好敵手と書いて友達と読む(5)
「ぅ、うわぁあああああっっ!!」
小さな少女が次々と兵士達を気絶させる姿に怯え、大声を上げ、剣を大きく振り上げて駆けて来る男。その開いた隙だらけの身体にノヴァは金的を蹴り上げ悶絶させ、何故かその男だけがかぶっていた鉄の兜を取り、同じように大声を上げて剣を振り上げる男の顔面に向かって兜を投げつけた。
「ぶあっ!!」
走ってきていた勢いもあって、顔面に当たった兜に後ろにのけぞり、そのまま床に後頭部をぶつけ男は動かなくなった。
これで五人――完全に動きの止まった男達のほうへと顔を向け、ノヴァは笑った。
「まだします?」
怯えた表情のまま首を振り、言葉無く男達は後ろへ下がる。同じようにビエルも怯えたようにノヴァを見つめ、兵士達をけしかけるようなことはしなかった。
「ん、だったら、気絶した兵士さん達を隅に移動させてもらってもいいですか? ここから先は、ちょっと大変になると思うので」
あれだけ動いても息を切らすことなく、ノヴァは準備運動のように首と肩を回し女神のような少女――レイハイストの魔女へと身体を向ける。
「おまたせしました――じゃあ、やろうか」
鋭い視線、その瞳に、
「こ、殺せっ! シリス、あのガキを殺してしまえっ!!」
シリス――それが魔女の名前、そして、同時に膨れ上がる強大な魔力にノヴァは笑い。
踏み込む為に、ぐっと足の親指に入れ――その刹那だった。
「炎環よ」
「っ!? 烈風よ!」」
あまりに速い魔術構成、しかも、普通の威力ではない桁違いの炎の魔術にノヴァは咄嗟に両手を突き出し、風の障壁を展開した。
ゴォオオッッ!!
「――――っ!!」
放たれた炎の渦、その凄まじい衝撃に魔力を高め足の親指に力を入れる。後ろに誰もいない場所に移動して良かった――心で本当にそう思い。
ズズッと身体が後ろに下がる。手が痺れ、腕が震え、包まれる高熱に息が出来なくなり。
「――ぁああっ!!」
ノヴァは吼え、風を一点に集中させ、こじ開けるように両手を広げる。
ゴガァアアアアアアアッッ!!!!
激しい爆発音と共に炎が弾け飛び、周囲を焦し――轟音を響かせ、熱風を吹き荒しながらようやく止まった。
炎の閃光に目が白く霞む。震える手と腕、身体は熱で痺れ。
だが、
「……へへっ♪」
ノヴァは笑い、拳をぐっと握った。熱風に髪を靡かせ、瞳を煌めかせ魔女、シリスを見つめ。
まさかこれほどなんて思わなかった。高位魔術の高速発動。障壁で護らなければ骨まで消し飛んでいたかもしれないくらいの威力。そして何より、おそらくこれが全力じゃない。
『魔術だったら、絶対敵わない相手』――そんな相手と戦えて、ノヴァはわくわくする心を抑えられずぱんっと右の拳を開いた左に打ち込んだ。
「いいね、シリスさん……ううん、シリス。楽しいね、こんなに楽しいのは初めてかも♪」
「何を言ってるっ! 逃げろ、ノヴァ!!」
「大丈夫ですよ、アイリスさん。あ、でも、周りの人はもう少し下がっていてください」
ノヴァは安心させるように微笑み手を振って、再びシリスへと視線を向けた。
「き、貴様……貴様っ! 何故、生きているっ!!」
「強いからですよ。だから、安心してばんばん撃ってきてください」
震える声で叫ぶビエルに、ノヴァは生まれ変わる前に父が好きだったカンフー映画の主人公のように左手の掌を上に向け、指で「かかって来い」と促した。




