表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者祭4 米衆連合国編  作者: 牧野三河


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

109/132

第109話


 翌日、ナガタニはオリネオの町で冒険者登録をするため、道場を休む事となった。

 ゾエで冒険者として働いてもいたので、活動拠点の書き換えだけである。


 道場を休むのは、町を案内してもらう為で―――


「なんで俺だけ歩きなんだよ」


「仕方ねえだろ。あんたみてえなの乗せれる馬なんて、いねえって」


 マスダも一緒である。

 しかも案内役がカゲミツである。

 ナガタニはカゲミツと馬を並べ、肩をすくめるばかり。


「それとな、運が良ければ、冒険者ギルドで遊んでいける」


「何かあんのか」


「アブソルート流の使い手が、冒険者の指導に来るんだ」


「えっ」


 ナガタニが顔を上げた。


「マサヒデが居た頃は、マサヒデやカオルさん、シズクさんが指導やってた。マサヒデが町を出る時、そのアブソルート流の使い手に、後をお願いしたってわけだ」


「と言うと、相当のお方ですか」


 カゲミツがにやっと笑って、ナガタニ、マスダと見て、


「そりゃあそうさ。俺の師匠の息子さんだからな」


「えっ!」「何だと!」


 カゲミツがおかしそうに笑って、馬の頭をわしわし撫でる。


「ははは! 道場がちょっと遠いから、毎日ってわけじゃねえけど、ちょいちょい来てるし、冒険者も2、3人その息子さんの道場に入った。勿論、うちにも来たけど」


「カゲミツ先生よ、どのくらい強いんだ」


「ちょい前のマサヒデと比べてで良いか。ここに居た頃のマサヒデ」


「ああ」


「んー! そうだな、どっこいか、ちょい強いくらいだ」


「なんと!?」「そりゃあまた!」


 ナガタニは驚き、マスダは喜びの声を上げる。


「最近は見てねえが・・・どんくらい腕上げたかな。うん、マスダさんとは、かなり良い勝負するくらいになってると思う。ナタノスケは8、2くらいじゃねえか」


「そうか!」


「して、その御方の名は」


「ジロウ。ジロウ=シュウサン」



----------



 そしてオリネオの町、冒険者ギルド前。


 カゲミツとナガタニが繋ぎ場に馬を止めている。

 そして、マスダは『暴力』を絵に書いたような笑みを浮かべ、入口で仁王立ち。


 ロビーはしんと静まり返って、皆がマスダに目を向けては、すっと目を逸らす。


「マスダさんよう・・・頼むぜ」


「何を」


「あんまビビらすなって。ほら、皆、あんた見てビビってんだろ」


「仕方ねえだろ。でかいのは生まれつきなんだ」


「顔だよ、顔」


「仕方ねえだろ。虎族なんだから・・・」


「そうじゃなくてな。まあいいや」


 マスダを連れ、カゲミツが入って行って、受付を覗き込む。


「おーい」


「ひいっ!」


 頭を抱えて震えていた受付嬢が声を上げた。

 ふ、とカゲミツが苦笑して、


「大丈夫。俺々。カーゲーミーツ!」


「カゲミツ様!? 助けて!」


「いや、あれ、うちの師範代だから。顔が怖いだけで、面白い奴だから」


 すすす・・・と目を向けると、恐ろしい顔の虎族。でかい!


「ひ、ひひひ」


「何もしねえって」


「ははあ、はあ、はい・・・」


 目を合わせないように、おずおずと受付嬢が立って、椅子に座る。

 カゲミツはどっかりと受付に肘を乗せ、にっこり笑った。


「あのさ、今日、ジロウさん来てる?」


「いえ、来る予定ですけど、まだ」


「なあんだよ!」


 ふはあ、とマスダが息をついて、がっくりと首を落とした。

 まあまあ、とカゲミツがマスダの腕を叩く。


「後で来るって言ってるじゃねえか。軽く町回ってからまた来ようぜ」


「うーん」


「ナタノスケ。手続き済ませろ。向かいがマサヒデの嫁の家。俺ら待ってるから」


「嫁? マサヒデ殿の奥方ですか?」


 マサヒデの嫁はクレール、レイシクランだから、家は魔の国では?


「クレールさんは2番目だから。第一夫人の家」


「は!?」


「じゃ。マスダさん、行こうぜ。サン落雁あるかな」


「はいよ」


 驚くナガタニを置いて、カゲミツとマスダは出て行ってしまった。

 2人は「マツさーん」と声を掛け、向かいの平屋に入って行く。


「ん・・・おほん! 失礼しました」


「あ、は、ははい!」


 ん、ん! と受付嬢も居住まいを正す。


「手前、ナタノスケ=ナガタニ。ゾエのウスケシで冒険者活動をしていました。しばらくトミヤス村に住むことになりましたので、こちらに所属を変えたいのです」


「あ、はい! 分かりました!」


 ナガタニが冒険者免許証を出すと、あっ! と受付嬢が声を上げた。

 枠が茶色!


「茶帯ですか!」


「ええ、まあ」


「すごい! Bランク上級ですね! 即戦力です!」


「や、トミヤス道場で指導員になりましたので、そうしょっちゅう顔は出せないと思うのですが」


「ええーっ! 指導員! トミヤス道場の!」


「恥ずかしながら・・・あ、先程の虎族の方、マスダ先生。あの方も、最近、師範代になられたそうで」


 ちら、と受付嬢が向かいの魔術師協会に目を向ける。


「えー・・・怖いですけど・・・」


「実力は折り紙付きですね。凄く珍しい武術を使われる方です。見た目も怖いですし、怖い事も言いますが、乱暴をする方ではありません。刃を向けなければですが」


「うっかり向けちゃったら」


「・・・」


「注意勧告を出しておきます」


「稽古なら平気ですよ。トミヤス道場で教えてるんですから」


「あ、それもそうですね・・・でも、あんなに大きな方が来たら、びっくりしちゃいます」


「私も最初は驚きましたが、良くも悪くも、武術に純粋な方です。では、手続き、頼みます。カゲミツ先生を待たせては」


「はい。ええっと・・・」


 書類を探し、ペンを出す。


「こちらに住所、こちらにお名前」


 ナガタニは名前を書き、署名をして、顔を上げた。


「現在の住所・・・トミヤス道場で良いでしょうか。トミヤス村の長屋を借りているのですが」


「構わないですよ。2、3日で道場の方に新しい免許が届きます」


「はい」


 さらさら・・・


「ありがとうございます! んー・・・はい! 結構です!」


「この、今まで持っていた冒険者免許は」


「まだ持ってて下さい。身分証にもなってますから。新しい冒険者免許が届いたら、破棄してもらって結構です」


「分かりました。では、また後で来ます。シュウサン殿に挨拶がしたく」


「あ、やっぱり! お待ちしております!」



----------



 手続きを済ませ、魔術師協会の玄関前。


(ううむ)


 このような侘家に、マサヒデの第一夫人がいるとは。

 クレールのどでかく派手な客船を見ているので、あまりにも意外。

 中からはカゲミツとマスダの笑い声。


(待たせては)


 と、玄関に手を掛けた時。


「御用ですか」


「!」


 びくっとして横を向くと、黒髪の女が立っている。

 いつの間に!?


 ぱ! と飛び退き、左手が、ぱちん! と剣の留め具を外す。

 つつー・・・と、こめかみを嫌な汗が垂れ落ちていく。


「御用ですか」


 こくん、と喉を鳴らし、


「かっ・・・カゲミツ先生」


 と、何とか言葉をひねり出すと、女がにこりと笑った。


「ああ! ナガタニ様ですね! さ、どうぞ・・・」


「は・・・失礼致します」


 女が前に出て、玄関を開け、するりと中に入っていく。


 これがマサヒデの第一夫人!?

 見た目は普通の女だが、数語のやりとりで分かった。

 この女、只者ではない!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ