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女王は拳で語る ― The Queen Speaks with Her Fists ―  作者: 十月さくら
閃光の女王と翡翠の白き魔女
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第三章 再挑戦(リベンジ)はその日のうちに(1)


 ――温かい陽の光、温かい布団、優しく撫でてくれる手の温もり。

 陽が少ししか入ってこない、冷たく小さい城の部屋じゃ無い。温かな家、シリスと自分の家。

 良かった、帰って来たんだね、シリス――


「ん……」

「ぁ……目が覚めた?」


 撫でてくれていた温かい優しい手が止まり、子猫は目をしぱしぱさせながら「なぁ」と小さく鳴いて顔を上げた。

 髪が長い黒服の女の子……あれ、シリスはいつから黒服着るようになったんだろう……と不思議に思いながら、白い子猫はのろのろと起き上がり、くぁっと大きく欠伸をする。


「んぅ……お腹すいた」

「ふふ、そう思ってミルクもらってきたよ」

「ミルクッ!?」


 耳をぴんっと立て、子猫は女の子に目を向け……


「……あれ?」


 シリスじゃない、その女の子を見て……そして、ここが自分達の家じゃないことにも気付き、子猫は周囲を見回した。


「……ここ、どこ?」

「宿屋だよー。良かったぁ、城に行く前に借りといて。荷物持ったままだと、いざ戦いになったら困るしね」


 城……戦い……だんだんと頭に浮かんでくる映像。


「替えの服があって良かったよー。あーでも、もう替えが無いから買わないとなぁ。う~ん、ギルドに行って仕事しないと。お金はなるべく食費にまわしたいし」

「ぁ、あの……えっと……」

「あ、そうだね、ごめんごめん。まずは、シリスのことだよね」

「シリスッ! そうだ、シリスはどうなったのっ!」


 ぱっと立ち上がり、子猫は耳と尻尾を立てて少女に問いかけた。


「無事だよ、ていうか、死にそうになったのはこっちなんだけど」

「え……あっ!?」


 その言葉で全てを思い出す。シリスに魔術を撃たれて……でも、その後の事は覚えていなくて……


「そっか、ごめんなさい……きっと、貴女が守ってくれたんだよね、えっと……」

「ノヴァ、ノヴァ・インファータ。よろしくね、子猫さん」

「あ、あたしは、ミリア。シリスのともだ……ううん、使い魔にしてもらって」

「うん、シリスの友達なんだね。よろしく、ミリア」

「あ……うん! よろしく、ノヴァ!」


 子猫の小さな手を差し出すミリアに、ノヴァは微笑んだまま優しく握る。


「さて、お腹もすいているみたいだし、ご飯にしようか。ミルクを入れるお皿を持って来るね」

「大丈夫、そのままでも飲めるよ」

「え? 子猫の手で瓶を握って? それは可愛いけど、大丈夫?」

「大丈夫! だって、あたしは――」


 ポンッ!


 瞬間、白い煙が子猫を包み――そうして、黒い影が現われる。


「どう! 人の姿にだってなれるんだよ!」


 白い猫耳に白い尻尾、白く短い髪に白い肌。裸の少女、ミリアは腰に手をあて仁王立ちでむんっと胸を張った。


「おおー、すごーい! 変身の魔法ってすんごく難しいのに、さっすがシリス!」

「ふふん、そうでしょそうでしょ」

「でも、裸のままは駄目だよ。シャツくらいはあるから、それを着てね」

「うゆ……うん、ごめんなさい」


 しゅんっと耳と尻尾を伏せると、ミリアはノヴァから渡された白いシャツをもごもごと着ていった。


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