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平安時代の姫君、現世で婚活はじめまする  作者: かちゃ
異なる世は、地獄にございました
6/18

姫君◇四 メガネ男子のお兄さん

「メガネ男子のお兄さん。よっ、イケメンだねえ」 


 女の童が、鬼に何かを言うております。


 鬼の言の葉でしょうか。わらわには、何と言うておるかわかりませぬ。


「イケメン? メガネ男子のお兄さんって……誰に言ってんの?」


 鬼が、童に言うて返しました。


 鬼は驚いたように、四方を見回しております。


「イケメンのメガネ男子っていったら、お兄さんしかいないでしょ」


 童が答えます。


 ややっ、女の童も鬼も、同じ言の葉をたびたび使うておりますな。『メガネダンシ』『オニサン』『イケメン』。


 わらわは、覚えましたぞ。


「メガネダンシ、オニサン、イケメン」


 わらわも真似て、言うてみました。


 されど、鬼が恐ろしゅうございますので、わらわは手にした扇で顔を隠しております。


 ちらりほらりと扇の陰から、鬼の様子を探っておるのですよ。


「ちょっ……止めてくださいよ。俺をおだてても、あげられないものはあげられないの! 駄菓子をあげるのは、子供だけですからね。大人はアウトなんです。平安時代のお姫様みたいなコスプレしてきた熱意っていうか……ファイト? は認めます。だけど、このハロウィンイベントは子供オンリーなんで」


 鬼が正体を現しましたぞ。


 おお、これは見事なる術じゃ!


 先刻まで、鬼は白き顔をして人のように見えておりましたのに、今は、顔が赤くなっておりまする。


 なるほど。やはり鬼でございましたか。人を食う餓鬼(ガキ)も、顔を血で染めておりましたゆえ、こやつも同じかもしれませぬ。

 

 これが、真の姿なのですね。


 鬼の正体を暴く術を、わらわは学びました。『メガネダンシ、オニサン、イケメン』。ある男が、鬼であるのか人であるのかわからぬときは、これを唱えればよいのでございます。


 鬼が人のふりをしておっても、呪文を唱えれば、たちまち正体を現す。


 女の童は、年はまだ十ほどであるのに、かような術を得ておるのですな。さてもさても、賢きこと。


 わらわもこの術を得たからには、鬼に謀られることはないのですぞ。


 まずは、安堵いたしました。


 されど……女の童は鬼の前におって恐ろしゅうないのでしょうか? 鬼は人を食うのですよ? 肝の太い童ですな。


「お兄さんって、八重歯がカッコいいよね。“つくしそーた”みたい」


「つくしそーた?」


「お兄さん、知らないの? 月士草太(つくしそうた)って、よくドラマや映画に出て、壁ドンしてた人でしょ」


 女の童と鬼がしきりに言うておる『ツクシソータ』とは、何でありましょうか。


「ツクシソータ」


 わらわも、真似て言うてみました。


「うわっ、そういうの止めてください。恥ずかしいから」


 鬼は、頭を抱えて悶絶しております。


 おお! 『ツクシソータ』と唱えれば、鬼はたちまち伏せってしまいました。


 鬼が荒ぶった折には、この術を使えばよいのじゃな。鬼がわらわを食わんとすれば、『ツクシソータ』と唱えるのですね。


 わらわは、悟りました。


 女の童は、鬼を制する術をわらわに教えていたのです。


「お兄さん、本気にしちゃったね。ニャハ☆」


 女の童がわらわの脇に立ちまして、小さき声で言うております。


 なぜ、鬼の言の葉を使うのでしょう。わらわにはわからぬといふのに。


「買い物するときとか、店員さんを『イケメン』って褒めといたら、だいたいオマケしてくれるよ。いつもママがやってるもーん」


 何と言うておるかはわかりませぬが、女の童は、鬼よりも強いのでしょう。


「じゃあ、私ちょっと家に帰るよ。姫ちゃん、駄菓子のピッグカツもらえるように頑張ってね!」


 女の童は、袖を振りつつ去っていきまする。


 心のよい童でありましたな。


 さてさて……。


 新しき術を得ますと、わらわは面白うなって幾度もやりとうなりました。この術を極めまするぞ!

 

『メガネダンシ』『オニサン』『イケメン』『ツクシソータ』


 これよりさらに、鬼に向かい唱えまする。

 異世界(現代)へやってきた平安時代の姫君が、また新しい術を身につけてレベルアップしました! この新しい術が、次話でおかしな事態を生むことに……。乞うご期待です!


【7/29 加筆しました】


 女の童が家へ帰るところなど、説明不足のところを直しました。


【お礼とおわび】


 評価くださった方、ありがとうございます!


 年明けにお気に入り登録してくださっていた方、もう見ていらっしゃらないとは思いますが、ありがとうございました。


 ご期待に添えず、すみませんでした。


 ナマケモノ更新しかできませんが、どなたかに続きを読みたいと思ってもらえるように、コツコツと続けます。

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