第十九話 ダイエット甲子園 地区予選 第二競技
「それではぁぁぁ!!」
高島政伸が叫ぶ。
「第二競技を発表します!!!」
巨大モニター点灯。
ドラムロール。
会場緊張。
「第二競技は――」
バン!!
『十日間減量チャレンジ』
ざわっ。
「本日計量!」
「そして十日後、再計量!!」
「減少した体重“合計”が大きかった各地区二校が――」
スポットライト。
「博多行き決定です!!!」
うおおおおおお!!!
会場が揺れる。
だが。
僕はふと思った。
「……デブ有利じゃね?」
静寂。
劉備部長が固まる。
周瑜先輩も止まる。
そして。
「……まずい」
劉備部長が青ざめた。
「我々は」
嫌な間。
「ここ二ヶ月、真面目にダイエットしてしまっている……!」
「致命的だ」
周瑜先輩が真顔で頷く。
確かに。
他校にはまだ“伸びしろ”がある。
だが僕たちは。
そこそこ痩せてしまった。
「うわぁ……」
関羽先輩が頭を抱える。
「もっと太っておけばよかった……」
「人生で初めて聞いた後悔だ」
その時。
モニターへ、
現在ランキングが表示された。
『鹿児島実践学院』
平均体重:98kg
「強ぇぇぇ!!」
完全に重量級だった。
さらに。
『東北細澤高校』
平均BMI:34.8
「化け物かよ」
「太澤だろ!」
会場がざわつく。
一方。
僕たち。
『織冠高校ダイエット・モルック戦略研究』
平均BMI:23.7
「健康だ……」
「終わった……」
劉備部長が崩れ落ちる。
*
計量会場。
体重計がずらりと並ぶ。
スタッフ。
医療班。
なんかガチ。
「名前をどうぞー」
「織冠高校ダイエット・モルック戦略研究部です」
「長いですね」
もう全国共通リアクションだった。
そして。
計量。
ピッ。
数字表示。
「……」
「……」
「うーん、健康的ですねぇ」
スタッフのお姉さんが微笑む。
「いや、褒められてる場合じゃないんですよ」
僕は頭を抱えた。
隣では関羽先輩が絶望していた。
「俺……もう普通体型寄りなのか……?」
「ちょっと嬉しそうですね」
その時。
石嶺先輩が小声で言った。
「……ねぇ」
「はい?」
「計量前、水飲めばよかったんじゃない?」
静寂。
全員が振り向く。
「……!」
周瑜先輩が目を見開く。
「その手があったか」
「いや待ってください」
「違法では?」
「合法だけど!」
曹操会長が静かに笑った。
「石嶺さん」
「はい?」
「まるで龐統だな」
「誰ですかそれ」
「孔明と並ぶ奇策家だ」
石嶺先輩は困ったように笑う。
その横で。
関羽先輩が呟いた。
「好き……」
「お前もう隠す気ないな」
*
帰り道。
夕方。
駅前。
僕たちは作戦会議をしていた。
「十日間か……」
周瑜先輩が腕を組む。
「普通にやっても厳しいな」
「短期で無理するとリバウンドするぞ」
曹操会長は冷静だった。
すると。
劉備部長が突然立ち上がる。
「ならば!」
嫌な予感。
「合宿だ!!」
「来た」
「ダイエット強化合宿を行う!!」
「どこで」
「我が家!」
「普通!」
だが。
なぜかみんな乗り気だった。
*
数日後。
劉備部長の家。
郊外の広めの一軒家。豪邸という部類に入るかもしれない。
だが。
居間のホワイトボードには、
『博多攻略戦』
と書かれていた。
怖い。
「まず朝五時起床!」
「早い」
「ウォーキング5km!」
「多い」
「低糖質高タンパク!」
「わかる」
「夜はモルック戦術研究!」
「結局モルックやるんだ」
その時。
石嶺先輩が大量の鶏胸肉を持ってきた。
「低温調理してきたよー」
「女神……」
関羽先輩が泣きそうになっている。
しかし。
僕は少しだけ不思議だった。
都大会に行けなかった。
モルックも負けた。
なのに。
なんでこんなに楽しいんだろう。
その時。
劉備小桃が笑った。
「絶対、博多行こうな!」
夕方の光。
汗。
笑い声。
そして。
意味不明な高校生活。




