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女王は拳で語る ― The Queen Speaks with Her Fists ―  作者: 十月さくら
閃光の女王と翡翠の白き魔女
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エピローグ(1)


 ――きっと怒られるんだろうなぁ、とは思っていた。


「もう、何をやっていたんですか! そんなにボロボロになってっ!!」


 城に帰って来たら、シリスがすごい勢いで駆け寄ってきて、涙を溜めてノヴァに抱きついた。


「っつ……ちょっと、シリス、少し痛いかも」

「あっ、ごめんなさい!」


 慌てて離れ、でも、両手で腕を掴んだまま、シリスはノヴァの全身を見つめた。


「服もボロボロで、傷だらけじゃないですか……もう」

「ああ、ごめんって。だから、泣かないで」


 魔族との戦いの後、全身傷だらけで血も流れていたので、このまま城に帰るわけにもいかなくて傷を塞ぐ程度には魔術で治していた。といっても、治癒魔術は得意ではないので、血を止める程度しか治せていないのだが。


(っていうか、いきなりの戦闘で敵多すぎ)


 結局、昼間から始めた戦いが終わったのは夕方だった。おかげで、めちゃくちゃお腹が空いている。


「うぅ……とにかく早く治療しますから、部屋に行きましょう。服も着替えなきゃ」

「うん、ごめん」

「謝るなら、こんなに傷だらけにならないでください」


 やっぱり怒られた……そう思いながら、心配をかけた手前、言う事を聞くしかなく。

 ノヴァはシリスに言われるまま、手を強く握られ引っ張られながら城で与えられたシリスの部屋に向かった。



 ――――――――――



「じゃあ、治療するので服を脱いでくださいね」

「は~い」

「…………」

「……何で言われた通りに服を脱いだのに、顔を赤くするの?」

「な、なんでもないですっ」


 シリスは顔を赤らめたまま椅子に座ったノヴァの後ろに回り……そして、息を呑み、瞼を伏せた。


「……ノヴァ」

「ん?」

「ノヴァがこれだけの傷を受けるなんて……一体、何と戦っていたんですか?」

「……あー」


 聞かれるとは思っていたし、話すつもりでもいた……が、ノヴァは天井を仰ぎ、


「後でもいい? シリスの話を聞いた後でも」

「……わかりました」


 ノヴァの言葉にシリスは真剣な頷き、背に手を当て治癒を施していった。


 その数十分後


「かわいいー!」

「…………」


 真剣な顔から満面の笑顔に変えてはしゃぐシリスの珍しい姿と声に、ノヴァはどう反応していいか分からず、とりあえず半目を向けた。


「確かに服はボロボロだったから着替えなきゃって思ってはいたけど……なんでドレス?」

「ノヴァも女の子なんだから、可愛い格好をしなきゃ駄目です!」

「う~ん、わたしは動きやすかったらなんでも。それに、これって思いっきりシリスの趣味が入っているような気がするし……いや、着たわたしもわたしだけど」

「よく似合っていますよ、ノヴァ」

「あはは、ありがとう」


 目をキラキラさせるシリスに、今の服から着替えるのは諦め、ノヴァはとりあえず椅子に座りふっと息を付く。


「そういえば、ミリアは?」

「ミリアは騎士団の皆さんのところに行っています。皆さん、すごくミリアのことを可愛がってくれて。ふふ、特にクレスタさんが」

「へぇ~、あのクレスタさんが」


 あの真面目そうなクレスタさんが……と思いつつ、ああいう真面目で硬そうな人が可愛い子を好きっていうのも漫画やアニメのあるあるだよねぇ、と変に納得もして。


「…………」


 そして、少しの沈黙……この沈黙の意味は分かっている。お互いに重い話にしなければならないと気付いているからだ。


「……シリスの話から聞いてもいい? 王様と話したんでしょ?」

「はい……」


 シリスも椅子に座り、俯いて組んだ両手を見つめた。


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