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女王は拳で語る ― The Queen Speaks with Her Fists ―  作者: 十月さくら
閃光の女王と翡翠の白き魔女
18/45

再挑戦(リベンジ)はその日のうちに(4)


 ――夕闇に紛れて、影から城の敷地へ空を飛んで入っていく。兵士が少ないのか、自分とシリスの戦いで壊れた壁を片付けているのか、それとも、ビエルが恐れて城の中に全員入れて護りを固めているのか。見る限りでは兵士はいない。どちらにしても、誰にも見つからず城に入れるのは良かった。


「……確かにシリスのことは心配だし早く助けたいけど、ノヴァも怪我しているのにこんなに急いで来るなんて……」

「心配してくれてありがとう、ミリア。でも、シリスもそうだけど、アイリスさんやフロナさんのことも気になるから」

「アイリス、フロナ?」

「騎士団長さんと、フロナさんは……何をしているんだろう? 大臣とか? とにかく、二人はわたしの話を聞いてくれて牢から出してくれたから、助けないと」

「騎士団長と大臣とかだったら、大丈夫じゃないの?」

「ミリアも見ていたと思うけど、王様のところでちょっと派手にしちゃったからね。気が立っている男の人は大抵碌なことしないから」

「あー……そうだね」


 色々と察したのか、ノヴァの肩に乗っている子猫のミリアはうんざりした声を上げた。


「だから、まずは牢屋に行く。多分、二人はそこにいると思うから」


 最初に門番に捕まって牢に連れて行かれたから道順は分かっている。ノヴァは城の中に入り、足音を消して牢への廊下を進んで行き――


「――早く行かないと! 団長やフロナさんが危ないよ!」


 女の人の焦った声に、足を止めた。


「分かってる、フィル。でも、牢から助け出したとしても、その後のことを考えないと……」

「そんなこと言ってる場合じゃないよ、クレスタ! 見たでしょ、ビエルの雇った男達が牢に向かってるの!」

「私も同じ気持ちだけど、まずは落ち着こう。団長とフロナさんを助けた後は、もう城には居られないと思う」

「そうだね、ミィムの言う通りだ。城を抜け出して、その後は……」

「そんなの、団長がいたら何とかなるよ!」


 話している三人の女の人の声……アイリスを団長と呼んでいるということは、三人は間違い無く騎士団の人間。だったら、自分達の味方だ。

 そうすぐに理解して、ノヴァは三人の前に姿を現した。


「今の話、わたしも混ぜてください」

「君は……王の間にいた!」


 ショートボブの女性が駆け寄りノヴァの前で立ち止まった。


「あれ? わたしのこと知っているんですか?」

「ああ、そうだよね。実はあの時、何かあったら団長を助けようと王の間の外にいたんだ。でも、驚いた! 扉の隙間から覗いていたらノヴァが男達を次々と倒していて!」

「ありがとうございます、えっと……」

「あたしはフィル! そして、こっちの二人が」

「クレスタだ、よろしく」

「私はミィムです。よろしくお願いします、ノヴァさん」

「はい、よろしくお願いします」


 髪の長い切れ長の目の女性、クレスタと、ゆるふわのロングウェーブで優しく微笑んでくるミィムと握手を交して、


「でも、良かった。無事だったんだね」


 最期に握手をしたフィルが、そっとノヴァの肩に手を置いた。


「ええ、何とか。あ、でも、今は全然大丈夫ですよ。身体は動きますし、戦えます」

「本当に? 無理をしてませんか?」


 続けて心配そうに聞いてくるミィムにノヴァは微笑んだ。


「ありがとうございます。でも、大丈夫なのは本当ですよ。むしろ、早くシリスと戦いたくて仕方がないんです! だから、もう一回一対一で戦わせてください!」


 目の前の女性三人は顔を見合わせ、そして、苦笑した。おそらく、今、魔女……シリスと戦えるのはノヴァしかいない。けれど、危険な戦いになるのは間違い無く、小さな少女に全てを任せてしまうのは年上として、騎士団の兵士として許せるはずもなかった。

 しかし、ノヴァ自身が戦うことを望んでいるのなら反対もできない……三人は苦笑するしかなかった。


「ありがとう、ノヴァ。じゃあ、あたし達と一緒に戦ってくれる?」

「もちろんです!」


 微笑みが戻ったフィルに、ノヴァもまたにっと笑い。


「よし、では、牢に急ごう」


 すぐに駆け出すクレスタに付いて、フィルとミィム、そして、ノヴァもまた駆け出した。


「……あたしの紹介は?」

「後でね、今はしっかり掴まっていてね」


 小さく言うミリアに笑って伝え、走ったまま子猫の耳裏を撫でてあげた。


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