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女王は拳で語る ― The Queen Speaks with Her Fists ―  作者: 十月さくら
閃光の女王と翡翠の白き魔女
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光の後継者(3)


「母から聞いたことがあります。三百年前の戦乱、その裏には魔族がいたと……母はよく話していました、だから、絶対に護らないといけないって。大切なあの人に誓ったからって」

「大切な……シリスのお父さんのこと?」

「いえ、レイハイストに来るよりもずっと前……一緒に魔族と戦い、魔王を倒した人……そう、そうです!」


 シリスは声を上げ、ノヴァを見つめた。


「インファータ! その人の名前はレイ・インファータ!」

「……え?」

「お母さんの大切な人! その人のことを話す時、お母さんは本当に嬉しそうで、楽しそうで!」

「え……え? ちょっと待って、シリス」

「そして、私を助けてくれた大切な人もインファータ! お母さんと一緒!」

「少し落ち着け」

「ぁうっ!?」


 興奮するシリスの脳天に手刀を当て、ノヴァはふぅっと息を付いた。


「えっと、シリスのお母さん、フィリアさんの友達がレイ・インファータで……魔王を倒した?」

「はいぃ……お母さんが言っていました、魔王を倒した英雄、光の女王、そして、お母さんは翡翠の魔女。そう呼ばれていたって」

「う~ん、いや、でも、いくら家名が一緒でも、うちのお父さんもお母さんも、お爺ちゃんもお婆ちゃんも地図にすら載っていない村に住んでいて、きっとその前も住んでたから、違う人なんじゃないかなぁ」

「そうかもしれません……お母さんと一緒に戦った後、レイさんがどこで何をしていたのかは私も母から聞いていません。レイさんは普通の人間でしたし、お母さんはずっと一緒にいるために、エルフのように長生きできないかって本気で探していたみたいですけど……」

「うん……うん?」

(なんだかちょいちょい引っかかるけど……)


 とりあえず深くは考えないようにして、ノヴァは黙って話の続きを聞いた。


「ノヴァはレイさんの子孫かは分かりません。確かめる方法もおそらくないでしょう。でも……」


 シリスはノヴァを見つめた。真っ直ぐに、迷い無く。


「でも、私は信じています。ノヴァは女王の意思を継ぐ者、光の後継者だと」

「光の後継者……」

「ノヴァ」


 シリスは名前を呼び、ノヴァの手を握った。


「私の家に一緒に来てください。お母さんがレイさんから託されたものがあります。それを、ノヴァに渡したいんです」

「え……でも」

「きっと……きっと、この出会いは必然だって感じるんです。だから、ノヴァ、受け取ってください。後継者として」


 後継者と言われて、頭に浮かぶ魔王になった魔術士……意思を継いで託されるのは、託す人がいるから。誰でも後継者になれるわけじゃない。

 自分の目指す道の一つ。だったら、ここは迷うところじゃない!


「――わたしは特別な人間じゃないし、特別になりたいとも思わない」


 ノヴァは知らずに閉じていた瞼を開け、シリスへとにっと笑った。


「でも、意思は継がなきゃいけないって思う。魔王を倒した人、レイ・インファータの意思を。きっと、その人も英雄になりたかったわけじゃなくて、ただ、皆を助けたかっただけだと思うから」


 もし英雄と讃えられたなら、歴史に名が残っているはずだ。でも、レイ・インファータの名は聞いたことがなく、そして、もし自分の先祖だと言うのなら、その最期は小さな村で過ごしたってことになる。

 自分もそういう人間で在りたい……だからこそ、


「わたしは、光の後継になるよ」

「はいっ」


 シリスは手をぎゅっと握り、お互いに見つめて。


「むぅ~! あたしも混ぜて~!」

「ふふ、はいはい」


 ぷんすか怒るミリアをシリスは抱き留め、ノヴァは頭を撫でて三人で笑った。


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