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第十三話 VS 聖マリア学院 女子高は実在した!

モルック地区大会当日。


朝六時。


僕は鏡の前に立っていた。


寝癖よし。


眉毛よし。


ワックスよし。


制服じゃない。


黒パーカー。


細身のパンツ。


周瑜先輩監修。


「……」


なんか。


高校生っぽい。


少し前の僕なら、

休日に服装なんて気にしていなかった。


でも今日は違う。


なぜなら。


「女子校来るらしいぞ」


前日、関羽先輩が震える声でそう言ったからだ。





大会会場。


市民スポーツ公園。


芝生。


テント。


木製ピン。


そして。


めちゃくちゃ平和。


「モルックってもっと殺伐としてると思ってた」


「何を想像してたんだお前」


周瑜先輩が呆れる。


その時。


ざわっ、と空気が揺れた。


振り向く。


白いジャージ。


おしゃれなスポーツバッグ。


そして女子。


女子。


女子。


「うおっ……」


関羽先輩が後退した。


そこにいたのは、


『聖マリア学園アウトドア研究会』


だった。


なんかキラキラしてる。


空気が違う。


女子校って本当に存在したんだ。


「お、おい孔明……」


劉備部長が小声で言う。


「これは戦だ」


「いつも戦ってるでしょ」


なんで女子の劉備部長が緊張しているんだ。


しかし正直。


僕も緊張していた。


女子校生って、

なんか存在がイベントみたいだ。


その時。


「こんにちは〜!」


聖マリア側の代表らしき女子が近づいてきた。


ショートカット。


明るい。


健康的。


「あ、どうも……」


全員ちょっと挙動不審になる。


特に関羽先輩。


汗がすごい。


「織冠高校さんですよね?」


「はい!」


なぜか劉備部長が一番元気だった。


「ダイエット・モルック戦略研究部です!」


「長いですね〜!」


笑われた。


でも。


笑顔だった。






試合開始。


「お願いします!」


木製ピンが並ぶ。


空気が変わる。


その瞬間。


僕は思った。


――モルックは遊びじゃない。





第一投。


劉備部長。


「いくぞぉぉ!!」


ブォン!!


カコン!!


「おおっ!」


綺麗に8番を落とす。


会場が少しざわつく。


「うまっ」


「やるな」


劉備部長がドヤ顔した。


「見たか桃園流投法」


「今作ったでしょ」


だが今日は本当に調子が良かった。


続く周瑜先輩。


無言。


シュッ。


カコン。


狙った一本だけを落とす。


「精密機械かよ」


さらに。


関羽先輩。


巨体。


重心低め。


「フンッ!!」


ドゴォッ!!


「!?」


会場がどよめいた。


なんか音が違う。


パワーが違う。


ピンが吹き飛んだ。


「すごっ!!」


聖マリア側がざわつく。


関羽先輩が照れていた。


「へへ……」


痩せてからちょっと自信ついたよなこの人。


そして。


僕。


緊張。


手汗。


だが。


「軍師!」


劉備部長が叫ぶ。


「決めろ孔明!」


うるさい。


でも。


悪くない。


僕は深呼吸した。


風。


芝生の匂い。


遠くの笑い声。


そして。


投げる。


カコン。


「おおお!」


50点ぴったり。


試合終了。僕たちの圧勝だった。なんか本気度が違う。むこうは趣味でやっている感じ。


「勝者!織冠高校!」


歓声。


劉備部長が拳を突き上げる。


「天下統一ぃぃぃ!!」


「地区予選一回戦です」


でも。


嬉しかった。


普通に。


めちゃくちゃ。





試合後。


僕たちはベンチで勝利の美コーラを飲んでいた。


うまい。


運動後の炭酸、神。


その時。


「ねぇねぇ」


振り向く。


聖マリアの女子たちだった。


「さっきすごかったね!」


「えっ」


「関羽さんパワーやばくない?」


関羽先輩が固まる。


「俺……?」


「うん!」


「えっ」


完全にフリーズしていた。


CPU落ちてる。


さらに。


「あと“孔明”って何?」


「あー、それは……」


劉備部長が嬉々として説明し始める。


やめろ。


絶対やめろ。


だが。


意外にも女子たちは爆笑していた。


「なにそれ楽しそう!」


「青春って感じ!」


青春。


その言葉に少し照れる。


その後。


なぜか。


自然な流れで。


「LINE交換しよー!」


「!!!!!」


女子である劉備部長を含む部室メンバー全員の脳が停止した。


それからしばらく、

僕たちは全員静かだった。


いや。


正確には。


魂が抜けていた。


関羽先輩がスマホを見つめながら呟く。


「……女子からLINEきた」


「よかったですね」


「俺、生きててよかった」


大げさだな。


でも。


少しわかる。


僕も。


スマホを見る。


『今日は楽しかったです!また試合で〜!』


聖マリアの子からだった。


ただそれだけ。


ただの挨拶。


でも。


なんか。


すごく嬉しかった。



少し前まで退屈だった世界は、

今日も少しだけ広がっていた。


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