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第二話 ダイエット部桃園(第三準備室)に集う

僕は異世界転生でもしたのかもしれない。


最近は異世界転生だらけで、流石に剣と魔法の設定はダブついているし、競争力が激しい。だから現実世界から少し漫画っぽい展開の、ちょっとだけクオークの数と種類が違う並行世界、そんな半ラノベみたいな世界に転生したのかもしれない。


いや、したとしか思えない。


劉備小桃?

関羽?


そんな名前の人間は現実世界にいるわけない!


僕死んだ?

授業が退屈すぎて退屈死?


後で劉備と関羽の本当の苗字が佐藤と石崎というありふれた苗字であることを知るのだが。






放課後。


僕は旧校舎へ向かっていた。


行きたくはない。


だが行かなければならない。


なぜなら僕のノート――『ウィーヴィア帝国建国草案』が人質に取られているからだ。


春の夕方の旧校舎は妙に静かだった。


窓ガラスがオレンジ色に染まり、廊下には誰もいない。


ホラーゲームだったら確実にイベントが始まる空気である。


第三準備室。


古びたプレートの前で立ち止まる。プレートの横にネームシールにマジックで「桃園」と書かれている。中華料理屋か!


中から声が聞こえた。


「いや、だから揚げ物をゼロにするのは無理だって!」


「甘えだ関羽!」


「急に体育会系になるな部長!」


「人は意志で痩せるのだ!」


「じゃあなんで部長は太ったんだよ!」


「これは愛嬌だ!」


帰りたい。


だがその瞬間。


「むっ!」


ガラッ!!


勢いよく扉が開いた。


劉備小桃が現れる。


ジャージ姿。


首にはホイッスル。


なぜホイッスル。


「来たか孔明!」


「諸葛亮って呼ばないでください」


「よし入れ諸葛亮!」


会話が成立しない。


僕は半ば強引に部室へ引き込まれた。


中は思ったより普通だった。


古い長机。

パイプ椅子。

ホワイトボード。


ただしホワイトボードには、


『蜀漢高校ダイエット部 天下三分の計』


と書かれていた。


怖い。


「紹介しよう!」


劉備小桃がバン!と机を叩く。


「こちらが関羽重虎!」


「うっす」


巨大だった。


お昼にも見たけどやっぱり巨大だ。


座っているのに圧迫感がある。


人類というより重機に近い。


机の上にはメロンパンが三つ並んでいた。


「食う?」


「ダイエット部ですよね?」


「これは補給だ」


絶対違う。


さらに窓際には細長い男子がいた。


長髪。

死んだ魚みたいな目。

白い肌。


なんか仙人っぽい。


しかし食べているのは大盛り焼きそばだった。


「こちら!趙雲子龍!」


「……田中です」


「普通!」


「部長が勝手に呼んでるだけだから」


田中先輩はズズッと焼きそばをすすった。


「あと別に強くない」


「でも50m走6秒1だろ!」


「中学まで陸上だっただけ」


なんなんだこの部。


劉備先輩は満足げに頷いた。


「これで主要メンバーは揃った」


「主要って」


「我らは今、存亡の危機にある」


急にシリアスな声になる。


ホワイトボードに数字が書かれた。


ダイエット部部員平均BMI

29.1


「終わってる」


「冬が悪かった」


関羽先輩が遠い目をした。


「鍋の締めが多すぎた」


「お前締めを四回やっただろ!」


「ラーメンとうどんと雑炊と餅」


「戦国時代の兵糧攻めかよ」


劉備小桃は拳を握る。


「しかも生徒会が我々を潰そうとしている!」


「まあ、そりゃ……」


ダイエット部なのに全員太ってたらな。


その時だった。


ガラッ。


部室の扉が開く。


全員が振り返る。


そこにいたのは、長身の男子だった。


金髪。

細身。

制服のネクタイは緩い。


イケメンだ。


そしてなんか腹立つタイプのイケメンだ。


「よー」


軽い感じで入ってくる。


劉備先輩が顔をしかめた。


「来たか、周瑜」


「その呼び方やめろって」


金髪男子は笑った。


「生徒会副会長、周瑜翔太サマだ」


絶対本名鈴木とかだろ。


周瑜先輩は僕を見た。


「へぇ、新入り?」


「いや、まだ入部は」


「ぽっちゃりだな」


「初対面で傷つけるタイプ!?」


「でも見込みはある」


何の見込みだ。


周瑜先輩は部室を見渡してため息をついた。


「しかし相変わらず終わってんな、この部」


「うるさい!」


「ダイエット部なのに全員太ってるの、ギャグとして強すぎるだろ」


誰も反論できなかった。


その時。


グゥゥゥゥ……


腹の音が響いた。


関羽先輩だった。


静寂。


「……ラーメン、行くか」


「行くなよ!」


僕は思わず叫んだ。


だが。


「赤壁家の期間限定、背脂焦がし味噌……」


「行くか」


「行こう」


「やむを得んな」


全員立ち上がった。


ダメだこの国。


滅びる。



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― 新着の感想 ―
若いうちの食事を中年まで続けると体調取り返しつかなくなるのよ
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