再挑戦(リベンジ)はその日のうちに(6)
「調子に乗んなよ女ども……おい、お前ら、獲物があっちから来てくれたんだ。好きにしていいぞ」
「……ぁ……いえ……頭……」
「ぁあん? どうしたんだ、お前ら。ガキはともかく、騎士の女三人は上物じゃねえか」
アイリスに気を失わされていた頭の男は小さな少女、ノヴァの戦いを見ていない。
怯える手下の男達を不思議に思いながら、なお、口を開こうとした瞬間――
――タンッ
ノヴァは頭の男の懐に入り、ゾドンッ!ともう一度足を踏み込んだ。
鳩尾に入った掌底に身体は折れ曲がり、だが、もうその時には男の意識はなく。
「……で?」
ノヴァの「戦います?」を込めた一言に、手下の男達はぶんぶんと首を横に振り、
ガッチャン!
手下達は気を失った男を引きずりながら、自ら進んで牢に入っていった。
代わりに出てきたアイリスとフロナは女騎士三人と少女を見つめ、
「……良かった、無事で」
フロナはぎゅっとノヴァを抱きしめた。
「ごめんなさい、ご心配をおかけしました」
「ううん、ノヴァが無事ならそれでいいんです」
「ありがとう、また助けられたな、ノヴァ」
フロナに続いてアイリスもノヴァの肩に手を置き礼を伝え、そして、三人の騎士へと顔を向けた。
「フィル、クレスタ、ミィム。三人ともありがとう。お陰で助かった」
「えへへ、あたし達は何もしてないです。でも、団長達が無事でほんとに良かった」
「それで、ビエルはどうしている?」
頭を掻きながら笑うフィルにアイリスは微笑み、すぐに騎士団長としての顔になるとそう問いかけた。
「ビエルは王の間です。酷い荒れようで、大臣達を罵倒しては殴っています」
「兵士も集められていて……ビエル側の人間は全ていると言っていいかと思います」
「そうか」
クレスタとミィムの言葉にアイリスは頷き、すぐに牢の入り口へと歩き出した。
ビエルがほぼ常に王の間にいる理由は分かっている。いざとなれば、レイハイスト王を人質にするつもりだ。加えて、今、ビエル側の人間を集めているのは、ノヴァの戦いを見て精神的に追い詰められ人間不信になっているのだろう。だから、信用できる人間だけを自分の周りに固めた。
「……逆に好機かもしれないな」
牢屋から出てしばらく、アイリスは足を止めて呟くとフロナへと顔を向けた。
「どう思う、法官殿」
法官殿――アイリスがそう呼んだ意味が分かり、フロナは苦笑した。
「クーデターは許されません。非合法な暴力は法官として断じて承服できないことです」
はっきりとそう答え、フロナは続けた。
「ビエルの行為は非合法の暴力そのものでしかありません。法官として国を護る騎士団に事態の沈静を要請します」
「了解した……やっと命令してくれたな」
「アイリスや騎士団の皆さんを危険な目に遭わせたくなかったんです。でも……」
ノヴァへ視線を向け、凜と決意する。
「どういう理由であれ、ノヴァは魔女と戦ってくれています。この国の人間じゃない、小さな女の子がです。だったら、私も覚悟を決めます」
「フローナさんっ♪」
「ひゃぅっ!?」
厳しい視線になるフロナの頬をノヴァはつねって引っ張った。
「怖い顔になってますよー。わたしは好きで楽しく戦ってるんですから、そんなに重く考えないでください」
「ぁう……で、でも、ノヴァ……」
「いいんですよ、いいんです」
ノヴァはつねっていた手を離し、にこっと笑った。
「重く考えたっていいことなんて一つもないんですから。こういうのって『何とかする!』よりも『なんとかなれー』くらいが丁度いいんです。殺し合いするんじゃないんですから。ね?」
「ノヴァ……本当に貴女という子は」
肩の力が抜け、フロナに笑顔が戻る。それを見て、アイシスも笑い、
「聞いた通りだ。我々は殺し合いをするつもりはない。騎士団の皆の腕なら全員気絶させるくらい容易だと私は信じている。どうだ?」
「もちろんです、団長っ!」
元気に答えるフィルに頷き、アイリスは命じた。
「騎士団を集めてくれ。集まり次第、王の間へ進む――騎士団の役目を果たす時だ」




