第六章 受け継がれたもの
――共鳴は、二人を強く結びつけた。
けれど。
その繋がりこそが、アルフェンにとって最大の「侵入口」でもあった。
* * *
――翌朝。
遥香は目を覚ました。
「……」
しばらく、天井を見つめる。
眠ったはずなのに、身体に残っている感覚が妙に生々しい。
夢を見た。
いや、夢だったのかどうかも分からない。
暗い場所。黒い魔力。そして――レインの声。
『遥香』
呼ばれた。ただ名前を呼ばれただけだった。
それなのに、その声が自分の胸の奥から直接響いたような気がした。
「……レイン」
遥香はベッドから起き上がる。その瞬間、胸元が僅かに熱くなった。
「……っ」
服の下で、印が淡く輝いている。昨日まではなかった。あるいは、気づかなかっただけなのか。
「……何なんだ」
遥香が印に触れた瞬間、頭の中に一瞬だけ別の光景が浮かんだ。
白い部屋。窓辺に立つレイン。そして、こちらを振り返る彼の姿。
『遥香』
「……!」
光景が消え、遥香は息を呑んだ。
夢ではない。
レインの記憶だった。
* * *
同じ頃、レインも目を覚ましていた。
「……」
胸を押さえる。鼓動が速い。嫌な汗が背中を伝っている。
「また……」
昨日のアルフェンの声が蘇る。
『お前は、遥香を守りたいのだろう?』
『ならば――お前自身が、奴を傷つけることになるかもしれないな』
「……」
レインは首を振る。
「違う。僕は……遥香を傷つけない」
自分に言い聞かせるように呟いた瞬間、頭の中に遥香の姿が浮かんだ。紅い瞳。少し不機嫌そうな顔。
昨日、自分の手を握り返してくれた感触。
そして、声。
『お前が闇に引きずられたなら、私が引き戻す』
「……遥香」
レインは胸を押さえる。
その声はまるで自分の記憶ではないようだったが、確かに自分の中に存在していた。
* * *
食堂。
「おはよう」
遥香が席につく。
「おはよう、遥香」
レインも向かいに座った。
二人はしばらく黙っていた。
いつもなら何でもない会話が始まるはずなのに、今日は互いの顔を見るだけで何かがおかしいと分かった。
「……昨日」
レインが口を開く。
「夢を見なかった?」
遥香の手が止まる。
「……見た」
「やっぱり」
「お前も?」
「ああ」
二人は顔を見合わせる。
「私の夢に、お前がいた」
「僕の夢にも、遥香がいた」
「……それだけじゃない。遥香の声が……聞こえた」
遥香は黙っていたが、やがて「……私もだ」
と告げた。
その言葉を聞いた瞬間、二人の間に紅と蒼の魔力が僅かに浮かび上がった。
「……!」
すぐに消えたその現象に、レインは緊張をにじませる。
「近すぎる」
その言葉を、二人とも否定できなかった。
『これは……まずいですね』
エドワードの研究室。
魔力測定器の数値を見つめながら、エドワードは珍しく眉を寄せていた。
『昨日の時点では二人の魔力は一定の距離を保っていましたが、現在は――互いの魔力が、相手の存在を常に感知している状態です』
『常に?』
アーシェが尋ねる。
『ええ。距離が離れていても、ある程度なら魔力の影響を受けるでしょう』
エヴェンが腕を組む。
『つまり、二人の精神にも影響する』
『その可能性があります』
フランシスは黙っていたが、やがて低い声で告げた。
『……アルフェンだ。アルフェンが何かしている』
ヤガミが静かに頷く。
遥香はフランシスを見据えた。
「アルフェンは……何をしようとしている?」
『……四百年前』
フランシスが口を開く。
『アルフェンは、同じ術を研究していた』
「共鳴を?」
『正確には――人と人の魔力を繋ぐ術式を』
エドワードが頷く。
『私も記録を確認しました』
「目的は?」
レインが尋ねる。
フランシスは少しだけ目を伏せた。
『……支配だ。アルフェンは、誰か一人を自分の思い通りにするだけじゃない。繋がった人間同士を利用して、より大きな魔力を動かそうとしていた。そして最終的には――一人の魂を、別の魂へ重ねるつもりだった』
遥香の顔が強張る。
「魂を……何のために?」
誰も答えなかった。
やがて、ヤガミが静かに言った。
『アルフェン自身の孤独を、終わらせるためだ』
その時、研究室の魔法陣が突如として輝いた。
「……!」
中央に生まれた黒い亀裂から、低い声が響く。
『――そうだ。ようやく理解してきたな』
「アルフェン……!」
レインが前へ出る。
『恐れる必要はない。私は、お前たちを傷つけたいわけではない』
「だったら、何故私たちに干渉する?」
遥香が眉を寄せる。
『知りたいのだ。お前たちが――どこまで共鳴を強めていくのか。愛する者を失いたくない、誰かに必要とされたい、自分だけを見てほしい……その感情を、お前たちは知っている。だから、分かるだろう?』
遥香が拳を握る。
「……お前と私たちは違う。私は、誰かを自分のものにしようとは思わない」
アルフェンの声が、低く無機質に、でも僅かに哀愁を帯びて響いた。
『……そう言えるのは、愛されているからだ』
亀裂が消え、研究室に静寂が戻った。
遥香はその言葉を胸に残したまま、動けずにいた。
* * *
『……今の言葉』
エヴェンが呟く。
『アルフェンは、遥香の中に何かを見ている』
『何か?』
アーシェが尋ねる。
『ヤガミだ』
全員が黙った。
遥香の胸元の印が淡く輝くのを見つめながら、ヤガミは静かに口を開いた。
『……昔の記憶を、思い出した。アルフェンと初めて会った頃の記憶だ』
フランシスが目を伏せる。
その表情を見て、遥香は気づいた。
「フランシスも知っているのか?」
『……ああ』
「だったら――全て、教えろ。四百年前に出会った彼らに、何があった?」
ヤガミが言った。
『…見せるしかない。隠していても、意味がない』
『ヤガミ!』
エドワードの制止を振り切り、ヤガミ、フランシス、そして遥香とレインの魔力が結びつき、四つの光がゆっくりと重なった。
* * *
――四百年前。
王都。
王宮の最深部。
そこには、一国の皇族でさえ近づくことを許されない禁忌の塔があった。
外光を拒むかのような小さな窓。
幾重もの厳重な封印と魔術の鎖が巻きつけられた重い扉。
その光の届かない閉ざされた部屋に、一人の少年がいた。
絹糸のように長く伸びた銀髪。
血を思わせる鮮烈な紅い瞳。
まだあどけなさを残す、幼い顔立ち。
少年の名は――アルフェン。
英国王家、第十三王子。
国王の妾腹として生まれた、血筋の果ての末子だった。
だが、アルフェンがこの世に生を受けた直後。
彼の母親は命を落とした。
そして、生まれたばかりの赤子のアルフェンを目にした王宮の者たちは、その姿に底知れぬ恐怖を抱いたのだ。
禍々しいまでの紅い瞳。
呪われたかのような銀の髪。
そして――。
生まれたばかりの赤子とは思えないほど、周囲の空気を歪ませるほどの強大な魔力。
「……化け物だ」
「忌み子め」
「妾の子など我が王家の恥だ」
「母親が死んだのも、この子を孕んだからに違いない」
愛の欠片もない罵詈雑言を浴びせられながら、アルフェンは育った。
皇子という高貴な身分でありながら、誰にも愛されず、誰にも抱きしめられず。
光の届かない塔の一室に閉じ込められて。
まるで――。
その存在そのものを歴史の闇に隠蔽するかのように。
* * *
「……寒い」
幼いアルフェンが、凍える身体を抱きしめて呟く。
暖炉に火が入れられることはない。
食事は冷めきったまま扉の外に置かれるだけ。
話し相手など、この部屋には一人もいない。
自分の顔を映す鏡さえ、彼はほとんど見たことがなかった。
世界から完全に隔絶された日々の中。
ある日、重い鉄の扉が不自然な音を立てて開いた。
「失礼します」
部屋へ足を踏み入れたのは、彼より少し年上の、一人の少年だった。
輝くような金髪。
穏やかな光を湛えた蒼玉色の瞳。
その腕には一冊の魔導書と、薬草の独特な香りを漂わせる小さな鞄。
「……誰だ」
「今日からあなたのお付きになる者です」
「……帰れ」
「はい?」
「僕のところに来ても、誰も長続きしない」
アルフェンは子どもらしく尖った視線を向け、あからさまに顔を背けた。
「だから帰れ」
「…わかりました」
「……」
「では、帰りません」
「……は?」
「帰れと言われたので、ここには残ります」
「意味が分からない」
「僕もよく分かりません」
少年は柔らかく、あどけなく笑った。
「でも、命令には従わないといけないので」
「……変な奴」
「よく言われます」
少年は静かに机の上に薬草の入った鞄を置いた。
「僕は、フランシスです」
それが。
アルフェンとフランシスの最初の出会いだった。
* * *
フランシスは、ただの世話係ではなかった。
優れた魔術師としての高い才能を持ち、アルフェンの体内に巣食う異質な魔力を解明・研究する特命も与えられていたのだ。
「この魔力は……」
フランシスが精巧な魔導具のレンズを覗き込む。
「普通の人間とは、魔力の波長が全く違う」
「ならば、僕はやはり化け物なのだろう」
「違うよ」
フランシスは一切の迷いなく即答した。
「珍しいだけだ」
「同じことだ」
「違うさ」
「何が違う?」
「珍しいものは、ただ珍しいだけだよ」
フランシスは笑った。
「化け物かどうかを決めるのは、持っている力なんかじゃない」
「……」
「その力をどう使うかだと思うんだ」
アルフェンは黙り込んだ。
そして。
自分の魔力を前にしても怯えず、侮蔑の色を浮かべない人間を、彼は初めて見たのだった。
* * *
長い年月が流れた。
アルフェンは少年から青年へと成長した。
王宮での冷遇な扱いは変わらなかった。
けれど、フランシスだけは、決して変わらなかった。
ある静かな夜。
アルフェンは小さな窓の外に広がる闇夜を見つめながら呟いた。
「僕はいつか、この世界を変えたい」
「世界を?」
「ああ」
その紅い瞳には、まだ曇りのない純粋な光が宿っていた。
「生まれた場所や血筋だけで、人間の価値が決まるような世界をなくしたい」
「……」
「力がある者だけが、弱者を支配する世界も」
アルフェンはしっかりと拳を握りしめる。
「誰もが平等に生きられる世界を作る」
フランシスは静かに、優しく笑った。
「君なら、本当にできるかもしれないね」
「……僕を信じるのか?」
「うん」
「何故だ」
「君をずっと近くで見つめてきたからさ」
アルフェンはそれ以上言葉を返さなかった。
ただ、その温かな言葉を、胸の奥底へ大切に、大切にしまい込んだ。
* * *
そして。
フランシスの旅が始まった。
王宮の外へと足を延ばし、研究に必要な魔術素材を探し求めるためだった。
薬草。鉱石。豊かな魔力を秘めた植物。
そんな求めに応じて森や村を巡るうちに、フランシスは一人の男と運命的な出会いを果たす。
「……これは酷いな」
鬱蒼と茂る森の奥深くに、一人の男が傷つき、倒れていた。
絹糸のように長い黒髪。月光のように透き通る白い肌。しなやかで細身の身体つき。女性と見間違えるほど中性的で、息を飲むほど美しい顔立ち。
だが、その人物は――まぎれもない男だった。
「…触るな」
「えっ……?」
「その薬草は毒だ」
「……っ!」
フランシスが手にしていた草に視線が向けられる。
「これが?」
「似ているが別種だ」
男は痛みをこらえながら、ゆっくりと身体を起こした。
「それは煎じれば猛毒になる」
「詳しいんだね」
「日常的に薬草を扱っているからな」
男は小さく、自嘲するように笑った。
「私はヤガミ」
「僕はフランシス」
「そうか」
ヤガミは手際よく近くの草を摘み取った。
「傷薬なら、こちらを使え」
慣れた手つきで薬草をすり潰していく。
その動作には、長年の経験が染みついていた。
「君は薬師かい?」
「魔女さ」
「……魔女?」
「ああ」
ヤガミは何でもないことのように淡々と答えた。
「魔術も薬草も、両方扱う」
「一人で旅をしているのか?」
「困っている者がいれば、手を差し伸べる」
「それだけかい?」
「それだけだ」
ヤガミは穏やかに微笑んだ。
「力は、誰かを苦しめるためにあるものではないからな」
フランシスは、その言葉を聞いた瞬間。
不思議とアルフェンの姿を思い出していた。
* * *
その後、フランシスは旅先で何度もヤガミと出会った。
村で病に苦しむ人を治している時。
森の奥で静かに薬草を集めている時。
魔物に襲われた旅人を身を挺して助けている時。
ヤガミは、どこへ行っても変わらなかった。
誰かに褒められることを期待するわけでもない。
法外な金を要求することもない。
ただ、目の前で苦しんでいる人間がいれば、迷うことなく手を差し伸べる。
「君は本当に変わっているね」
ある日の道中、フランシスが苦笑交じりに言った。
「そうか?」
「普通なら、そんな献身的なことを続けるのは疲れてしまうよ」
「疲れるとも」
「……認めるんだね」
「だが」
ヤガミは柔らかく笑った。
「目の前で苦しんでいる者を放っておく方が、私にとってはよほど嫌だ」
フランシスは、その言葉を聞くたびに、アルフェンにもこの言葉を聴かせたいと強く願った。
そして、いつしか自覚する。
自分はもう、ヤガミという人間に会うことそのものを、何よりの楽しみにしているのだと。
* * *
やがて、フランシスはヤガミを王宮へと招いた。
「アルフェンに会ってほしいんだ」
「皇子に?」
「ああ」
「何故だ?」
「君のその考え方を、あいつにも知ってほしい」
ヤガミは少し思案し、やがて静かに頷いた。
「……分かった」
こうして。
アルフェンとヤガミの運命的な出会いが訪れた。
* * *
「君がアルフェンか」
「……そうだ」
アルフェンは、目の前の人物を凝視する。
長い黒髪。
中性的な整った顔立ち。
自分と同じ、血のような紅い瞳。
そして――自分の中にある荒々しい魔力とは違う、どこまでも穏やかで澄んだ魔力の波長。
「……魔女なのか?」
「ああ」
「男なのに?」
「男でも魔女にはなれるさ」
ヤガミはクスリと笑った。
「魔女とは女の名前というわけではないからな」
「……面白い男だ」
アルフェンが、人生で初めての笑みをこぼした。
その意外な表情を見て、ヤガミは少しだけ驚いたように目を丸くする。
「何だ?」
「いや」
「?」
「笑うのだなと思ってね」
ピタリと、アルフェンの表情の動きが止まった。
「……笑ってはいけないのか?」
「そんなことは言っていないさ」
ヤガミはどこまでも穏やかに答える。
「君は、笑った方がずっと良い顔をしている」
「……っ」
アルフェンは言葉を失った。
美しいとも。恐ろしいとも。
呪われた忌まわしい化け物だとも言われてきた。
けれど、ただ純粋に、自分の「笑った顔」を肯定され、褒められたのは、それが生まれて初めてのことだったからだ。
「……変な奴だ」
「よく言われるよ」
ヤガミは優しく笑った。
その笑顔を、アルフェンは長い間、まばたきもせずに見つめ続けていた。
* * *
そして。
ヤガミとの出会いをきっかけとして。
閉じ込められていたアルフェンの世界は、少しずつ外へと広がっていった。
やがて、もう一人の魔女が彼らの輪に加わる。
「あなたがアルフェン?」
そう言って現れた、豊かなブロンドの髪に桜桃色の瞳の誇り高い少女――――アーシェは、最初から最後まで、アルフェンを恐怖の目で見ることはなかった。
ただし、過剰に媚びへつらうことも一切しない。
「随分と尊大な態度の王子ですわね」
「……僕を誰だと思っている」
「知っていますわよ」
アーシェは美しく腕を組んで言い放つ。
「だからこそ、王子だからといって偉ぶるような見栄を張るのはおやめなさい」
「……っ」
アルフェンは目を丸くし、言葉に詰まった。
フランシスとも違う。ヤガミとも違う。
アーシェは、アルフェンが隠そうとする弱さを見抜き、真正面からそれを叱り飛ばす気高い人間だった。
「あなた、本当はとても寂しいのでしょう?」
「……なんだと?」
「違うかしら?」
「……違う」
「なら、そんな痛々しい顔を隠すことですわね」
アルフェンはバツが悪そうに顔を背けた。
「嫌味な女だ」
「褒め言葉としてありがたく受け取っておきますわ」
アーシェはからかうように笑った。
それ以来、アルフェンは彼女の前でだけは、時折頑なな殻を破って本音をこぼすようになった。
アーシェもまた、彼の頑なな心の奥底にある孤独を、誰よりも深く理解していたのだ。
だからこそ、後にアルフェンが暗い道を踏み外してしまった時、彼女は誰よりも必死に、彼を止めようと奔走することになる。
* * *
次に出会ったのは、エドワードという緑玉色の瞳に眼鏡をかけ、肩にかかる茶髪の男だった。
彼は魔術の研究において、五人の中でも突出した知識と理知的な頭脳を持っていた。
「面白い魔力ですね」
初対面の席で、エドワードはアルフェンの魔力の流れを観察しながら、純粋な好奇心を隠さずに言った。
「……面白い、だと?」
「ええ。非常に珍しい、特異な波長だ」
「怖くないのか?」
「何故、魔力を恐れる必要があるのです?」
エドワードは淡々と、しかし熱を帯びた瞳で答えた。
「理解できない現象があるなら、解明すればいいだけの話です」
アルフェンは、その理路整然とした言葉を聞いて、小さく自嘲気味に笑った。
エドワードは、アルフェンを「化け物」などと気味悪がらなかった。
同時に、憐れみから必要以上に優しく接することもしなかった。
だからこそ、アルフェンは彼を信頼した。
エドワードもまた、アルフェンの底知れぬ才能を高く評価していた。
ゼロから独自の魔術を生み出す創造力。世界を揺るがしかねない膨大な魔力量。そして、誰よりも強くこの世界を変えたいと願う、鋭い知性。
だが、エドワードだけは、その卓越した才能の奥底に潜む、危うい狂気にも気づいていた。
「アルフェン」
「何だ」
「君は、魔術でなら何でも思い通りにできると思わない方がいい」
「どういう意味だ」
「魔術で変えられるのは、外側の世界だけではないですから」
エドワードは静かに、警告するように告げた。
「人の心そのものまで、魔術で歪め、変えてしまうことはできてしまう」
「……」
「それはもはや力ではなく、ただの暴力的な『支配』です」
アルフェンはその言葉に何も答えなかった。
だが、その禁忌に触れる研究への興味が、のちに彼自身の運命を狂わせる研究へと繋がっていくことを、この時のエドワードはまだ知る由もなかった。
* * *
そして最後に。
エヴェンという、アルフェンと同じ銀髪を低く一つに結い、滅紫色の瞳が印象的な男と出会った。
エヴェンは五人の中でも、もっとも物静かで影のある男だった。
口数は極めて少ない。
他者の感情に同調して表に出すこともほとんどない。
だが、誰よりも多くの現実を、冷静な瞳で見据えていた。
初めてアルフェンと顔を合わせた時も。
「……お前は、随分と底冷えのする寂しい目をしているな」
彼はそれだけを呟いた。
「……っ」
アルフェンは鋭く眉を寄せる。
「何故それが分かる」
「俺も、似たような目をしているからだ」
それ以上、エヴェンは余計な言葉を重ねなかった。
けれど、アルフェンは不思議と、エヴェンのその無愛想な沈黙を嫌いではなかった。
エヴェンは必要以上にアルフェンへ踏み込もうとしない。
だが、危険が迫った時には必ず確かな手で助けに入る。
そして、魔力の複雑な流れや古代魔術の深淵について、誰よりも深い知識と慧眼を持っていた。
「アルフェン」
「何だ」
「その危険な術式は使うな」
「理由を聞こうか」
「お前自身の魂を内側から破壊する」
「……」
「魔術の力は、深く使えば使うほど強くなるとは限らない」
エヴェンは重々しく告げた。
「底知れぬ深みへ潜りすぎれば、二度と元の世界へ戻れなくなる術式もある」
アルフェンは、その忠告をしっかりと記憶の隅にとどめていた。
――覚えていたはずだった。
* * *
こうして。
ヤガミ。フランシス。エドワード。
エヴェン。アーシェ。
そしてアルフェン。
六人の若者たちは、いつしか自然と行動を共にするようになっていった。
魔物に脅かされた村を救い、病に倒れた人々を治療し、暴れる魔物を退け、夜を徹して魔術の真理を語り合った。
時には他愛のないことで腹を抱えて笑い合い、時には激しく意見をぶつけ合って喧嘩もした。
その日々は、アルフェンにとって、人生で初めて知る「家族」という温もりに酷く似ていた。
そして、その六人の絆の中心には、いつでも変わらずヤガミの姿があった。
* * *
ヤガミが笑えば、アルフェンまで嬉しくなった。
ヤガミが自分の紡いだ魔術を褒めてくれれば、もっともっと驚かせたくて仕方がなかった。
ヤガミが旅へと発てば、帰りを待ちわびた。
それが、いつの間にか彼の日常のすべて、当たり前の基準になっていた。
だが、それと同時に、アルフェンの胸の奥底には、徐々に歪んだ別の感情が芽生え始めていた。
ヤガミが村の小さな子どもに笑顔で花を渡している。
その手を、無邪気な子どもが嬉しそうに握りしめている。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
「気をつけて帰るんだぞ」
優しく微笑むヤガミの横顔。
「……っ」
アルフェンは、何故だか胸の奥がえぐられるような強い痛みを感じていた。
嫌だった。自分以外の誰かが、ヤガミに触れることが。ヤガミが自分以外の誰かに向け、あの穏やかな笑みを向けることが。
理由は自分でも分からない。
けれど、認めたくないほどに、それが嫌でたまらなかった。
* * *
そして。
フランシスとヤガミが二人きりで親しげに語り合う時間も、日を追うごとに増えていった。
「この薬草の成分はね」
「なるほど、興味深いな」
「君なら、この独自の魔術式と組み合わせられると思うんだ」
「面白いな、試してみよう」
二人が楽しそうに言葉を交わし、笑い合う。
アルフェンは、少し離れた暗がりから、その光景をじっと見つめていた。
そのすぐ隣で、アーシェが小さく、憂鬱な溜息を吐き出す。
「……アルフェン」
「なんだ」
「そんな陰気な顔をしていないで、二人のところへ混ざりに行けばいいでしょうに」
「別に、そんなんじゃない」
「そう?」
「僕は、寂しがったりなどしていない」
「そうですか」
アーシェはそれ以上深く追求しなかった。
ただ、アルフェンの足元で、彼の拳が血が滲むほど強く握りしめられているを見つめながら。
エドワードもまた、その不穏な様子に薄々気づいていた。
エヴェンだけは言葉を発せず、ただ静かにアルフェンの背中を見つめていた。
そして、誰よりも早く、エヴェンは直感していた。
アルフェンの中で渦巻いている感情が、もはや健全な友情などではないということに。
* * *
ある日の夜。
アルフェンは静かにフランシスへと歩み寄り、低い声で尋ねた。
「フランシス……お前は……ヤガミが好きなのか?」
「!」
フランシスの表情が、わずかにこわばって止まった。
「何故、そんなことを聞くんだい?」
「答えろ」
「……」
しばらくの沈黙の後、フランシスは困ったように、しかし隠しきれない真摯さを含んで小さく笑った。
「……そうなのかもしれないね」
「……そうか」
アルフェンは、感情の読めない笑みを浮かべた。
「わかったよ」
言葉はそれだけだった。
けれど、自分の部屋へと戻った瞬間。
アルフェンは机の上にあった重厚な魔導書を、指が白くなるほど強く、強く握りしめた。
「……嫌だ」
生まれて初めて、声に出してそれを零す。
「嫌だ……こんなの認めない」
胸が引き裂かれるように痛い。息ができないほどに苦しい。
フランシスは、自分にとって初めての世界をくれた大切な友人だった。
自分の化け物じみた本性を最初に恐れず、自分の孤独の深さを理解してくれた人だった。
なのに。
ヤガミだけは――。
「……渡したくない」
そして、歪んだ独占欲が脳裏を焼き尽くす。
「僕の方が……最初だったのに」
その瞬間。
アルフェンの精神のなかで、取り返しのつかない何かが決定的に音を立てて弾けた。
* * *
それからというもの。
アルフェンの研究の軌道は、完全に異様なものへと変わっていった。
「魂の核の強制固定」
「魔力の共鳴による精神の強制同化」
「他者意志の干渉と改変」
「完全なる支配術式」
エドワードが机の上に積まれた魔導書の束を手に取り、険しく眉をひそめる。
「アルフェン、これは一体何です」
「何でもない」
「嘘をつくな。これは人を救うための魔術じゃない、明らかに精神を縛るための禁忌だ」
「知っていて聞いているのだろう」
エドワードの追及に、アルフェンは冷ややかに言い放つ。
「なら、何のためにこんなものを調べているのです?」
アルフェンは答えず、ただ冷徹に視線を逸らした。
そばで聞いていたアーシェが、耐えかねたように静かに口を開く。
「……誰かを無理やり、自分のものにするため?」
ピタリと、アルフェンの手が止まった。
「……違う」
「本当に?」
「違うと言っている!」
アーシェは悲痛な色を瞳に浮かべて、ぐっと目を伏せた。
「なら、どうしてそんなにおびえた、狂った目をしてるの……?」
アルフェンはもはや何も答えることができなかった。
エヴェンが、その禍々しい魔導式を見つめて低い声で告げる。
「これは危険すぎる。一歩間違えれば破滅するぞ」
「わかっている」
「なら、今すぐやめろ」
「……やめられない」
「何故だ」
追い詰められたように、アルフェンはついにその歪んだ本音を吐き出した。
「……失いたくないんだ」
紅い瞳が、痛々しく、激しく揺らめく。
「誰も……」
「……」
「フランシスも……」
「……」
「ヤガミも……!」
アルフェンは両の拳を固く握りしめた。
「誰にも、僕を置いていってほしくないんだ!」
エドワードは静かに、絶望するかのように目を閉じた。
「それは守ることじゃない、アルフェン」
「……」
「ただの『支配』だ」
アルフェンは、その正論を耳を塞ぐように激しく拒絶した。
「だったら――!」
彼の紅い瞳が、底なしの暗闇の色に染まる。
「支配すればいいのだろうっ……!」
* * *
やがて、静穏だった王宮の内部で、不可解な異変が次々と起こり始めた。
一人の王子が、自室で原因不明のまま突然倒れた。数日後には次の王子も、そのまた次も。
王位継承権を持つ者たちが、次々と不可解な死を遂げていく。
原因は完全に不明。
だが、エドワードがわずかに残された魔力の痕跡を執念で解析した時。
「……これは」
そこに見つかったのは、紛うことなき禍々しい黒い呪術の痕跡だった。
「アルフェンが……こんなことを……?」
アーシェも、エヴェンも、言葉を失ってその術式を見つめた。
「まさか、本気なのか……?」
フランシスは全身を激しく震わせていた。
ヤガミは何も言わなかった。
ただ、燃え盛るような怒りではなく、深い、底なしの悲しみを湛えて静かに目を伏せただけだった。
* * *
「どうしてなんだ」
耐えかねたフランシスが、アルフェンを激しく問い詰める。
「王子たちを次々と手にかけたのは、本当に君なのか……?」
「彼らは、僕を殺そうとしていた。僕の邪魔をするからだ」
「だからって、命を奪っていい理由になるか!」
「違う」
アルフェンは冷めきった瞳で、淡々と告げる。
「彼らが生きている限り、醜い王位争いは永遠に終わらない」
「……!」
「ならば」
紅い瞳が残酷な光を放つ。
「最初から、全員いなければいいだけの話だ」
エドワードが悔しげに奥歯を噛みしめ、拳を鳴らす。
「そんな暴挙に出れば、世界を変えるどころか、この世界そのものを破壊することになるぞ!」
「世界など、最初からとうに壊れている」
アーシェが堪えきれずに叫んだ。
「だからって、あなたがすべてを壊していい免罪符にはなりませんわ!」
アルフェンは、愛しい仲間であったはずの少女を冷ややかに見据えた。
その瞳に浮かんでいたのは、あまりにも深い絶望と悲しみだった。
「……君まで、僕を否定するのか」
「違います、私はただ……!」
「なら、僕の邪魔をしないでくれ」
エヴェンが冷徹に、しかし重く言い放つ。
「もう、お前個人の問題ではない」
「……」
「このまま進めば、お前は二度と元の人間には戻れなくなる」
アルフェンは自嘲するように、乾いた笑い声をあげた。
「戻る必要なんて、最初からないさ」
* * *
そして。
アルフェンは迷うことなく、すべての元凶である父王の居室へと足を踏み入れた。
「父上」
「っ……アルフェン……」
王の老いた目に、恐怖の色が浮かび上がる。
「お前は……いったい、何をした……?」
「何も」
アルフェンは不気味に、美しく微笑んだ。
「私はただ、父上にこれからの正しい判断を下していただきたいだけです」
彼の掌から溢れ出た黒い魔力が、抵抗する間もなく王の身体へと侵入していく。
「……っぐ……!」
王の瞳から、意思の光がスッと消え去った。
「父上」
「……はい」
「この国には、魔女や魔術を扱う者が多すぎます」
「……うむ」
「彼らは民を惑わす害悪だ」
「……魔女を……すべて排除せよ」
抜け殻となった王の言葉を聞き、アルフェンは満足げに笑った。
「素晴らしい」
* * *
翌朝。
王都のあらゆる場所に、冷酷な勅令が掲げられた。
『すべての魔女を捕らえよ』
『魔術を使う者は一律で処罰する』
『魔女と疑わしき者は直ちに密告せよ』
街のあちこちで、人々の悲鳴と怒号が響き渡った。
細々と薬草を売る薬草師。病人を懸命に癒やしてきた治癒師。旅の途中で立ち寄っただけの無実の魔女。ただ密かに魔術の理を学んでいるだけの者たち。
次々と無慈悲な兵士たちに捕らえられていく。
そして、かつてアルフェンと共に歩んだ五人の魔女たちもまた、追われる側へと転落した。
「……アルフェン」
フランシスは燃え盛る王都の空を見上げながら、力なく呟いた。
「君は、本当にそこまで狂ってしまったのか……」
ヤガミは、炎に包まれゆく街並みをただ静かに見つめていた。
「行こう」
「どこへ?」
アーシェが不安そうに問う。
「ただ逃げ回るだけでは、何も終わらない」
ヤガミは静かに、しかし揺るぎない意志で答えた。
「彼を止めるんだ」
「私たちの手で……?」
エドワードが頷く。
「ならば、アルフェンの暴走を完全に抑え込むための封印術式を完成させる必要がある」
「だが、時間が足りない」
エヴェンが腕を組む。
「今のアルフェンの魔力は、あまりにも強大すぎる」
そして。
フランシスは静かに目を伏せ、覚悟を決めたように言った。
「……僕が、あいつを止める」
ヤガミがフランシスの肩に手を置く。
「一人では無理だ」
「わかってるさ」
フランシスはヤガミを見据えた。
「だから、みんなでやるんだ」
* * *
その後。
五人の魔女は追っ手をかわし各地を奔走しながら、アルフェンの支配に対抗するための唯一の手段を研究し続けた。
エドワードは命を削り、アルフェンの複雑怪奇な魔力構造を徹底的に解析した。
アーシェは追われる傷ついた魔女たちを秘密裏に匿い、安全な逃げ道を確保し続けた。
エヴェンは膨大な古代文献を読み漁り、アルフェンをその身ごと完全に消滅させず、永遠に封じるための術式を探求した。
ヤガミは、己の身の安全よりも、路頭に迷い傷ついた人々の治療と救済を優先し続けた。
そしてフランシスは、そのバラバラになりかけた四人の力と想いを、寸分たがわず一つに繋ぎ止めた。
五人は少しずつ、アルフェンという巨大な災厄を止めるための力を蓄えていった。
だが。
アルフェンもまた、狂気的な執念で彼らを追い詰めていたのだった。
* * *
ある夜のこと。
静まり返った森の中で、フランシスは一人、夜空を見上げていた。
「……眠れないのか、フランシス」
背後から歩んできたヤガミが、静かに隣に立つ。
「うん……少しね」
「アルフェンのことか」
「……ああ」
フランシスは悔しそうに拳を強く握りしめた。
「僕があいつの最初の光になって、あいつを救えたはずだと思っていたんだ…」
「……」
「でも違った。僕は、あいつの底なしの孤独を少しも埋めてやれなかった」
ヤガミは否定せず、ただ静かに彼の言葉を受け止める。
「僕がもっとうまく……」
「違うさ」
ヤガミは穏やかに、しかしきっぱりと言い放った。
「お前のせいじゃない。アルフェンの抱える孤独は、本来アルフェン自身が向き合わなければならなかったものだ」
「でも……」
「それに」
ヤガミは柔らかく微笑む。
「お前は十分に、彼を救おうとしたよ」
「君は、どうしてそんなに優しいんだい……」
「優しくなんかないさ」
「嘘だ」
フランシスは切なそうに笑った。
「僕は、君のそういう優しすぎるところが……好きだよ」
その率直な告白に、ヤガミの整った瞳がほんのわずかに揺らいだ。
「……フランシス」
「ごめん、困らせるつもりじゃ……」
「謝るな」
「……」
「私も、お前のことを大切に思っている」
まっすぐなその言葉に、フランシスは静かに目を閉じた。
それ以上、言葉を交わすことはなかった。
* * *
だが。
その二人のやり取りのすべてを。
少し離れた漆黒の木陰から、アルフェンが見つめていた。
血を思わせる紅い瞳が、激しく、狂おしく揺らめく。
「……っ」
ヤガミ。そして、フランシス。
二人が並んで立っている。
その近すぎる距離。
向けられた柔らかな表情。
疑うことのない確かな信頼。
アルフェンにとって、その光景こそがこの世で最も耐えがたいものだった。
「……どうして」
掠れた声が、震えながら喉から漏れる。
「どうして、僕じゃないんだ……?」
足元から、どす黒い魔力がどっと溢れ出し、地面を黒く染めていく。
「僕は……」
抑えきれなくなった温かな涙が、頬を伝って落ちる。
「僕の方が、先だったのに……!」
胸を焦がしていた切ない悲しみは、瞬く間に狂おしい怒りへと変貌した。
怒りは、あらゆるものを焼き尽くす激しい憎しみへと形を変える。
「ならば……」
アルフェンは歪んだ顔をゆっくりと上げ、夜空を睨みつけた。
「いっそ、誰も何も選べなくしてしまえばいいんだ」
* * *
――現在。
「……っ!」
遥香ははっと息を呑んで目を開けた。
気づけば、その頬には止めどなく一筋の涙が伝っていた。
「……いまのは……一体……?」
隣を見る。
レインもまた、激しく肩を揺らしながら荒い息を整えていた。
「アルフェン……」
「……ああ」
レインは自分の胸元を痛々しそうに押さえる。
「僕……あいつの抱えていた気持ちが、痛いほど……少し、分かってしまった」
遥香は、何も言葉を返すことができなかった。
ただ、胸の奥から離れない。
たった一人の少年の果てしない孤独と。
その少年を最後の最後まで救おうとした、五人の魔女たちの記憶。
それらの記憶が、遥香のなかで一本の線となって鮮やかに繋がっていく。
「……でも」
レインが顔を強ばらせて呟いた。
「まだ、終わってない」
「……え?」
次の瞬間。
足元の魔法陣が、再びおぞましい黒い輝きを放ち始めた。
遥香の胸の奥で、閉じ込められていた何かが、ゆっくりと目を覚ます。
『――遥香』
「……ヤガミ……?」
『見るな』
「え……?」
『これ以上、その先を見てはならない』
その声は、四百年の時を超えてなお、初めて明確な「恐怖」に震えていた。
『レインに……知られてはいけないんだ』
「いったい、何を……っ!?」
警告に対する答えは、二度と返ってこなかった。
代わりに。
隣に立つレインの首筋の印あたりに、おぞましい黒い亀裂が走る。
「――っあぁっ!」
「レイン……っ!」
彼の内側から、制御を失った凄まじい蒼い魔力が爆発的に暴れ出す。
その魔力の底から、全く別の、冷たく低い声が響いた。
『――門を開け』
遥香の紅い瞳が、恐怖で見開かれる。
「……なにを、してる……?」
レインの瞳が、みるみるうちに深い漆黒の色へと染まっていく。
『――四百年前の、続きを始めよう』
二人を繋ぎ止めていた、紅と蒼の光の束。
その中央に、決定的な黒い亀裂が大きな口を開ける。
そして。
遥香の脳裏に、鮮明な映像が映し出された。
遥か遠くの、閉ざされた土地。
うっそうと木々が茂る、呪われた黒い森。
その地の底深くで。
四百年の長きにわたって封じられていたはずの男が――今、ゆっくりと、その紅い瞳を開き始めた姿を。
――シュヴァルツヴァルト。
黒い森。
そこの深奥に眠るアルフェンの封印が。
いま、静かに崩壊へと、再び動き始めていたのだった。
次章、第七章 最後の封印




