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第五部 修練の産声

※本作は一次創作です。

※AIは執筆補助として使用しています。

「……どうやってここに来たんだ? 何が起きて……」

神隠しに遭ったかのような感覚だった。数秒前まで校門近くの裏路地にいたはずが、目を開ければそこは窓一つない、無機質なコンクリートに囲まれた空間だった。代行者本部、地下訓練場。あまりの重力変化と風景の変貌に、上原海斗はその場にへたり込み、震える声で問いかけた。

「パニックになるのも無理ないけど、ここは代行者の聖域だよ。上原くん」

碧が自らの髪を無造作にかき上げながら、冷淡に事実を突きつける。彼女は両耳からイヤホンを外し、愛から預かっていたタブレットを起動させた。

「代行者ってのは、神様の権能を振るう正規の異能力者。私は稲荷、裏宮さんは厳島の神から加護を得ている。……そして君も、その『器』の一つってわけ」

「異能力……? 加護……?」

海斗の頭は情報を拒絶していた。だが、碧が指先を鳴らすと、パチパチと火花が散り、昨夜のニュースで見たあの「雷」が小さな牙を剥く。

「私の異能は『九柱神法ここのつのみしるし』。壱から玖まで九つの権能がある。……まぁ、私たちのバケモノっぷりは、追々その身で理解することになるよ」

(え? この人たち、マジでバケモノ……?)

海斗が戦慄する中、碧は手に持ったタブレットを海斗の鼻先に突きつけた。画面には、昨夜一晩で書き上げられたらしい**『上原海斗・覚醒仮説リスト:全二十項目』**という、おぞましい文字が並んでいる。

「これ、君の『建勲』の力を引き出すための実験メニュー。まぁ最初にやるのは、反射神経がどんなもんか調べるモノだからガンバレー」

と言いながら手から雷をバチバチと鳴らしている碧。

「何をするのか知らないけどすごく命の危険!」

「しょうがないでしょ? 命の危険が無いとやる気出ないんだから」

碧は、「ねぇ?愛」と隣で観測機器をいじっている愛の方へ視線を向けた。碧に同意を求められた愛は、居心地が悪そうに、フイッとそっぽを向く。

その瞬間、海斗の中に一つの確信が雷のように落ちた。

「え? あ……はぁ!? もしかして裏宮さん、同期じゃなくて、俺と同じように碧にごうも……じゃ無くてご指導を受けて覚醒した側なんですか!?」

海斗が声を張り上げて驚愕すると、愛はさらに顔を背け、微かに肩を震わせた。そして、消え入りそうな声で、けれど残酷な事実を口にする。

「……頑張って……私からは、それしか言えない……」

「見捨てられた!? 唯一の希望に見捨てられたぁぁぁ!」

海斗の絶叫も虚しく、碧は楽しげに唇を吊り上げた。

「さぁ、お喋りは終わり。――『壱の柱:鳴神なるかみ』」

刹那、地下室の空気が爆ぜた。

碧の指先から放たれた無慈悲な雷光が、海斗の足元を正確に撃ち抜く。

「ひっ、あぁあああ!」

逃げ場のない空間で、雨のように降り注ぐ暴力。死の恐怖が全身の細胞を叩き起こす。海斗は本能だけでその場を転がり、火花を散らす床を這い回る。

「碧、今ので脳波のスパイクを確認。次はもう少しだけ速度を上げて」

「了解、狸サン」

愛の精密すぎる観測が、海斗の逃げ道を論理的に塞いでいく。死ぬ。本当に死ぬ。極限の状況下で、海斗の視界が歪み、空間に走る「雷の軌道」がスローモーションのように見え始めた。

――数十分後。

身体中から煙を上げ、泥のように床に伏す海斗の傍らで、碧が溜息をつきながらタブレットを操作していた。

「……一番簡単なやつ一つしか試せなかった。ちぇっ」

20通り用意した実験メニューのうち、第20位の『超直感』の片鱗が見えただけで終わったことへの、純粋な不満。海斗は意識が朦朧とする中で、彼女のその一言に絶望した。

「期待外れ。あーあ、明日はもう少しペース上げようかな」

「……まだ、あげる……のか……」

海斗の視界が暗転していく。

最後に見たのは、タブレットを片手に、次の「拷問」を考えてワクワクと目を輝かせている碧の、不気味なほどに美しい笑顔だった。


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