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女王は拳で語る ― The Queen Speaks with Her Fists ―  作者: 十月さくら
閃光の女王と翡翠の白き魔女
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牢屋から始めよう(5)


「力が弱いなら弱いなりの戦い方をすればいいって、お婆ちゃんに教えてもらって。武道の達人のお婆ちゃんなんですけど、これがもーすごいんです! 大きな身体の男の人が束になってかかっても全然勝てなくて、わたしそれを見たとき即弟子入りしました! お婆ちゃんもわたしを気に入ってくれて……えへへ、楽しかったなぁ」


 ノヴァは歩きながら後ろを向き笑った。


「ほんとはお婆ちゃんと一緒の強さくらいにはなりたかったんですけど、お婆ちゃんが『後は貴女の武道を極めなさい』って言ってくれて」

「それは破門されたってことじゃないのか?」

「えーひどいですよぉ。なんかわたしもよく分かってないんですけど、『貴女は私よりも強くなるから、旅をして色んなものを吸収しなさい』って。なので破門じゃないと思います、たぶん……いつでも来なさいって言ってくれたし」

「ちなみに、どれくらい習ったんだ」

「んー、三ヶ月くらいですね。もう、一年くらい経つかなぁ」

「一年前だって? お前は、何時から旅をしているんだ」

「十歳だから、三年前くらいです」

「え……十歳で旅、ですか。しかも、一人で?」

「はい。それはもー大変でした。何回も死にかけたし……でもほら、わたしって危機的状況になるとわくわくするタイプじゃないですか」

「いや、知らないが」

「え、あ、そっか、そうですよね」


 アイリスとフロナの言葉にそれぞれ答えながら、ノヴァはまた笑い、腕を組んでうんうん頷く。


「あはは、まあ、そんな感じなので色々無理とかしちゃって……若かったなぁ、わたしも、うんうん」

「いや、まだ十三だろ、お前は」

「三年で大人になりますよー。十五才と、十八才って考えたら全然違うでしょ?」

「まあ、そうか?」

「そうですよー、っと」


 ――ガッ!


「……お前は出会い頭に兵を気絶させるのは止めろ、本当に」


 声をかける暇もなく横から現われた兵士を鳩尾の一撃で気絶させたノヴァにアイリスは頭を抱えて呟いた。


「でも、脱獄したんだから、目撃者は気絶させないと」

「牢屋は出たが、脱獄じゃない」

「あれ? まだ、お尋ね者じゃないんですか?」

「まだってな……そもそも、お尋ね者になることはない。いや、お前がこうして気絶させていけばお尋ね者になるかも知れないから本当に止めろ」

「じゃあ、兵士さんに会ったらどうしたらいいんですか?」

「何もするな」

「はーい、ってそういえば今更何ですけど、今、どこに向かってるんですか?」

「ああ、そうでしたね。お話ししていて言ってませんでしたが、ノヴァ、貴女は城を出なさい」

「ええ!? 魔女さんは!?」

「ごめんなさい、会わせるわけにはいきません」

「そんなぁ……う~ん、だったら夜中に忍びこむしか」

「いえ、本当に止めてくださいね、ノヴァ」

「はははっ、いや待て、フロナ。いいじゃないか、ここまで来たら会わせるくらいは」

「アイリス、ですが……」

「こいつなら本当に城に忍びこみかねない。だったら、私達と一緒のほうが安全だろう」

「ほんとですか! ありがとうございます、アイリスさん!」

「ああ、ただし、一つだけ約束だ。必ず私達の後ろにいろ。勝手に動くのは絶対に無しだ。いいな」

「はい、分かりました!」

「……本当にいいんですか、アイリス」

「そんな顔をしないでくれ、相変わらず心配性だな」


 心配顔で聞いてくるフロナに、アイリスは笑った。


「ノヴァと話して、久しぶりに気分が晴れた。面白い子供だよ。そのお礼くらいはしてもいいだろう」

「でも、おそらくビエルは今、王の間に……」

「……ああ、そうだったか。いや、逆にそのほうがいいかもしれない」


 アイリスはノヴァの頭に手を置き、


「若い内に色んな経験はしておいたほうがいい。例えば、一国の王に会うとかな」


 小さな少女にそう伝え、少し悪戯っぽく笑った。


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