表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者祭4 米衆連合国編  作者: 牧野三河


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/132

第103話


 ホテル・セント=エニャ。


 クレールの部屋に、カオルが入って来た。


「カオルさん、何かありましたか」


「はい。こちらを」


 カオルがノートを出し、絵図を古人の言葉を写したページを開き、クレールに差し出す。


「んん・・・」


 クレールは小さく唸って、眉根を寄せ、ノートの上で指を動かしていく。

 こく、こく、と頷いて、ノートから顔を上げ、カオルを見て、にやりと笑った。


「市庁舎の方に行ってもらって、正解でした」


「は」


「私の方では、御神体そのものかと判断していました。お眠りあそばしておられるなら、運び出すなどとんでもない! なんて考えておりましたけど、羽、ですね」


「おそらく」


「んふーん。なるほどなるほど・・・神の遺物ですか。それも、身体の一部」


「おそらく、ですが」


 びりびりとページを切り取り、ぼ! と火を点けて一瞬で灰に。

 ぱたん、とノートを閉じて、テーブルに置く。


「ううん・・・」


 クレールは腕を組んで、天井を見上げる。


「こういうのって、世界中にあるんでしょうか」


「見当も付きません。おそらく、これは日輪国の情報省も知らぬ事かと」


「ううん・・・」


「危険な物、かどうかは、まだ分かりませんが」


「ううん・・・」


「奪取致しますか」


「ううん・・・見つけたとして、まず、持ち出せるかどうか。小鳥の羽ではありませんし。仮に鳳の神が人族と同じ重さとして、それを飛ばせる羽。かなりの大きさのはず」


「はい。絵図を見ても、大きさは鳳の神の身長よりも大きく。まあ、古い絵図なので、正確さはどうだか分かりませんが」


「持ち出せたとして、運んで行ける物かどうか。持っているだけで危険な物かも」


「はい。私もその可能性は大きいかと考えます」


「何故?」


「運ばれず、伝道所が建てられた。伝道所は見張り台であったのでは」


「確かに。取り敢えずは、地下のどこにあるか、ですね。今の所、おそらくそうであろうというだけで、私達は、捕らぬ狸の皮算用をしております」


「はい」


「持ち出せて、運べるなら・・・こっそり魔王様に、と言いたい所ですけれど」


「何か」


「研究、させるだけさせておいて・・・という手も」


「なるほど」


「それに、他の国にも同じような物がありました、皆が研究しています、さて軍事技術が生まれた。我が国にはないぞ、となると、世界のパワーバランスはがくんと傾きますね」


「・・・」


 ううん! とクレールが声を上げ、ぺちん! と額に手を当てる。


「どう、致しましょうか・・・神の遺物なんて」


「宜しいでしょうか」


「どうぞ」


 カオルが真剣な顔で首を振る。


「人の手には余ります。クレール様、私は強引にでも奪取、封印すべきと。持ち出せぬとあらば、せめて魔王様へ報告すべきです」


 クレールが苦笑して頷く。


「ん、そうですね。研究させて、なんて、愚かな考えでした。でも、何があるのかはまだ確認出来ていません。捕らぬ狸のー、です」


「は」


 んーっ! とクレールが声を上げ、伸びをして、にっこり笑った。


「報告を待ちましょう! イザベルさんを呼んで、プールにでも行きませんか」


 カオルも笑って頷いた。


「はい」



----------



 セント=エントーニョイ陸軍基地。


(あったぞ!)


 クレール配下の忍の1人が、ついにそれと思しき場所を発見した。

 搬入口と見られる場所、それはゴミ捨て場であった。


 だかん、だかん、と古い箱が放り投げられて捨てられていくが、真新しい木箱が落とされる穴がある。蓋つきの穴だ。

 この古い箱は焼却されて灰になる。

 真新しい木箱の方は、おそらく食料やら日用品やらが入っているのだ。


(捨てている者は気付いていまいな)


 おそらく、ただ燃えないゴミだとか、軍の事情で焼却処分出来ないゴミとか、何らかの理由を言われているだけだろう。


 忍が覆面の下でにやりと笑う。

 ゴミ捨て場なら、ネズミが入ってしまったというのも、全く不自然でない。


 ゴミ捨て係が紙束を掴み、火を点けて放り投げる。

 燃えていくゴミと古い木箱。


(ち)


 しっかりとゴミが燃え尽きるのを待っている。

 煙草を出して、吸い出した。

 あいつが離れるまで待つのだ・・・


 生ゴミが燃える嫌な臭い。

 もくもくと上がる黒煙。


(焦るな。待て待て)


 じりじりしながら待つこと半刻(1時間)。

 ゴミ捨て係が文句を言いながら、ばしゃっとゴミに水を掛け、空の馬車に乗って離れていく。


(よし)


 姿を消したまま、穴に近付いて行く。

 クレールからもらった式神の札を出したが、木箱が放り入れられる穴・・・


 周囲を見渡し、慎重に蓋に手を当ててみる。

 特に魔力を感じられるでもない。

 ゴミ係がこの蓋を開けているのだ。封印などされていまい。

 木箱が落ちていくのだから、何かが入っても平気だろう。


 忍は式神の札を懐に戻し、ぴゅー! と笛を吹いた。

 しばらくして、散っていた忍達が集まってきた。

 皆もすぐに気付いて、蓋を見る。


「あれか」


「おそらく、な。あちらに入れられるのは、新しい木箱だけだ」


「ふむ」


「人1人、入れると思う。もう1人、一緒に来てくれ。あと1人、見張りを頼めるか。後は他の捜索を頼む」


「よし。俺が一緒に行こう」

「俺が見張りに残る」


「見張り、式神の札をくれ。中で使うやもしれぬ」


「む」


 小さく蓋を開け、ぬるりと忍が入り込む。続いてもう1人もぬるりと入る。

 見張りが周りを見渡し、蓋に目をやった。


(これだけ巧妙に・・・何があるのか)



----------



 穴の左右に手足を突っ張り、慎重に穴を下りていく忍2人。

 下からは、薄く光が見えている。

 やはり、下に人が居るのだ・・・


 かたり。


(し)


 小さく口を鳴らし、ぴたりと忍2人が止まる。


 かたり。かたり。


 落とされた木箱を片付けている音か。

 ちらちらと薄く見える光が動く。

 間違いない。誰かが居るのだ。


 しばらく待っていると、光が消え、ぱたん、とドアが閉まる音。


 ゆっくりと、忍2人が下りていく。

 ほんの少しずつ、何かの罠、魔力の乱れに気を付けて・・・


 するり、と1人が穴から出、すぐにもう1人も下りてきた。

 真っ暗闇。人の気配はない。

 火打ち石を出して、じ! とこすり、一瞬の光で部屋を見る。


 かなりの広さ。

 箱は分けて積まれている。

 この広さと備蓄物資、中には結構な人数が居ると予測出来るが・・・


「行くか?」


「その前に、適当に箱の中身を見てみるか。どんな者が居るか、分かるかもしれん」


「よし」


 細い竹筒を出し、ぽ、と蓋を開ける。

 中には油と、灯芯。

 灯芯のすぐ横に火打ち石が付いていて、これをこすれば油が染み込んだ灯芯に火が点くのだ。


 じ、と擦って、火を点ける。


「ふむ」


 積み上げられた箱には、字は書いていないが、箱の隅が小さく塗られている。

 それぞれ、色が違う。


 積み上げられた場所には、地面に枠が書いてあり、何の箱を積む場所か分かるようになっている。


 音もなく歩いて行き、箱の側に近付いた時。


「ほう。少し面倒そうだ」


 積み上げられた箱と箱の間に、小さな棚があって、長銃が縦に並んでいる。

 ここには兵がいるのだ。


 『火』と書かれた枠に積まれた箱を開けてみる。

 弾薬。

 他の箱を次々開けるが、爆弾の類は閃光爆弾と煙幕爆弾のみ。


「爆弾はこの類だけか」


「地下だからな」


「それもそうか」


 す、と蓋を戻し、周りを見る。


「だ、が・・・壁には、ばっちりと埋め込んであるのではないか」


「で、あろうな」


 いざと言う時には、この地下を丸ごと埋めてしまうのだ。


「この爆弾、いくつか頂いていくか? イザベル様の訓練の様子を見たが、中々良さそうだ」


「馬鹿を言うな。武器の備蓄量はしっかり帳簿に記してあろうが。数が足らぬとなれば大騒ぎになる」


「ううむ、惜しいな・・・行くか?」


「うむ・・・折角、式神の札を頂いてきたのだ。使ってみるか?」


「何を探させるのだ? もう侵入は出来ている。それは侵入経路を探すに使うのだぞ」


 兵など、消えていれば、すれ違っても気付かれはしない。

 普通に廊下を歩いて偵察すれば良いのだ。


「・・・それもそうか。探す物が何だか分かっていないのだからな・・・すまん」


「行くぞ」


「待て、広さが相当だぞ。本館の入口からかなり離れている。この食料を少々頂いて行くか? あの白露の軍の缶詰と同じような物であろう。かなり腹に入ると思うが」


「ううむ・・・いや、中に食堂の類はあろう。そこで済ませては」


「我らが食うと減るぞ。消えて行かねばなるまいし、腹は減るばかり。人族の食事量では、あれ、こんなに食うたか? とならんか」


「それもそうだな。いくつか頂いていくか」


 いくつか食料の箱を開け、中を使いかけの箱から、缶詰を取り出して懐に入れ、ふ! と竹筒の火を吹き消し、蓋をして懐に戻す。


 扉に張り付き、外の気配を確認・・・

 き・・・と小さく扉を開け、目でも確認。


「出るぞ」

「む」


 するりと倉庫を出て、長く伸びた廊下を見やる。

 ドアがいくつも並んでいるし、1部屋も大きそうだ。

 人影は見えないが・・・小声で囁く。


(これはまた・・・広いぞ)


(細かく調べておっては時間が掛かるな)


 前を歩く忍が足を止め、こん、と小さく壁を叩く。

 そこには『区域44番』と書かれてあった。


(見ろ。少なくとも、あと43区域。1区域がどれだけの広さか分からぬが)


(参ったな。戻って人を呼ぶか?)


(その方が良さそうだ。戻ろう。間違いなく、ここのどこかにお宝がある)


(そう人数もおらぬから、あと2人かな)


(そうさな。戻ろう)


 今の所、分かっているだけで44区域。

 時間は限られているし、細かくは調べていられない。

 この厳重に隔離された広い地下施設に、一体何があるのだろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ