第二十話 劉備先輩の家で合宿 火計
朝。
劉備部長の家。
いや。
改めて見ると広い。
普通の高校生の家じゃない。
庭あるし。
縁側あるし。
なんか池まである。
「お前ん家、地味に豪族じゃない?」
僕が聞くと、
「昔、じいちゃんが土地持ってた」
と劉備部長は雑に答えた。
なるほど豪族だった。
*
早朝六時。
居間。
僕たちは低糖質朝食を囲んでいた。
鶏胸肉。
ゆで卵。
味噌汁。
そして。
レモン汁。
「……」
僕はレモン汁を飲みながら呟いた。
「火計……」
静寂。
曹操会長がゆっくり顔を上げる。
「……まさか」
劉備部長も反応する。
「孔明……!」
周瑜先輩が嫌な顔をした。
「絶対ロクでもない」
僕は静かに頷く。
「はい」
そして。
言った。
「サウナです」
沈黙。
「サウナ?」
関羽先輩が首を傾げる。
「駅前の銭湯のサウナで“ととのう”」
「ととのう」
「汗の蒸発によりカロリーを消費する」
「おお……!」
劉備部長が感動していた。
「火計だ……!」
「いや普通にサウナです」
でも。
実際悪くない案だった。
もちろん脂肪が急激に減るわけじゃない。
だが。
発汗。
リフレッシュ。
モチベーション。
そして何より。
「皆、無理せず自分のペースで」
僕は言う。
「水分補給はちゃんとして、危なかったらすぐ出る」
「……」
「サウナは戦争じゃありません」
「今まで全部戦争だったのに」
周瑜先輩が突っ込む。
その時だった。
なぜか。
全員が僕を見ていた。
「……なんですか」
劉備部長が小声で言う。
「最近ほんと軍師っぽいな」
「やめてください」
でも。
ちょっと嬉しかった。
*
数時間後。
駅前銭湯『極楽湯殿・赤壁の湯』
絶対狙ってる名前だった。
暖簾。
下駄箱。
昭和っぽい匂い。
「うおお……」
関羽先輩が感動している。
「これがサウナ……」
「初めてなんですか?」
「俺、スーパー銭湯で飯しか食ったことなかった」
「サウナ入れよ!」
そして。
男たちは戦場へ向かった。
*
熱い。
めちゃくちゃ熱い。
サウナ室。
テレビ。
無言のおじさんたち。
そして。
滝のような汗。
「ぐっ……!」
劉備部長が震える。
「これが……火計……!」
「だから普通にサウナです」
関羽先輩は汗だくだった。
というか。
汗量が尋常じゃない。
「関羽先輩、溶けてません?」
「脂肪が……燃えている……」
なんか語彙まで熱気で溶けていた。
その時。
曹操会長が静かに言う。
「……まだだ」
「え?」
「サウナの本番は」
ゆっくり立ち上がる。
「水風呂だ」
ざわっ。
周囲のおじさんまで少し反応した。
なぜか説得力がある。
*
そして。
水風呂。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
クールな周瑜先輩が珍しく叫ぶ。
「冷たっ!!」
「死ぬ死ぬ死ぬ!!」
関羽先輩は半分溺れていた。
しかし。
数秒後。
「あっ……」
静寂。
風。
露天スペース。
青空。
遠くの電車の音。
「……」
誰も喋らなかった。
いや。
喋れなかった。
気持ちよすぎて。
その時。
僕は立ち上がった。
なんかテンションが上がっていた。
「いいですか皆さん!!」
「始まった」
周瑜先輩が呟く。
僕は叫んでいた。
「サウナの本体は!!」
風。
蝉。
水滴。
「水風呂です!!!」
「おおおおお!!」
なぜか拍手が起きた。
おじさんまで頷いている。
「熱とは!」
僕は止まらなかった。
「冷たさがあるから成立する!!」
「深そうで浅い!」
周瑜先輩が笑う。
でも。
なんか。
めちゃくちゃ気持ちよかった。
その時。
曹操会長が静かに言った。
「孔明」
「はい?」
「お前、将来なんか変な宗教作りそうだな」




