表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者祭4 米衆連合国編  作者: 牧野三河


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/24

第19話


 一方その頃、女の4人部屋。


 ぐびぐびと酒を呑むシズクを置いて、カオルがラディと向かい合って座る。

 カオルがシズクを指差し、


「ラディさんは備え付けの酒など口になさらないで下さい」


「酒は嫌いです」


「結構です。一通り調べましたので、今の所この部屋にある物は平気ですが、補充に来た物、ルームサービスで頼んだ物は、必ず私が毒見します」


「何故でしょう」


「この豪華な見た目に誤魔化されておりますでしょうが、値段で見て下さい。ここは安宿なのです。必ず泊まっております。勇者祭の者が」


「・・・」


「賭場までございます。賭場と言えば、どうしてもそういう輩の集う場所。厳重な警備で一般人も多い建物ですから、剣、鉄砲などは振り回さず、大人しくしておりましょうが・・・大人しくして、そっと毒など盛られたら」


「・・・はい」


「部屋を出る時は、必ず私かシズクさんを誘って下さい。イザベル様は参加者ではないので、咄嗟の時に、勇者祭の者からラディさんを守る事は出来ません」


「はい・・・」


 ぷはー! とシズクが息をつく音。


「美味いなあ! これ飲み放題かあ!」


「・・・」


 おほん、とカオルが咳払いして、


「宜しいですか。ハワード様を見ての通り、貴族の参加者もおります。剣などぶら下げていなくても、魔族を見たら注意はして下さい。廊下ですれ違いにぶすりはあり得ます。私も機会があればそうしますし」


「警備の人が見てても」


 カオルが首を振り、


「人目があっても、勇者祭の参加者同士であれば問題はないのです。せいぜい廊下の絨毯のクリーニング代です。私共にはもう勇者祭の賞金が掛かっておりますから、クリーニング代くらい払っても釣りは十分出ます」


 やっぱりここも安全ではなかった。

 心が休まる所がない・・・

 ラディが頭を抱え、


「私、外で寝たいです・・・」


「私かシズクさんが居れば大丈夫です。後でイザベル様とスパに参りましょう」


「私も行くー!」


 わーい! とシズクがグラスを上げる姿を見て、ラディががっくりと肩を落とした。

 と、そこに。


「カオル殿! ラディ殿!」


 どんどんどん! と乱暴にドアが叩かれる。


「む!」「トモヤ!?」


 カオルが脇差を抜くと同時に、シズクがドアに駆け寄る。

 む、と頷き合うと、ばん! とシズクがドアを開け、がばっとトモヤを抱えて部屋の中に放り投げ、ドアを閉める。


「どうしたトモヤ!」


「ぐはっ・・・」


 カオルが駆け寄って、倒れたトモヤを見、は! と顔色を変えた。


「酒の・・・まさか!? ラディさん!」


「はい!」


「あいや! 待ちなされ! カ、カオル殿、酒を呑んでしもうたのじゃ!」


「は?」


「毒はないか? ないじゃろうか?」


 カオルが肩を落とし、脇差を納める。


「ラディさん。取り敢えず解毒を・・・」



----------



 騎士達4人の部屋―――


「・・・という訳で、部屋の酒は呑む前にまず私がチェック致します」


 テーブルの上に酒瓶が並べられ、イザベルが蓋を開けては、匂いを嗅いでいく。

 折角の酒を前に、騎士達4人はお預け状態。


「・・・よし。結構です」


「もう呑んでも良いですか」


「はい」


「よおーし!」


 むさい男達の酒盛りが始まる・・・前に。


「ルームサービスを頼んだ際は、私かカオル殿をお呼び下さい。毒見を致します」


「・・・」「・・・」「・・・」「・・・」


「部屋から出る際も、1人では決して。着込みは必ずご着用願います。特にスパ、カジノはご注意下さい。裸になった所で暗殺、人のごった返すカジノの中では暗殺は容易です」


「はい・・・」


 イザベルがソファーを立ち上がり、窓に寄って、こんこん、とガラスを叩く。


「ふむ。やはり丈夫に作ってあります。要人も泊まるのでしょう。流石4つ星」


「流石ですなあ・・・」


「狙撃はまず大丈夫と見て良いかと。カーテンは開けておいても大丈夫です。では、お邪魔致しました。お楽しみ下さい。私共が不在の際は、口に物を入れるのはご遠慮願います。補充やルームサービスにはご注意を」


 そう言い残して、イザベルは部屋を出て行った。

 後にはどんよりと静まった空気の部屋。


「やめとくか?」


「大丈夫だと言っていたでしょう。呑みましょう・・・」


「レストランで食事する時なら・・・」


「まあ、呑もうか・・・潰れないように気を付けよう」


 とくとく、と皆のグラスに琥珀色の酒が注がれる。

 皆、グラスを取ったが、浮き上がった気分は一気に沈んでしまった。


「じゃ、乾杯」


 一息に呑み干した男達の背中には、寂しいものが見えた。

 豪華な部屋。

 高い酒。

 窓を見れば、雄大な大地を遥か遠くまで見渡せる。


「ふう・・・久々に良い酒を呑めると言うに・・・盛り上がれませんなあ」


「仕方ない事ですよ・・・」


「これが勇者の試練、というものですかね・・・」



----------



 マサヒデ達とイザベルが廊下に出たのは同時であった。


「お」


「あ、マサヒデ様」


 歩み寄ると、マサヒデが苦笑して、


「今、アルマダさんの部屋に行って来た所です」


「闇討ちがと?」


 マサヒデが頷くと、くす、とイザベルが笑った。


「今、イザベルさん達の部屋に飛び込んだのはトモヤです。酒を呑んでしまったので、毒はないかと慌てて」


 イザベルは笑いを堪え、


「クレール様が解毒の術をひとかけなされば済みましたでしょうに」


「ちょっと脅かしてやっただけですよ。ところで、時間あります?」


「勿論」


 マサヒデがクレールの肩に手を置き、


「クレールさんと、銀行に行って来てもらえます? シズクさんか、カオルさんと一緒に」


「・・・やはり、カジノに行くのですか」


 ふん! とクレールが鼻を鳴らし、拳を握って、


「勿論! 行きますよ! 勝った分は、旅費に追加です!」


「溶かされませぬよう、程々にしておかれた方が」


「分かってます! 2000枚以内! これなら良いですよね!」


 勿論、金貨で2000枚の意。マサヒデが顔をしかめ、


「突っ込みますね・・・」


「このくらいなら平気ですから!」


 イザベルも呆れ顔で首を振る。

 レート上限なしのテーブルはあるだろうか・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ