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勇者祭4 米衆連合国編  作者: 牧野三河


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第118話


 訓練を終えたマサヒデ達がホテルに戻った時、クレールの第一声は、


「こんなに痩せてしまって!」


 であった。


 マサヒデ達は、皆、苦笑いして、荷物を部屋に置いた後、すぐにレストランに来たのである。


 アルマダは1ヶ月分の読売を足元に置き、ちまちま食べながら、じーっと記事に目を通している。


「この1ヶ月で、何か面白い事ありました?」


「ええ。たくさん・・・日輪国も大変になりそうです」


「え! 何かあるんですか?」


 マサヒデが声を上げると、アルマダはコーヒーのカップを置いて唸った。


「ううむ・・・白露帝国が本腰を入れてますかね」


「え」


 マサヒデがぎくっとしたのは、現在の白露帝国王、ハラムィ王の事。日輪国と戦を起こしたい、それがハラムィ王の考えである。

 一昔前は親日派であったのだが、今はがらりと変わって、日輪国は猿の国だなどと言っているそうな。

 議会も開戦派が多数をしめていて、反対派の第一王女アナスターシャはゾエで暗殺されかかり、今も潜伏中。のはず。


「日輪国と戦争なんですか」


 アルマダが読売から顔を上げ、首を振った。


「いや、そうではないです。今、白露帝国って、隣接している小さな国と・・・もう3年にもなりますか。小競り合いをしているのですが」


「あ、日輪国の話ではない」


「まあ、事が起こっているのは日輪国ではないですが、他人事ではないです」


「と、言いますと」


「この戦が終わると、日輪国に集中出来るではありませんか」


 確かにそうだ。


「・・・」


「数年、軍備を整えたら、開戦もありえますね。白露には幸いな事に、ワキーナとは地続きの国との戦なので、白露海軍はほぼ被害を受けていません。陸軍がやられているだけです。日輪国にたくさんの船が押し寄せてきたら、どうしましょうかね」


「でも、日輪国って海軍が強いんでしょう?」


 アルマダが手を振り、


「数が違いますよ。四方八方から攻められたら、守りきれない。上陸されたらまずい。いくら陸軍はやられているからとはいえ、元々の兵の数が違いすぎる。大中心国も便乗してきたら数ヶ月で終わる。米衆連合の援軍なんて間に合わないでしょう。もし、の話ですがね」


「なるほど。で、その小競り合いの戦争、終わりそうなんですか」


「ええ。早ければ夏には終わるんじゃないですか。まあ、今までよく持ちこたえましたよ」


「3年て言ってましたよね。どうやって持ちこたえたんです」


 アルマダが持っていた読売を差し出す。

 『米衆連合元首、ワキーナ支援打ち切り』


「こういうわけです。他の国から支援をもらって、何とか持ちこたえていたんですよ。で、最も大きな国が支援を打ち切りました」


「え、じゃあ」


「このままだとすぐ終わりますが」


 アルマダが次の読売を差し出す。

 『米衆連合元首、白露ワキーナ双方へ停戦の呼び掛け』


「こうなる」


「あ、良かった。停戦するんですか」


「良くはないです。ワキーナは米衆の支援がないとやっていけないので、米衆が出した条件を全部飲んだ上で交渉のテーブルに座る。米衆連合の犬になってしまう。ですが、なるしかない。でないと、米衆の支援が来ない。押し潰されるだけです」


「・・・」


「白露帝国は白露帝国で、米衆が撤退した今こそ好機と逸っている。ここで」


 そう言ってアルマダが指差した所には、元首の声。

 『軍事支援は再開する』

 『今は白露次第。米衆は双方と良い関係を築いてきた。白露の出方を見守るのみ』


「あ、支援再開ですね。良かったじゃないですか」


「全然良くはないです。脅しですよ。いつでも米衆は支援を打ち切ると、先に脅して見せたのです。お前達の国が無くなっても良いなら、俺達の言う事を聞くんだ。米衆の元首はそう言っているのです。ワキーナには選択肢はないから、もう米衆の言う事は鵜呑みにするしかない。停戦条件は米衆が好きに決めるんです」


 なるほど! とマサヒデが腕を組む。


「ううむ! 米衆の元首って、交渉上手なんですね!」


「・・・良く言えばそうですがね・・・」


 分かっていないな、と呟き、アルマダが読売を取る。


「日輪国もこうなるかも、と考えられませんか。この小国の立場になってみなさい」


「あ、そうか・・・本当に戦になったら、そうなっちゃうのか・・・」


「そういう事ですよ。マサヒデさん、魔王様の所に絶対に行かないと。何としても、マツ様、クレール様との結婚の許しは得ないと・・・あなたの奥方2人の存在は、それだけ大きい。下手をすると魔の国を敵に回してしまうぞ、という存在なんです」


「・・・何か、政に左右されるみたいで嫌なんですけど」


 アルマダがぎろりとマサヒデを睨む。


「白露帝国との戦を避けるカードになるんです。国を守りたいと思うなら」


「はいはい」


 ふう、とアルマダが溜息をつく。


「白露と戦になってしまったら・・・私も、マサヒデさんも、マツ様も、クレール様も、戦場に出る大戦ですよ。でないと、日輪国は負けるからです。そこ、分かってるんですか。我々が戻る前に戦になったら、マツ様が1人で戦場に立つんです」


「・・・」


「マツ様だって不死身ではない。シズクさんとは違って、ひ弱です。見えない程の遠くから鉄砲を撃たれたら、簡単に死んでしまう。見えない相手に、魔術はほぼ意味がない。でしょう?」


「確かに」


「もう日輪国は、陛下任せではやっていけない時代になってきたんです。世界がそれを許さない。政に携われとは言いませんが、皆が国に我もと声と手を挙げなければ、日輪国の終わりはすぐなんですよ」


「ううむ」


「身近な方が戦に出ることを考えてみて下さい。カゲミツ様、マツ様、クレール様、イザベル様、シズクさん。いざ戦となれば、皆、最前線で戦って下さいって人ばかりです。カオルさんは潜入に飛ばされ、ホルニコヴァさんも前線で兵の治療に大忙し。誰一人、戦には加わらない事を許される人は居ないんです」


 そして、今は魔術も広まり、鉄砲も出来た。

 昔の魔の国と人の国との戦とは違う。

 魔族もばたばた死ぬのだ。


「絶対に魔王様を味方につけないと。正式な条約などではないにしろ、日輪国には魔王様の身内が住んでいますよ。それを見せねば。どの国も、魔の国は決して敵に回したくない。戦は避けられる可能性が高い」


「まあ、でしょうが」


 ふう、と溜息をついて、アルマダはばさりと読売を投げ出した。

 はい、とマサヒデが手を挙げる。


「なんですか。マサヒデ君」


「アルマダ先生、日輪国がその小国を支援してはいけないんですか?」


「してます。ただし、日輪国の支援は、難民救済や瓦礫の除去やなんかの雑用で、前線には出ていません。白露とも日輪国軍を目標に攻撃しない、という約束を取り付けた上での活動です。ただし、前線に居たら知りませんよ、ワキーナ軍の側に居たら知りませんよ、です。あくまで民間への支援です。まあ、こっそり軍を助けているとは思いますがね」


「魔の国は?」


「経済制裁と医療活動。白露への輸出入の制限と、ワキーナへの治癒師や医者の派遣です。軍は出していません。魔の国は軍の規模をぎりぎりに押さえているので、これは仕方ないですね。停戦後の復興支援も申し出ています。復興支援はワキーナが独立国であった場合。白露がワキーナを勝ち取ったら手を貸さないって事ですね」


「冒険者や傭兵は?」


「たくさん行っていますよ。だけでなく、民間の義勇兵も多数。それでぎりぎり持っている、という状況です。この戦、それだけ、白露は世界に嫌な目で見られてしまったんですが・・・経済制裁の方は、ほぼ機能していないですね」


「なんでですか?」


「石炭、鉄なんかは、白露の売りであり、世界でもシェアが高い。それの輸入を制限すると、物価が高くなって困る国が多いです。結果、ほとんど名前だけの経済制裁になっている所が多くなっているのが現状です。この品だけは税金高くします、みたいな感じで、大して障りのない品だけに税金を高くかける、みたいになっているのが実情ですね」


「あらら」


「他にも、白露の海外に置いてある会社で売り買いして、白露との貿易ではないので構いません、と言っている国もある始末」


「それって、経済制裁の意味がないのでは」


「ええ。ないです。我が国は白露を非難します、と表の顔はそれっぽく掲げていますが、内情はそんな国ばかりです。最初だけでしたね」


「ははあ」


「他にもこんな記事」


 下の方に置いてあった読売を取って、テーブルに置く。

 見出しはなんとシズクだ。


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