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女王は拳で語る ― The Queen Speaks with Her Fists ―  作者: 十月さくら
閃光の女王と翡翠の白き魔女
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再挑戦(リベンジ)はその日のうちに(11)


「――ぁぁああぁあああぁあぁぁぁああああっっっ!!」


 全てを打ち破るかのように、シリスは絶叫した。今まで以上の魔力が膨れ上がり、蜃気楼のようにシリスの周りに放出される。

 暴走といえる魔術の構成をしながら、あらん限りの声でシリスは呪文を解き放った。


「煉獄縛りし火炎の神よ《フィルテ・ティア・メウス》!!」


 ゴワァアアアァアアアアアアアアアアアッッ!!


 瞬間、白き閃光が世界の全てを覆った。光が弾け、炎が渦巻き――

 そして、


「旋風逆巻く風の神よ《レイ・ティフス・シルフィーラ》!!」


 続けて、シリスは魔術を解き放つ。

 炎環の旋風が逆巻き、明確なる破壊の本流が轟き荒れ狂う。


「…………」


 その力の中心で、ノヴァは灼熱の疾風に髪を揺らしながら迫り来る殺意の衝動を静かに見つめていた。ゆっくり両手を前に突き出し風の魔術を解き放つ。


「烈風よ(シルフィーネ)」


 突き出した両手の中心に、風の力が現われる。これだけなら、シリスの魔術を防ぎようがないちっぽけな力。


「――――」


 息を吐く、長く長く長く――刹那の時の中でノヴァは集中の上に集中を重ねる。


(もっともっともっと――――)


 集中して集中して――感覚が研ぎ澄まされる中で、迫り来る炎と風の力と、自分の魔術と身体が全て一つのものへと変えていく。流れの中に身を委ね、魔術の力の流れを、中心を見定める。

 そして、凶暴な炎と風が自分を吹き飛ばすその瞬間――ノヴァは叫びながら両手を上へと突き上げた。


「はああぁぁぁあああぁぁぁっ!!」


 ゴガァァアアァァアアアァアアアッッ!!


 轟音と共に王の間の天井が吹き飛び、一瞬で塵と化す。

 空気すらも消し去るような力の奔流が残る中、ノヴァとシリスの視線がぶつかる。


「煉獄縛りし火炎の神よ《フィルテ・ティア・メウス》!!」


 左腕を上げたまま、シリスがもう一度叫ぶ。


 ジュワッ!!


 炎獄に塵が蒸発し、ノヴァの服が焼け焦げた。


「あああぁああああぁあああああああっっっ!!」


 だが、ノヴァはそこから一歩前へ踏み出した。

 頬が裂け、全身の肉が熱で弾けながらも、咆哮しながら炎獄に向かい風を纏わせた拳を突き出す。


 ゴガァアアァアアアアアアアアアアアアアッッッ!!


 ノヴァの拳を中心に、疾風の円が描かれ炎の壁が吹き飛んだ。


「――――――」


 連続の衝撃に、空気が弾け無くなっていた。真空状態に時が止まり、声もお互いの身体の動きも止まる。

 だが、


「――――ぁああああああっ!!」


 ノヴァはここでもう一歩踏み込み、シリスに向かって左足を蹴り上げた。


「旋風逆巻く風の神よ《レイ・ティフス・シルフィーラ》!!」


 迫るノヴァに、シリスが叫んだ――――かに見えた。

 だが、実際は声は出ていなかった。魔術は発動せず、シリスの身体が揺れる。


「――――っ!!」


 魔力が尽き倒れそうになりながらも、なお魔術を使おうとするシリスの目の前にノヴァが現われた。

 ――――そして、


「ごめんね、もう大丈夫だよ」


 その一言に、優しい囁きに。


「――――」


 シリスは涙を溢れさせながら、ノヴァの胸に倒れ込んだ。


「お疲れ様、シリス……今はゆっくり休んでいて」


 陽が落ち空いた天井から月が覗く中、ノヴァは優しくシリスを抱きしめ、頭を撫でながら子守歌のようにそう伝えた。


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