男子◆3 恐怖のコスプレストーカー
あの人、絶対やばいやつだ。
ここはバイト先のコンビニ。俺は今、レジに立ってるんですが。
俺はなぜか、ストーカー被害に遭ってます。
つきまとってくる相手は……平安時代のお姫様みたいな着物でコスプレをしてる外国人の女。名前がわかんないから、俺は心の中で“コスプレ姫”って呼んでる。
コスプレ姫は、コンビニの外っかわのガラス壁に張りついてじーっと俺を見てる。雑誌コーナーの裏っかわにいて隠れてるつもりかもしれないけど、目から上が完全に見えてる状態。そこにいるのバレバレですから!
うわぁ、コスプレ姫、鼻息すごいよ。一瞬でガラス曇った。
その曇ったところに、バーンと手をつくの止めてもらえません? 顔は白塗りしてて、長い黒髪、カッと見開いた目、ガラスに両手バーン! とか、それ完全にホラー映画っすわ。
はあ……どうして俺は、ストーカーにロックオンされたのかな?
コスプレ姫とは、30分くらい前に初めて会ったばっかりなのに、意味がわかりませんよ。俺はそのとき、コンビニのまん前でハロウィンイベントの駄菓子配りをしてました。そこへコスプレ姫がいきなり来て、『お兄さんイケメン』だとか、『ツクシソータ!』とか言ってまとわりついてきて。なんか、俺が 月士草太っていうイケメン俳優に似てると思ったらしい。キモい人ッスよね。
店長が帰ってくるまでに、あいつを追っ払わなきゃ。
不審人物がコンビニの中をじーっと覗いてるとか、絶対まずい。店長がパチンコから帰ってきたら、『お前は、女ひとりぐらい追い払えんのか!』って、関西弁で怒り狂うだろうな。
店長のパワハラ、本当にとんでもないです。ペナルティだとか言って、12時間勤務なんて無理なシフトを平気でぶっこんでくる人ですから。
うーん、どうしよう。ストーカーと闘うか、それとも、店長が帰るまでこのまま放置して、エクストリーム・パワハラ祭りへ突入するか。どっちも困るけど選ばなくちゃしょうがない。
うーん。
うーーーん。
うーーーーーーーん。
……俺は、コスプレ姫と闘うぜ!
ちょうど客が途切れたんで、俺はモップを握りしめて店の外へ出た。
あと、念のためにカツサンドが10個入ったビニール袋を手首へ引っかけてます。カツサンドは、店長にパワハラで買い取らされた、売れ残り品。今日のラッキーアイテムが“とんかつ”だって、占いで聞いたもんで。普段はあんまり占いとか信じないけども、とにかく何でもいいからすがりたいッス。
「ぁっ、すみません。ちょっと掃除しますんで、ガラスから離れていただけると……」
俺はモップを構えて、コスプレ姫に声をかけた。
怖すぎて、声が張れない。『お前キモいんだわ、あっち行けや!』って叫びたいけど、無理ッス。そこまで怒鳴れるくらいなら、そもそも俺はブラックバイトなんてしてません。
コスプレ姫は、コンビニ前に置いてあるゴミ箱の陰へしゃがんだ。
俺のところからは死角で、頭のてっぺんと着物と髪の毛しか見えない。
今、ゴミ箱の陰から片目だけ出してこっちをチラッチラ見てる。髪が地面に届くほどめちゃくちゃ長くて、その黒髪がバサバサで顔にかかってるし、顔は白塗りしてるし、キモさが最大級。まさに貞子ミーツ呪怨なんですわ。うへえ、怖すぎる!
「ヒィィ~、こっち見んなよぉ」
俺は、モップを振り回して、コスプレの姫を追っ払おうとした。
「ツクシソータ!」
コスプレ姫が、謎の反撃をしてくる。
「ツクシソータ! ツクシソータ!」
なぜか、イケメン俳優(月士草太)の名前を連呼してるんですが。
その声に合わせて、ゴミ箱の陰から扇を出してヒラヒラ振ってる。ジュニーズ事務所のアイドルのライブで、うちわ振ってるみたいな感じで……。
追っかけ? 俺の追っかけしてるつもり?
出待ち? 俺のバイトが終わるのを、コンビニの外で待ってるの?
ううっ、怖いよ。泣きそう。誰か助けてください。
さっきまでコスプレ姫と一緒にいた女の子は、どこへ行ったんだ? 助けて!
コスプレ姫(=平安時代の姫君)が、フジワラくん視点では恐怖のストーカーになっちゃいました。
姫君の視点からみると、フジワラくんはどんな人(=鬼)に見えているのでしょうか……。
※お気に入り登録いただいた方、ありがとうございます! 更新お待たせしてすみませんでした。
【10月14日 修正しました】
話別アクセスを見ていると、7話までで読むのを止められてしまうことが多かったので、少し直しています。
ストーリーはまったく変わっていません。
フジワラくんから見た姫君のキモさを強調するため生理的に嫌な感じの描写をしていた部分を削りました。




