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13.熱狂の中で

13.熱狂の中で


 歓喜の声!歓喜の声!歓喜の声!うるさくて、叶多は慌ててヘッドホンを取った。ギルドチャットにも興奮が伝染している。

『セト:引退は今度にしておくか』

『ミチコ:みなさんすごいですね!!本当に!!』

『タナカ:何だったんですか最後の!?びっくりしましたよ!』

『俳人:標準型魔法の強みがこれでもかと出てましたよね。強力なのにMP消費が少ない!羨ましい!』

『セト:俺の晩成型魔法……』

『ミチコ:ああでも、マリス様が……泣』

 部屋の扉をノックする音がした。叶多が許可する前に開く。VRデバイスをがばっと外した。

「おい、お前今何時だと思ってんだ。さっきからうるさいぞ。明日も学校……何だその顔は。」

「え?俺変な顔してる?」

「……とにかくゲームはやめて寝ろ。」

「わかった。」

「おやすみ。」

「おやすみ。」

 扉が閉まったのを確認して、諸々を装着し直した。ムービーが再生されている。

『タナカ:マリス……。』

『マリス:タナカ……殺せ……俺を……。』

『タナカ:そんなこと、できるわけないだろ。』

 よく見ると、マリスには紫色の硬質な首輪がついていた。

『アスモド:使えないな。二度も殺しそびれるとは、我の見込み違いだったか?それとも手抜きをしていたのか。』

『タナカ:黙っていろ!マリスのあの"メテオ"を見てなおそれが言えるのか!』

『アスモド:ああ、確かに見ていたとも。此奴はとても苦しそうにしていたな。それもそうだ、自らの自由と引き換えに助けた相手を殺さなければならない定めだったのだからな。』

『タナカ:なんだと……?』

『アスモド:貴様が東の塔でベルゼーブを倒した時、我は西の塔で此奴に追い詰められていた。だが我には策があったのだ。万が一塔が何者かに攻められ陥落した時は、塔を崩壊させ其奴を生き埋めにするという策がな。貴様のいた東の塔はまさにその策によって崩壊するところだった。それを此奴に伝えると、こう申し出てきたのだ。「タナカを助けろ、その代わり俺がどうなっても構わない。」とな。我は此奴に服従の首輪を付け、東の塔から殿に向かう通路を開いたのだ。どの道貴様らが我々を倒すことなどできはしまい。此奴の行為は無意味だ。』

『マリス:……。』

『タナカ:許さない……!どこまでマリスを侮辱すれば気が済むんだ!』

『アスモド:貴様も愚かだな。そのようなことにも気付けずに友と潰し合った。傑作だ。』

『タナカ:くそ……!』

『マリス:挑発に乗るな……!冷静さを失えばこいつの思う壺だ。』

『アスモド:さあ、マリス。もう一度立て。そして今度こそ邪魔者どもを殺せ。逆らえばその首輪によって貴様の首が飛ぶことを忘れるな。我が直々に此奴を殺してもいいのだぞ。』

 マリスが立ち上がった。その体はよろめき、今にも倒れそうだ。

『タナカ:マリス……。』

『マリス:……心配するな。もう二度とお前たちに迷惑はかけない。』

『タナカ:……おい、何をするつもりだ。』

『マリス:奴の望み通り、一切手を抜かず全力を出すだけだ。』

 マリスは何かを呟きながら、僅かに残っていたらしい力でタナカに容赦のない体当たりをし、壁際まで転がした。まるで、マリスやアスモドから遠ざけるように。

 叶多にはわかった。その呟きは、詠唱の一部だった。

 「裁かれるべき罪」。

『マリス:——"メテオ"!!』

『タナカ:マリス!』

『マリス:……ありが——』

 ドゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!!


 その日悪魔城は全壊し、マリスとアスモドは死亡と推定された。

 ——という説明でムービーは終わった。


「今日は本当にお疲れ様でした!また機会があったらよろしくお願いします!」

 俳人がまとめの挨拶をし、解散となる。俳人はなおも参加者の一人と何か話をしていたので、それ以外の三人はギルド通話に切り替えた。

「助けてください……マリス様ロスです。」

「意外だな。そこまでマリスというキャラクターに入れ込んでいたとは。」

「かっこいいじゃないですか。いつもこうなんですよ。私の推しのキャラはすぐ死にます。」

 言われてみれば美形のキャラクターで、頼もしさを感じたのも確かだった。

「というか、推しを頻繁に作るほどアニメとかに触れていたんですね。そっちの方が意外というか。」

「アニメはたまに観ますよ。ゲームをしないだけです。ああ、マリス様が死ななければ全てハッピーエンドだったのに……。」

「いいえ。ゲームをたくさんプレイしていないとわからないことかもしれませんが、このゲーム、多分これで終わりじゃないですよ。」

「タナカに同意だ。悪魔の最高権力となる、魔王ポジションにあたるキャラクターが出てきていないのもそうだが、クレジット付きのエンディングがどこにもない。せっかく、誰がこんなゲームを作ったのか拝んでやろうと思ったのに……。」

「まだマリス様以上の強敵を倒さなきゃいけないんですか!?」

「そのはずなんだが……どうやったらこの先ストーリーが進行するかわからないんだよな。オンラインコンテンツだからまだそこまで用意されていないだけなのか、それとも本当にこれで終わりなのか、それすらもわからない。とりあえずしばらくは探索をすることになるな。幸い俺たち攻略班はマリス戦の前にこのゲームの全エリアを探索済みだ。変化したところがあればすぐにわかる。」

「じゃあ、一区切りってことなんですね。」

「ああ、そうなるな。」

『俳人 がギルド通話に参加しました。』

「いやあどうもみなさん、さっきぶりです。よかったですねえ今日は。」

「そうだな。この先どうなるかはまだわからないが、マリスをようやく倒すことができた。俺たちの最初のトライから二十日ぐらい経っている。ぶっちぎりの最長記録更新だが、最速攻略は俺たちがもらった。苦労の甲斐はあったな……と、俺が戦っていたら思えただろうに。」

「そんなこと言いっこなしですよ。自分らは勝ったんです。今日は目一杯喜びを分かち合わないと!」

「……まあ、不貞腐れていても仕方ないか。」

「そうですよ!」

 それからは明るい話題が続いた。ミチコはマリスがいかに素晴らしいキャラクターだったかを熱弁し、叶多はアップグレードやキャリオンなど、興味深い魔法について俳人にきいてみた。

「アップグレードはバフ魔法です。魔法攻撃力が一段階アップします。これとか他の変化系魔法を使って能力が上昇していると、アスモドが全リセットを発動しやすくなってマッドの拘束時間が短くなりがちなのであんまり使うことはないんですが、アスモドのデバフに合わせて使うことで相殺できるんでたまに使うんですよね。レベル100で習得できるんで、すぐにタナカさんも使えるようになりますよ。」

 叶多が父親に注意をされてから早くも一時間が経過しようとしていたが、まだゲームを中断する気もなければ眠気もなかった。

 熱気冷めやらぬそこへ俳人が言った。

「そうだ、提案なんですけど、今度マッドハッターで祝勝会をしませんか?」

「祝勝会?」

「はい。言い換えると……この四人で、オフ会をしませんか?」



 コミュニケーション 進化済み

 マッド 進化済み

 メモリー進化まで 詠唱残り92,421回

 マグネット進化まで 詠唱残り9,535回

意地でもエタりません。応援よろしくお願いします。

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