好敵手と書いて友達と読む(4)
誰もが何が起こったのか理解出来ず動きを止めていた。それは、アイリスも同じ。小さな少女が瞬時に男達を気絶させる姿に何も言えず。
「て、てめぇ……」
ようやく声を絞り出した兵士の一人に向かって、ノヴァはにっと笑った。
「ああ、えっと一つ言っておきますけど。最初に吹き飛ばした時以外に、わたし魔術使ってませんよ」
「……は?」
初めは少女が何を言っているのか理解出来ず……だが、その意味を知って、男達は息を飲む。
魔術を使わず男達を一撃で気絶させたこと。そして、まだ魔術を、力を残しているということ……つまりは、絶対に敵わないということ。
「じゃあ、続きやりましょっか。魔術を使うつもりはないので、かかってきてください」
一歩踏み出す小さな少女に、ゴロツキの男達は怯え、後ろに下がった。
そう、それでもう、勝負はついていた。
「あ、かかって来ないんですね。じゃあ、本命といこうかな」
ノヴァは微笑み、スタスタと気楽に歩いて行き、そして、怯えるビエルの横にいる少女、レイハイストの魔女の前で立ち止まる。
「こんにちは、魔女さん……って、最初から思ってたんですけど」
魔女を見上げ、ノヴァはその顔を、瞳を見つめた。
「なんか反応が薄いっていうか、目も虚ろで……まるでお人形さんみたい。こうして話しかけても、なんの反応もしてくれないし」
魔女の肩に乗っている白い子猫ににこっと微笑んで、一瞬だけ魔女の指にある指輪に視線を向けて。
そして、ノヴァはゆっくりとビエルへと顔を向けた。
「まさか……操ったりしてませんよね、ビエルさん」
「っ!!??」
ノヴァの視線……その射抜くような瞳に、ビエルは一瞬で震え上がり、
「ええい、お前達、何をしているっ! 高い金を払っているんだ! 子供如き、すぐに何とかしろ!!」
そう絶叫し命令した。
「ぁ、いや……」
「どうした! お前達、魔女に殺されたいかっ!!」
すぐに動けずにいる男達にビエルは再度絶叫し、
「っ! ぁああああああっっ!!」
魔女という言葉に男達は怯え、叫びながらノヴァに襲いかかった。
(このまま魔女さんとビエルさんを巻き込んで戦ってもいいけど)
面白そうではあるが、やっぱり魔女とは一対一でゆっくり戦いたい。だったら、誰にも邪魔されないように兵士達を先に片付けるしかない。
(まあ、準備運動は必要だしね!)
たんっと魔女から距離を取り、ノヴァは目だけでなく気配でも兵士の動きを把握する。一斉に斬りかかってくる十四人の兵士達――上段に剣を振り上げた一人に向かって、ノヴァは一足飛びで踏み込んだ。
ダンッ!
踏み込みと同時に鳩尾に掌底を打ち込み、前に倒れかかる男の服を掴んで自分の後ろに押し出した。
ノヴァの後ろから斬りかかろうとしていた兵士は倒れてくる男にぶつかり一瞬動きを止め、その隙を逃さず、倒れる男の背中を踏み台にして、斬りかかろうとしていた兵士の顔を蹴り抜いた。
そのままタンッと飛び上がり、迫ってきていた兵士の顔面を踏み、近づく男達を飛び越え――
「ぅぐっ!」
一人の兵士の背中に下りると膝裏をかかとで蹴り、膝が折れ下がった首に手刀を打ち気絶させ、ノヴァはなお動きを止めず、気絶した男の剣を取り、近づいてくる兵士に向かって投げ、
「ちっ!」
避ける兵士、視線が逸れたその隙を逃さず、鳩尾に掌底を打ち込み気絶させ、腕を掴み身体を操ると振り下ろしてきた別の兵士の剣を気絶した男の剣で受け止める。
ギキィンッ!
そのまま剣を奪い、二度、三度と刃を交え――周りの誰もが思うだろう、小さな少女の力ではゴロツキをやっているような男の剣を受けられるはずがないと。
だが、ノヴァは知っている。どんな力が強くとも、タイミングを合わせれば簡単に弾くことができる。
キィンッ!!
大振りの剣にタイミングを合わせ弾き、蹌踉めき開いた男の鳩尾に柄頭を打ち込み、すぐに振り返り迫って来た男へとノヴァは剣を投げる。
男は避けず剣を叩き落とし、だが、下ろされた剣、無防備になった後頭部にノヴァの回し蹴りが入り、声を出すこともできずに前へと倒れ、ふっと息を吐くと再び近くに居る兵士への懐へと踏み込んだ。
ダンッ!
踏み込みと同時に放った掌底は兵士を気絶させ――これで七人。半分は気絶させた。




