第1話 転校と二つの顔
※本作は一次創作です。
※AIは執筆補助として使用しています。
「……また、引っ越しか」
海斗は、トラックから次々と運び出される段ボールを見つめてため息をついた。
父の転勤は、海斗にとって「不運」の代名詞だ。せっかく友達ができたと思えば、すぐに見知らぬ土地へ。今回も、高2という微妙な時期に、地方の街へとやってきた。
「海斗ー! 自分の部屋の荷物、自分で運びなさいよ!」
母の明るい声が響く。その後ろで、父が申し訳なさそうに「悪いな、海斗。今度の職場は地域に根付いた古い会社でさ、腰を据えて働けるから」と笑う。
(……腰を据えるって何回聞いたと思ったんだ)
父とそんな会話をしている最中、海斗は見てしまった。
路地裏のゴミ捨て場に、軽自動車ほどの大きさがある、灰色のモジャモジャした「綿埃」のような塊が鎮座していたのだ。
「……は? 埃、デカすぎだろ」
目をこすり、もう一度見る。だが、そこにはひび割れたアスファルトがあるだけ。
「……寝不足か。いや、不運体質が極まって幻覚まで見え始めたか?」
海斗はため息をつきつつも自分の部屋の片付けに入った。
転校初日。海斗は、何度やっても緊張する自己紹介をした。
(もうやりたくない…)
昼休み。海斗の前に現れたのは、この世の「陽」をすべて詰め込んだような二人だった。
「上原くん、今ちょっといい?先生に学校案内して欲しいって言われたから今案内してもいいかな?」
「碧その前に自己紹介」
(いやあなたもでは?)
と少し毒舌なツッコミを心の中で入れる海斗。
「あ、そっか…ごめんね自己紹介も無しに話しかけて…私の名前は、神宮 碧よろしくね」
「私の名前は、裏宮 愛…よろしく」
碧の言葉に、海斗は「あ、どうも…」と少しそっけない対応をする。
(どうせすぐに関わりがなくなる)
その後は、多和愛のない話をしながら学校案内をしてもらった海斗。
放課後
「あ、消しゴム無くなったんだった…」
駅前で気づいた海斗は、スマホでこの近くの文具ショップを探して駅前の商店街へ向かった。だが、角を曲がった瞬間に空気が変わる。
「……なんだ、これ」
街灯は点いている。店も並んでいる。なのに、人1人居ない。
ポケットのスマホを取り出すが、画面の隅には「圏外」と書かれた。
Wi-Fiのリストを開いても、一つも表示されない。世界から切り離されたような、薄気味悪い静寂。
その時、近くの古い雑居ビルから「ドォォォォォン!」という、地響きのような轟音が響いた。
(同じ立場の人が居るのかもしれない)
そう思った海斗は、ビルの中に入る。
半開きの重い扉をこじ開け、埃の舞うフロアに足を踏み入れる。
「誰か、いるんですか……?」
そこには、淡い光を放つ**「九つの尾」**を背負い、手に黒い炎を宿した少女が立っていた。
その凛々しく、神々しい横顔に、海斗は見覚えがあった。
(……神宮、さん……?)
少女——碧の肩がビクッと跳ねた。海斗を見る目は、学校で見てきた目と違う冷たく何も感じさせない恐ろしい目だった。
反射的に、彼女は自分が履いていたローファーを、人とは、思えない勢いで投げた。
「えっ、あ、ぎゃっ?!」
ベチャッ!! という生々しい音と共に、靴が海斗の眉間にクリーンヒット。
海斗は、その場に崩れ落ちて悶絶する。
「う、うぐぅ……」
(なんだこれ?目がまわる…)
海斗を見て、碧は顔を真っ青にして叫んだ。その目は、先ほどと違う恐ろしいものを見る好奇心が伺える目だった。
「あ、あわわわ……妖が、妖が喋ったぁーーー!! 最近の妖は、こんなに流暢に痛がるフリをするの!?」
窓際で「舞台」を維持していた愛が、遠くから頭を抱えて呟く。
「……碧。それ、たぶん本物の人間。しかも、うちのクラスの転校生……」




