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女王は拳で語る ― The Queen Speaks with Her Fists ―  作者: 十月さくら
閃光の女王と翡翠の白き魔女
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光の後継者(4)


 そこは、レイハイスト城がある街から三日ほど歩いた場所……決して、誰も立ち寄らないであろう山の奥。

 そこにシリスの家があった。家の周りには花が咲き、少し先には小さな畑もあった。本当にフィリアとシリスはここで慎ましく自給自足の生活をしていたのだろう。

 長閑な雰囲気とゆったりした時間、山の空気を胸いっぱいに吸い込んで……そして、家の中に入り。


「――ノヴァ、これです」


 少しだけ三人で掃除して、シリスがお茶を用意してくれて一息。

 そうして、シリスが渡してくれたのは一冊の本と、布に包まれた細長いもの。


「うん、ありがとう」


 受け取り本を開く。相当古いもののようで紙は焼け、文字も擦れていた。

 びっしりと書かれた文字はそこにはなく、隙間が多くあり適当に書かれたような文章が並ぶ。読んでみて分かる。

 それは書物というよりは……


「……日記?」

「そうです、レイ・インファータの日記です」


 日記なんて読んでいいのかな、とも思いつつ、ノヴァは読み進め……そして、もう一つ気付いた。

 日記でもあるが、これはレイ・インファータの思索の形だった。魔術とは、魔力とは何か。魔族と戦う内に気付いた魔術の深奥。今、ノヴァ達が固定概念として持っている魔術理論を覆す本当の魔術の形。

 おそらく、今の魔術師では理解できない……でも、でも。


(……何となく分かる)


 それは生まれ変わる前、色んな漫画やアニメ、ゲームを見ていたからかも知れない。レイ・インファータの考えていたことが、気付いたことが理屈じゃなくノヴァには分かり……


「……ノヴァ?」

「ぇ? ああ、ごめんね、読みふけっちゃって」

「ううん、逆にやっぱりと思っちゃいました。ノヴァには分かるんですね、レイさんが書いていたことが」

「う~ん、本当に理解できているかは分からないけど」


 ノヴァは笑って一先ず本を閉じ、もう一つ渡された細長いものの布を外した。


「……これって」


 出てきたのは、ノヴァが……いや、生まれ変わる前によく見ていた物。漫画、アニメ、ゲーム作品では必ずと言っていいほど出てくる武器。

 短い片刃の剣、唾のない小太刀だった。


「どうして……」

「珍しい形の剣ですよね。調べて見たら、遙か東にある東方の国(オリエント)の剣らしいです」

「東方の国(オリエント)なんてあったんだ」


 ノヴァは驚いたまま、少しだけ刀を抜いた。錆び付いていない、綺麗に手入れされているように見える。これだったらすぐに使えるかもしれない。


(でも……なんだか親近感が湧くなぁ。レイ・インファータって本当に祖先なのかも)


 そう思いながら、キン――と刀を納めた。


「ありがとう、シリス。レイ・インファータからお母さんに託され、そして、シリスが大切にとっていてくれたこの本と、剣。大事に受け取るね」

「はいっ、これでお母さんの想いも果たせたような気がします」


 シリスはそう伝え、本当に、本当に嬉しそうに微笑んだ。


 ――だが、


「じゃあ、今度はシリスの番だね」


 そのノヴァの一言に、シリスの微笑みは一転して、


「うぅ~……ノヴァは意地悪です……」


 泣きそうな顔になりながら呟いた。



 ――――――――――



 それは、シリスの家から帰って来た次の日――


「やっぱり、ノヴァも一緒にいてください」

「わたしが一緒じゃ意味ないでしょ。シリスが自分で決めて返事しないと」

「そうですけど……うぅ、やっぱりノヴァは意地悪です


 シリスの泣き顔にノヴァは困ったように笑った。シリスのほうがずっと年上のはずなのに、こんなに甘えん坊だとは思わなかった。


「ほら、ミリアは一緒にいるし、頑張って」

「そうだよ、シリス! あたしが一緒にいるから安心して!」

「うん、ありがとう、ミリア……じゃあ、行ってきます」


 まだまだノヴァが付いてきてくれないことに不安があるみたいだったが、そこはぐっと我慢して。

 シリスは人間の姿のミリアと一緒に王の間に入って行った。


「さてっと」


 ノヴァは、んっと伸びをする。


「わたしもわたしで、ちょっと挨拶して来ようかな」


 そう言って、ノヴァは歩き出した。

 レイハイストは自然に溢れた国――誰も来ないような森の奥に向かって。


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