第2話 不遜なる円卓
※本作は一次創作です。
※AIは執筆補助として使用しています。
意識が浮上する直前、海斗の耳に微かな話し声が届いた。くぐもった、それでいて氷のように鋭い二人の声。だが、海斗が目を開けようと瞼に力を入れた瞬間、その声はピタリと止まった。
重い目蓋をこじ開けると、そこは無機質な医務室だった。
「気がついた?」
聞き覚えのある声。だが、視界に映った二人の姿に、海斗は言葉を失った。
昼間の制服姿ではない。
裏宮愛はシワ一つないシャツにネクタイを締め、スラックスを履きこなしたマニッシュなスーツ姿。神宮碧もまた、同じくネクタイを締め、膝丈のボックススカートが凛とした印象を与えるフォーマルな装いだった。
「……神宮、さん? 裏宮、さんも……なんで、スーツ……?」
「起きたばかりで悪いけど、現状を説明するわ」
愛が事務的にタブレットの画面を海斗に向けた。
「あなたは今、政府の特別管理施設に保護されているわ。診断は軽い脳震盪。あの時、あなたは『極秘機密』の現場に迷い込み、衝撃に巻き込まれたの」
「保護、って……俺、ただ消しゴムを買いに商店街へ……」
「上原くん」
碧がベッドの傍らに歩み寄る。その瞳には、昼間の優しさは微塵もなかった。
「運が良かったわね。……いいえ、不運だったのかしら。あなたが目撃したものは、国家が総力を挙げた隠蔽事項よ。今頃あなたはその場で頭と胴体がバイバイしててもおかしくなかったのよ?」
海斗の背筋に、凍り付くような寒気が走った。そんな海斗を横に「首と胴体が別れる方法は、ないでしょ?」と冷静なツッコミを入れる愛。震える手でスマホを手に取るが、Wi-Fiは**「圏外」**のまま。外部との連絡手段は完全に断たれていた。
その時、医務室の重いドアが開き、黒服の男が入ってきた。
「稲荷神社代行者様、厳島神社代行者様。……お迎えに上がりました。上の方々が其方のモノも連れてこいと」
男は慇懃無礼に頭を下げたが、その目は海斗を人として映しておらず、まるでそこにある置き物として扱っている。
「…今行くわ…」
碧は海斗の腕を強く引き、無理やり立たせた。
「……え、ちょっと、俺も行くのか?」
「当たり前でしょ?今あなたの死刑は先延ばしになってるだけなんだから」
案内された先は、豪華な装飾が施された大扉の奥。そこには、円卓を囲む関係者たちが待ち構えていた。
「……遅いぞ、稲荷。そんなガラクタを連れてきて、何のつもりだ」
円卓の奥で、書類に目を落としたままの男が低く吐き捨てた。
「……あなた方が連れてこいと言ったのでしょ?」
「そんな事言ってないぞ…まぁいい」
話題は、海斗が宿した守護神の鑑定結果に移った。
「……鑑定の結果が出た。コイツが宿したのは、『 建勲神社神社』だ」
その瞬間、会議室に失笑が漏れた。
「建勲だと? 織田信長か。……神代の血も引かぬ、ただの戦国大名ではないか。我ら政府が管理する名簿に、そんな『ただの死人』を祀った名を書けというのか?」
「五大神でもない者を宿す者が、代行者を名乗るなど滑稽だ」
嘲笑が響く中、愛が冷たく、突き放すような声を上げた。
「……数年前の妖による大災害で、どれだけの代行者がいなくなってると思ってるの?」
愛の言葉に、笑っていた大人たちの顔が引きつる。
「現在、代行者不足で現場がどれだけ疲弊しているか、エアコンの効いたこの部屋で書類だけ見てるあなたたちには分からないでしょうね」
碧がさらに畳み掛ける。
「そんなゴタゴタ言ってられる状況じゃないでしょ? 伝統だの社格だの言ってる間に、次の災害が来たら誰が止めるの? あなたたちがネクタイを締め直して土下座でもするつもり?」
沈黙する幹部たちを眺め、碧は愉快そうに口角を上げた。
「この子は私が育てるわ。信長公がただの死人かどうか……その目に焼き付けてあげれば文句ないわよね?」
碧は海斗を振り返り、読めない瞳で彼を見つめた。
(…はぁ?面倒見…え??)
自分のよく分からないところで何かを決められてしまった海斗…これは、ただの不幸なのかそれとも……




