第七話:狐の甘言と、バケモノの系譜
※本作は一次創作です。
※AIは執筆補助として使用しています。
「ちぇっ、本当に依頼が来てない。上は海斗の試験やらせる気ないのね」
本部の会議室で椅子に座りながら不貞腐れる碧は タブレットを叩き、隣の愛もまた、冷徹な視線を宙に泳がせていた。
「そうね。このままじゃ海斗クン胴体と頭がお別れしちゃうわ。不運の在庫が切れたのかしら」
「本当にマジで冗談でもやめてくれ……」
海斗が震える声で懇願する中、碧がふと顔を上げた。視線の先には、壁際に立つ豪徳寺と西園寺の姿。
「あ! そうじゃん、解決するかも……『爱』」
碧が突然、聞き慣れない言語――ラテン語で愛に話しかけた。
「『Cur nonillo utimur?』」
愛が驚いたように目を丸くし、次の瞬間、碧と同じく底意地の悪い笑みを浮かべた。
「『Optimaidea.』それなら上も文句は言わないわ」
(何を言っているんだ? 英語でもなさそうだし……)
海斗の困惑をよそに、碧はスッと豪徳寺の正面に立った。
「豪徳寺さん! 任務を一つ、私たちに回してもらえないでしょうか?」
「ダメだ!」
豪徳寺は即答した。
「碧、お前の実力は認めているが、五代神社の任務は危険すぎる。可愛いお前に、万が一のことがあったら俺は……!」
すると、碧が静かに手を組み、胸の前でキュッと寄せる「お願いポーズ」をとった。潤んだ瞳で、上目遣いに豪徳寺を見つめる。
「そこをどうか、お願いします……健にぃさん」
**(にぃさん?!!!)**
海斗は心臓が止まるかと思った。あの、雷を落としながら「ちぇっ」とか言っていたドS少女が、今、最大級の破壊兵器を起動させた。
「ンッ……!!」
豪徳寺の全身がガクガクと震え出す。鼻血を耐えるような、悶絶するような顔。
「……い、いや、だが……ダメだ! 俺は、俺は騙されんぞ!」
「残念です……豪徳寺さんなら、お願い聞いてくれると思ったんですけど」
碧がすっと手を解き、今にも消え入りそうな、それでいて突き放すような冷たい声で続けた。
「……しょうがない。他の二人に聞いてきます」
(他の二人?)
海斗が首を傾げた瞬間、豪徳寺の顔色が激変した。
「……ま、待て! 他の奴らに碧を頼らせるわけにはいかん! ……分かった、俺が同行することを条件に、その任務を譲ってやる!」
それを聞いた碧は、パァーッと効果音が似合うような笑顔で言った。
「ありがとうございます、健にぃさん」
碧は瞬時に無表情に戻り、タブレットにデータを転送させた。
「バッカじゃないの?」
それまで黙って見ていた西園寺澪が、ゴミを見るような目で豪徳寺を罵倒し、踵を返して去っていく。豪徳寺は「碧のためだ!」と叫びながら、慌てて装備を整えに走っていった。
「……あの、碧さん」
「ん?どしたん?」
海斗が、少し引き気味に尋ねる。
「さっき言ってた『他の二人』って誰なんですか? 豪徳寺さん並みの方でもいるんですか?」
(おそらく2人の共通の知り合いとかかな?)
「ん? あぁー、その二人も五代神社代行者だよ」
「…へ?」
「実は、私、先代世代の『五代神社代行者全員』に、入れ替わり立ち替わりで教育してもらってたから」
「五代神社代行者様全員に……はぁ?! 全員?!!」
(あんな感じのバケモノ5人が力を合わせてバケモノを産んだのか…いやよくよく考えたらわかった…な訳ない…)
海斗がその事実に戦慄していると、隣から愛が深く、重いため息を漏らした。
「……上原くん……私も、それを知った時は同じ気持ちだったわよ……」
被害者の先輩の言葉には、あまりにも重い実感がこもっていた。
「さあ海斗、早く準備するよ? 妖討伐、すぐに行くことになるからね」
「えっ、今から!? つーか、五代神社級の任務なんて俺ができるわけ……」
「しょうがないでしょ?これやらないと命の危機どころか守るお宝すら手元から無くなるのよ」
碧の不気味なほど美しい笑顔が、海斗の視界を塞いだ。
海斗の初任務――それは、五代神社の古参が同行する、文字通りの地獄への招待状だった。




