し好きだった。


秋の海。


静かで。


少し寂しくて。


青春の終わりみたいで。



「おまたせー!」


振り向く。


石嶺先輩だった。


白いパーカー。


帽子。


そして。


水着。


「……」


関羽先輩が停止した。


完全に。


その横。


「どうだ孔明!」


劉備部長――劉備小桃も笑う。


スポーティな水着。


ショートパンツ。


健康的。


普通にかわいい。


「……」


なんか急に直視できなくなった。


「どうした孔明?」


「いや別に!」


「顔赤いぞ?」


「日差しです!!」


「九月だけど?」


周瑜先輩が笑った。



海。


砂浜。


波。


そして。


秋の日差し。


強すぎない。


でも透明感がある。


「うおおおお!!」


関羽先輩が海へ突撃する。


「冷たっ!!」


「そりゃ九月ですから」


その時だった。


風。


Tシャツ。


ぺらっ。


「あ」


静寂。


石嶺先輩が止まる。


劉備部長も見る。


周瑜先輩まで黙る。


「……孔明」


劉備部長が呟く。


「お前」


僕も気づいた。


腹筋。


割れていた。


うっすら。


でも。


ちゃんと。


「えっ」


僕が一番驚いた。


いつの間に。


ダイエット。


ウォーキング。


モルック。


サウナ。


色々やってたら。


割れていた。


「……マジか」


周瑜先輩が引いている。


「孔明が陰キャ細マッチョに進化してる」


「進化系おかしいだろ」


その時。


石嶺先輩が小さく言った。


「……なんか」


少し視線を逸らす。


「ちゃんとかっこよくなったね」


ドクン。


波の音。


秋の海風。


遠くのカモメ。


「……」


僕は急に何を喋ればいいかわからなくなった。


その時。


「うおおおお!!」


関羽先輩が叫ぶ。


「浮き輪ぃぃぃ!!」


沖へ流されていた。


ありがとう関羽先輩。


空気が戻った。



夕方。


海辺。


コンビニ肉まん。


少し冷える風。


江ノ島の灯り。


僕たちは砂浜へ座っていた。


「……夏終わったなぁ」


劉備部長が呟く。


「ですね」


今年の夏。


退屈じゃなかった。


全国優勝して。


ABEMA出て。


石嶺先輩がバズって。


僕は天候を壊し。


そして。


腹筋が割れていた。


意味がわからない。


でも。


その意味不明さが。


少しだけ、

愛おしくなっていた。


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