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勇者祭4 米衆連合国編  作者: 牧野三河


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第16話


 それから1日進めて、夜。

 焚き火を囲んで、カオルが地図を広げた。とん、と地図に指を置き、


「この調子で進めて行くと、明日には町に入ります」


「ふうむ。どんな町です」


「良いとも、厄介とも言える町です。ゾーンカバー。観光地です」


「観光地ですか・・・」


 マサヒデがちょっと首を傾げて、もう一度、ふうむ、と声を出し、


「そこ、魔族入れます?」


 米衆連合国は教会が強い。特に内陸には魔族排斥派も多いのだ。町どころか、領地丸ごと排斥派、という所もあるので、そこは避けていく。この街道をまっすぐ行って東海岸、というわけにはいかない。

 カオルが頷いて、


「観光地ですので、そこは大丈夫でしょう。先に私が先行して調べて参りましても」


「ま、それには及ばないでしょう。ここはまだスティアン伯爵の領地?」


「はい。ゾーンカバーの町もそうです」


「待って下さい」


 アルマダが焚き火をじっと見つめたまま、


「カオルさん。町に入る前に、保安官の確認をしてきてほしいのですが」


 カオルが首を傾げる。


「保安官を? 理由をお尋ねしても宜しいでしょうか」


「米衆では、腕利きの犯罪者を保安官や補佐に雇うと聞きますよ。首枷という意味もありますが・・・多少は見逃される事もあり・・・色々あるとかないとか」


「・・・」


「他の領地では大賞金首の者が、別の領地で保安官、などは珍しくないらしいではありませんか。念の為に確認をしてほしいのです。分別のつかない悪党だと、大貴族も見境なし・・・」


 アルマダがクレール、イザベルを見る。

 マサヒデが首を傾げて、


「ほあんかんってなんです?」


「米衆連合国の岡っ引きの事です。正規の奉行所の役人ではない役目の者。警察から逮捕の権限などを与えられて、取り締まる役目をする者です。日輪国でも、元盗賊が奉行所の手下で働く、なんて珍しくないでしょう」


「別に捕まる程度なら、いつでもカオルさんや忍の皆さんが助けられますよ」


 アルマダが呆れ顔で首を振る。


「逃げたら牢破りです。それで賞金をかけられると面倒ですよ。合法的に我々を犯罪者に出来る。いちいち保釈金を払ってたら、いくら絞られるか分かったものではない。荷物の没収なんてされてみなさい。即日闇市場行きで紛失、行方不明です」


 シズクが鼻で笑い、腕を回す。


「そんな奴らぶっ飛ばしちゃえばいいのさ! 大人しく捕まる事なんてないよ!」


「保安官に手を上げたら、当然ながら賞金首ですよ。警察に追い回されます。我々の事を知ったら、下手すると騎兵隊が出て来てしまいますよ」


「めんどっ!」


 アルマダが眉間に皺を寄せ、焚き火を睨みつける。


「ええ、面倒です・・・面倒ですね。面倒な保安官や補佐がいると、面倒ですよ。排斥派がいる町ではないなあと入ってしまった所に、そんな保安官がいたら・・・目をつけられると厄介・・・」


 アルマダがぐるりと皆を見渡す。

 一見して高い馬。

 一見して分かる上級貴族。

 この国では滅多に見られないサムライは、高く売れる刀を腰にぶら下げている。

 馬車を覗けば鬼族が寝転がっており、武器がごろごろ。


「・・・私達が目を付けられない訳が無いですよね」


 カオルが軽く頷き、


「そのような者ならば、私が始末して参りましょう。大手を振って町に入れます」


「ふむ」


 マサヒデが慌ててカオルを抑えるように手を出して、


「ちょ、ちょっと。岡っ引きですよね。始末ってまずいのでは」


 カオルとアルマダがマサヒデを見返し、


「悪党ならば、です。例えどこぞの賞金首であろうと、真面目に職務をこなす者であれば、生かしておきましょう。他領で賞金首の者であれば、そこへ参れば賞金ももらえますし」


「そうですよ、マサヒデさん。腐った役人を生かしておけば、町の者は苦労するばかり。しかも相手は岡っ引きで簡単に手は出せず、そのくせ盗賊のような者。訴えなどしたら、訴えた者を殺して他の領地で保安官をやりだすかも」


「・・・」


「やったとバレなければ良いのです。カオルさんなら簡単な事でしょう」


「お任せ下さい」


 ぱさぱさとカオルが地図を畳む。

 アルマダが顎に手を当て、


「我々は、町から少し離れた所で一度止まりましょうか・・・カオルさんは、町に潜入する時は、あの馬・・・そうそう、ルチル。あれで行きなさい。白百合では目立ちすぎます。イザベル様、ルチルを借りても宜しいですね?」


「勿論です」


「よし。面倒ですが、これから町に入る前は、保安官、保安官補も確かめる事にしましょう。異議はありますか?」


 誰も手を挙げない。異議なし。


「では皆さん、面倒ですが、我慢して下さい。カオルさんが戻るまで待つだけです。平和な町なら、ゆっくり風呂に浸かるもよし、ベッドで休むもよし」


「ああー! ベッドー!」


 クレールが嬉しそうに声を上げる。ここ数日、ずっと寝袋で寝ていたのだから、お嬢様のクレールには大変だっただろう。カオルがくすっと笑い、


「では、この町の良い所を。この町には安くて良いホテルがございます。一晩泊まっても良いかと」


「んふー・・・」


 にやにやするクレールを見て、カオルも笑みを浮かべる。


「それと、ハワード様。ご心配の保安官ですが、この町はまず大丈夫です。一応、確認は致しますが」


「何故です」


「ここは賭場の町です」


「カジノですかあー!? やった!」


 クレールが目を輝かせる。

 が、アルマダは反対に顔をしかめ、


「カジノですか・・・」


「ハワード様、ご懸念には及びません。公営の賭場ですので、ヤクザ者の類はおりません。また、それらが居つけないよう、警官も保安官も、粒選りが揃っているはずです。公営、つまりここでのカジノの収益の一部は、スティアン伯爵に入るのです」


 呆れたような顔で、アルマダが頬杖をつく。


「なるほど。流石はスティアン伯爵。商売上手ですね」


「ホテルも格安。4つ星で、銀貨30枚あれば最高級のホテルのスイートを借りられます」


 カオルがぱらぱらと手に持った本をめくる。入国審査の待合室にあった、米衆連合観光案内だ。


「ええ・・・と。一番高い部屋が銀貨28枚。一番安い部屋が11枚です」


 ええ? と皆が怪訝な顔をする。

 いくらなんでも、ホテルのスイートが銀貨28枚は安すぎる。それも最高級?


「一番高い部屋が銀貨28枚? もしかして、観光客を集める為ですか?」


「その通り。カジノで十分な売上が出るので、ホテル代は安いという訳です」


「なるほど・・・上手い手ですよ。クレールさん、勉強になりますね」


「はぁい! 楽しみです!」


 かく、とアルマダが肩を落とす。マサヒデも溜め息をつき、


「オリネオでクレールさんが泊まってた部屋って、いくらなんです」


「金貨8枚です」


 10分の1以下。確かにこれは安い。


「こちら側から入った所に商店街。商店街を過ぎるとすぐ、街道の左側にホテルゾーンカバー・プールアンドスパという非常に大きなホテルがございます。レストランは10箇所、カフェ、バー。プールが3。プールサイドバー。スパ。サウナ。そして、カジノ」


「うわー! 明日が楽しみですね!」


 マサヒデが怪訝な顔で首を傾げ、


「ちょっと待って下さい。何でレストランが10箇所もあるんです?」


「10階建ての建物が」


 え!? と皆が驚き、目を丸くしてカオルを見る。

 驚いていないのはクレールだけ。


「ええっ!? 10階!? ちなみに、ちょっと聞いていいですか? ちなみにですよ。クレールさんの家って、何階建てなんです?」


「本宅で6階しかないですけど」


「は!?」


 クレールはうんざりした顔で仰向けになり、はあー、と溜め息をついて、


「私の部屋、4階なんですよおー・・・階段の上り下りが面倒で。お父様、お母様のお部屋は5階ですから、まだましですけど」


「そおですか・・・」


 皆、聞き逃さなかった。


 本宅で。


 他にも敷地内に屋敷がいくつもあるのだろう・・・

 さすがに世界で上から何番目、という貴族は違う。

 なにせ、日輪国がいくつも入る大きな領地を持っているのだから。


「なので、私は普段は隣の別邸に住んでます。2階建てですから」


「へえー・・・」


 やはり別邸があるのだ。他にもいくつもあるに違いない。

 ちらりとアルマダを見ると、アルマダも驚いた顔をしている。

 一応、日輪国の大貴族の家ではあるが・・・


(ここは聞かないでおこう)


 おほん、とカオルが咳払いして、


「えー・・・10階建ての建物が2つありまして・・・広いので、客に不便とレストランがいくつも作られておるのです。カジノは地下にございます」


「へ、へーえ・・・」


 仰向けのクレールがにっこり笑う。


「楽しみですねー! 疲れた身体をゆっくりと休めましょーう!」


 は、とアルマダが息をついて、ごろりと寝転がる。


「そう言えば、米衆連合にはカジノ都市があると聞きましたが、ここですか?」


「いえ。ラストベナスという都市になります。ゾーンカバーの何倍もの大きさがあり、同じような賭場のあるホテルがいくつもございます。ここから北へ4日の距離です」


「少し遠回りしても・・・」


 クレールが期待の目でマサヒデを見上げたが、マサヒデはすっと目を逸らしてクレールに背を向けて横に寝転がり、ぷちぷち草を抜いて、


「4日もかけてそんな所には行きたくないですよねえ」


 と、焚き火に抜いた草を放り込む。カオルも苦笑いして頷き、


「行かない方が良いかと。砂漠地域のど真ん中の都市で、行くまでが大変です。この辺りのように木や草はありません。一面が砂と岩の地域です。都市の近くに湖があるだけで、他に水場がございません。そのような所を4日も進めるのは大変です。草がないので、馬の飼葉も大量に買っておきませんと」


「ええー! 行けないんですかー!?」


 クレールが口を尖らせたが、カオルは澄ました顔で、


「行けない事もございませんが、そこから東へ向かうとなると、また砂漠。砂漠を抜けると湿地帯。次は山脈。山脈を越えると国有林地帯。となると、北か南へ大回り。まっすぐ東へ進むのは困難というか、無理です。ラストベナスから東海岸へ向かうのであれば、また砂漠を4日かけてここへ戻る事になります。どうされますか?」


「ううん・・・行きません」


「それが賢明です。ゾーンカバーでお楽しみ下さい」


「はあい」


 はあ、ふう、と、マサヒデとアルマダが溜め息をついて転がる。

 賭け事など真っ平だ。退屈な町になるか・・・


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