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………ん?今、この場に居るって言った?
「え、私ですか」
「……」
「え」
なんで否定してくれないんですか。本当に私だって思ってるってこと?………私がやった、って?
「久遠さん」
「……」
「…んで、…なんでなにも言ってくれないんですか!」
「え、や、…何故おまえがな、泣く……?」
「泣いてませんよ!馬鹿!」
ちょっと目が潤ってるだけだ!悪いか!……久遠さんに疑われているんだから泣きたくもなる。なのになんで、そうさせる久遠さん本人が驚いてるの。
「葛城…あー、その、ど、どうかしたか……?」
「……」
「具合でも悪いのか……?」
あたふたと、私の周りをうろうろとする久遠さん。…慌て過ぎです。
「…そうじゃなくて、久遠さんが、」
「わ、私が?」
「は…犯人は私だって言うか、ら……」
「!?」
「疑われてるんだから、悲しくもなります……」
「ち、違う!何故そうなる!?わ、私はおまえを疑ってなどいない!」
「でも、犯人はこの場に居るって……」
…言ったじゃないか。
今ここに居るのは私と久遠さんの二人だけなんだから、必然的に犯人は私ってことになる。否定されたけど。
「〜もう!遠回しに話すのはやめましょう!大体、ドラマや小説なんかでもそうですけど、犯人について引っ張り過ぎです。わかってるんだったら、勿体振らずにその場で言っちゃえばいいんです!」
「す、すまない」
「はい!という訳でどうぞ犯人について話てください。私じゃないなら、一体誰だとお思いなんですか?」
まさか久遠さん自身でした、なんてオチじゃないだろうな。いやでも私じゃないなら、久遠さんしかこの場には居ないしあり得るかも?
「…おまえだ」
「え!?私ですか!?」
「ち、違う!おまえが胸に抱いている……」
胸に抱いて、って……。久遠さんの言葉に習い視線を下げれば、眠そうな目のマリアンヌと目がかち合う。
「マ、マリアンヌ……?」
「ぶにー?」
二人して首を傾け、真正面に立つ久遠さんを覗う。まっさかー!なんて笑い飛ばしてみれば、彼は「そう、だ」と大きく首を縦に振った。え、まじで?
「マリアンヌは猫ですよ?」
「知っている」
「物なんて掴めません」
「そうだろうな」
「……本当にマリアンヌがやったと?」
力強く縦へと振られる首。迷いのないその切れ長の目は、真っ直ぐに私を捉えていた。
「葛城、そいつを地面に下ろしてみろ」
言われるがまま私はマリアンヌを地面へと座らせた。そうすると久遠さんは懐からゴムボールを取り出し、マリアンヌの目の前へとそっと置いた。……一体どこでそんなもの調達したんだろうか。
「…久遠さん?なにをするんですか?」
「少し見ていろ」
ゴムボールはなんてことない、ピンクの、どこにでもあるようなもの。マリアンヌは興味深くそれを見てはいるが、触ろうとはしない。……久遠さんはなにをさせたいんだ?
「…マリアンヌ、それ持って行ってもいいぞ」
「ぶに」
久遠さんがそう言えばよしわかったと言わんばかりに、マリアンヌは前足を器用に使いボールを転がし始めた。うん、この前も思ったけどマリアンヌの前足使いはすごい。「…着いて行くぞ」ボゾッとそう発した久遠さんは、ボールを転がすマリアンヌの後ろを着いて行く。うーん、傍から見たらすごいシュールな光景だな。
コロコロ、コロコロ、巧みな前足使いで着いたのは緑生い茂る垣根の奥。
「え!……これって……」
「……まあ、そういうことだ」
そこにあったのは、適度な深さに掘られた地面、泥の着いた猫缶、小ぶりの壺、扇子、指輪など様々なものがその掘られた穴に置いてあった。マリアンヌは今しがた転がしていたゴムボールもその穴の中へと置いてご満悦そうに「ぶに~」と一声鳴いたのだった。
「あ、ブローチ!」
色んな物で溢れている穴の中で比較的に綺麗な状態で、キラリと光るそれ。……よかった、どこも壊れてなさそうだ。
「葛城、袋」
「あ、はい!」
そう言って袋を久遠さんに手渡す。一つ一つ、丁寧に品を取り袋へと詰めて行く久遠さん。そんな彼を見て「ぶにっ!?」と慌てるマリアンヌ。マリアンヌの気持ちも分からなくもないが、これはおばちゃんのだしな……。というか袋ってこの為だったのか。「そのボールはやるから、これは田中さんに返すぞ。特にそのブローチは大事なものだからな」マリアンヌの頭を撫でながら優しく諭す久遠さん。そんな久遠さんに初めは怒っている様子を見せていたマリアンヌだが、「わかるな?」と伝えれば「……ぶに」と返した。……そんな優しい声初めて聞いたけど、今それを伝えるのは止めておくのが賢明だろうな。
おばちゃんの豪華そうな品物とマリアンヌを抱いて、来た道を戻っていく。もうすっかり日は落ちており、綺麗な夕焼け空が広がっている。うーんこれは、泊りコースか夜道を帰るコースだなあ。
「久遠さんは、いつマリアンヌの悪戯だと気付いたんですか?」
「…今日の昼、裏口にいる時に」
「昼、って言うと…打ち水の時ですか?」
「ああ。正確に言うとその前、だが。裏口近くの地面にマリアンヌの足跡と共に細い線みたいなものがあるのに気付き、もしかしてと思った」
「ああ……!蟻を見ていた時ですか」
「違う。見ていたのは蟻じゃなくて、足跡だ……!」
暑さで頭がおかしくなった訳じゃなくて、足跡を見ていたのか。何ともまあ紛らわしい。いや、はい、変なものを見る目で見てしまいすいませんでした。




