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勇者祭4 米衆連合国編  作者: 牧野三河


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第104話


 セント=エントーニョイ基地、地下。


 固く秘されたこの地下施設に、レイシクランの忍達が侵入中。


「確認だ。先ほど侵入中に連絡が入った。ここに隠されているのは、神の身体の一部、羽であると予想される。だが、あくまで予想だぞ。別の物かもしれん。決めつけてしまうな。見落とすぞ」


 真っ暗闇の倉庫の中で、忍達が頷く。


「笛の音。短く2回、この倉庫に集合。長く1回、即撤退。このふたつだけだ。だが、反響して音が届かぬやもしれぬ。何も聞こえずとも、半日後にまたここに集合」


 ドアが小さく開き、透明な忍達が、さー! と駆けて行く・・・



----------



 そして数刻の後。


『区域51番

 !!!立入禁止!!!

 発砲前の警告はありません』


 廊下のにはゲートがあり、左右に兵士。ゲートの向こうの左右にも兵士。

 鉄格子の扉を挟んで、背中合わせに立っている。

 あからさまに怪しい。罠ではなかろうか。


(ううむ・・・さっぱり分からぬ)


 上手く入口を隠してはいたが、中を偽装しようとは考えないのか?

 入口が見つかって中に入れば、怪しい所だらけ。

 警備を強化するだけでは、ここに何かあります! と教えているだけでは・・・


 とは言っても、廊下は鉄格子の戸で完全に分断されている。

 さすがに入る隙がない、と言う所だ。

 レイシクラン族でなければ。


 透明化した忍は、そのまま鉄格子をすり抜けていく。


(我ながらおかしなものだな)


 密閉された蓋はこれでは通れないが、隙間がある鉄格子は通れる。


 以前、マサヒデがクレールが消えた所を見て驚いていた。

 クレールはマサヒデの背に乗って消えたが、マサヒデは消えなかった。

 クレールはマサヒデの背に乗っていたが、マサヒデは重さが消えたと言う。


 すり抜けてしまうなら、地面の下に落ちていってしまうのでは? 落ちない。

 では、風が吹いたら飛んでいってしまうのでは? 飛ばない。

 身に着けている物は消える。抱きついたマサヒデは消えない。


 剣で斬りつけられても、鉄砲を撃たれても、魔術が飛んできても、すり抜ける。

 剣聖カゲミツの剣でさえ、能力で消えたレイシクランは斬れない。

 なのに・・・


 ぺたん。


「!」


 壁に手を置いた微かな音に、兵士が驚いてこちらを見ている。

 はて。当たったのに、手の跡は付いていない。


(壁はすり抜けられぬ。おかしなものだ)


 そうそう都合良くはいかないものだ。


 兵士が鉄砲を構えて歩いて来る。

 兵士の鉄砲に手を乗せると、すうっとすり抜ける。


(言われてみると、まっこと、おかしなものだ)


 透明な忍は、音を立てずに兵士の横を歩いて行った。

 兵士は気付かず、先程音がした辺りをきょろきょろしている。


(ふふふ。甘い甘い)


 マサヒデやアルマダ、カオル、シズクは、このように消えている自分達を察する。

 米衆連合の兵士とは格が・・・


(おっと、油断禁物)


 以前、マサヒデに無刀取りをかました軍人らしき男は、自分達を察していた。

 あれは技術からして間違いなく軍人。米衆連合の者かは不明だ。

 軍人にもそういう者はいる。


(あれは居ないと思うが)


 あの者は諜報活動で日輪国に潜入しているはず。はず、だが。

 流石に日輪国の諜報は難儀しているだろう。

 カオル以上の忍がごろごろしているのだ。


 もしくは、日輪国軍の諜報部の者だったのかも。

 とにかく、あの者はここには居まいが・・・


(同じ程の腕の者が居て、おかしくはない。居るならこの奥に居て、おかしくない)


 気を引き締め、忍が廊下を歩いて行く。



----------



 奥に進んで行き、廊下を曲がった所で、忍が足を止めた。


「・・・」


 言葉も出ない。

 ここから壁は分厚い1枚のガラス製になっていて、奥まで続いている。


 その中。


 3丈(9m)は軽く超えようかという、眩いばかりの純白の片羽が広がっている。

 中には白衣を着た研究者や魔術師が、数人ずつ固まって、書類を見ながら、何やら話し込んでいる。


 は! として、壁に張り付き、透明化を解く。


 このままでいると、どんどん腹が減っていってしまい、動けなくなる。

 鍛えてはいるが、それでも腹は減る。


(まさか、本当にあったとは! あれが神の羽か!)


 ふー・・・と静かに息を吐き、呼吸と心身を整える。

 少しして、


「んく!」


 と小さく吹き出した。


(何故ガラス張りにするのだ!?)


 外から丸見えではないか!

 これは隠さねばならぬ物ではないのか?

 一体、何を考えているのかさっぱり分からない。


 もう笑いを堪えるのに必死。


(いかん、笑ってはいかん。これはきっと見栄とかそういうものだ。いやいや、まさか見栄など。ここは軍であるぞ。きっと米衆連合での礼とかそういうものだ。さっぱり分からんが)


 この床から天井まである分厚いガラス。

 これは一体いくらしたものやら・・・


(見たいなら普通のガラス窓で良いではないか。運び込むのに苦労したろう)


 このガラスの壁だけで、いくらでもツッコミが出来てしまうが、腹を抱えているわけにもいかない。


 もう一度覗くと、部屋の向こう側にドアが見える。

 入口はあそこだけだ。


(これは運び出せぬな。部屋から出せても廊下を通れぬ)


 やるとしたら、魔術ででかい穴を上から開けてきて、あの羽の下から地面を盛り上げて上に運ぶ。それしかない。

 だが、流石に結界くらいは張ってあるはず。


「くっ」


 また忍が笑いを堪える。

 むしろ張ってあって欲しいくらいだ。


 天井を見上げる。

 かなり走り回ったが、上は本館辺りのはず。

 やはり、伝道所はこの羽の上に築かれたというわけだ。


 この広大な地下施設も、作ってから羽を運び込んだのではなく、あの羽を中心に広げていったに違いない。


「ふふ、ふふふ」


 運び出せないと考えると、別に見え見えでも良いのかな?


 忍は懐から笛を出した。



----------



 ここん。


 ゴミ捨て場の蓋が内側から叩かれた。

 見張りの忍が、とん、ととん、とん、と叩くと、かん! と蓋が開き、4人の忍が飛び出てきた。


「もう見つかったか」


「ああ」


 ふ、と羽を見つけた忍が失笑する。


「どうやら、この中には『偽装』という言葉はないようでな。警備があからさまに厳しい上に・・・ぷっ」


「どうした」


「ふふふ。いや、クレール様のご予想通りの羽であったのだが、なんと壁が床から天井までガラス張りよ。見つけて下さい! むしろ見て下さい! と言うておるようなものでな。笑いを堪えるに苦労したわ。自己主張の強い国だ」


「ふっ」「くくく」


「だがな、あれは運び出せぬ。幅は3丈も超えておったし、高さも天井近くまで。とても廊下は通れぬ。持ち運ぶなど以ての外」


「ふうむ」


「持ち出すには、魔術ででかい穴を開けるしかないな。もしくは破壊であるが、神の身体の一部、破壊は出来まい。テヅカ様も、化身の身で恐ろしい回復力を持っておった。あれはテヅカ様以上の神の身体であるし」


 ううむ、と忍の1人が首を傾げる。


「一度戻るか。予想以上に早く見つかった。時間もある。クレール様に報告し、研究内容の奪取を上申してみるか」


「奪取、か・・・研究資料を盗むわけには参らぬ。写さねばな・・・場所が分かっているとはいえ、これは手間だぞ」


 覆面の下で忍が笑う。


「なあに。廊下で写してこっそり戻す。これで良かろうが」


「かなりの数の資料があったぞ。研究員だけなら良いが、魔術師に兵もおる」


「とはいえ、見つけた、運べません、で終われまいが。折角、米衆軍の地下秘密要塞に入れたのであるし」


 地下秘密要塞と聞き、くす、と忍が笑う。


「ふ。地下秘密要塞か。戻るか。流石に今回は腹が減った」


「だな。たらふく食いたい」


 ふっ、と別の忍が笑う。


「その点、この国は良いな。どれもサイズがでかい」


「ハンバーガーは実に良いな。味もよし、頭ほどの大きさがあり、ポテトも付く。ホットドッグも上手いが、小さいしな」


「ううむ、ハンバーガーが食いたくなってきたぞ。さて、撤収合図を出すか」


 ぴゅいー! ぴゅいっ! ぴゅいー!


 レイシクランにしか聞こえない笛の音が鳴り響く。

 今夜はニンジャ達のハンバーガーパーティーだ。


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