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[愛の形、孤独の形]Episode Crys&Pearl  作者: 情緒不安定
1章『愛を望む双子』
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#9『不穏/騒穏』

〈ペグマタイトタワー、地下1階、廊下〉



「エリナさん、貴方の事を私達に見せたくってしょうがなかったんですね。」


少し先を歩くゾイサイトとカルサイト、その後ろで、マーカサイトはパールとの会話を楽しんでいた。


「言われてみれば確かに。」


(私のこの力、エリナに教えはしたけど...まぁ、昨日決まっていきなり今日任務だったし、そういう準備って時間がかかるもんなんじゃないかな)


「でも、戦闘経験とかあんまり無いから、最初があれだったのは驚いたよ。でも、恐竜の骨が勝手に動くなんて話聞いちゃったら、テンション上がっちゃって」


「童話みたいな事件でしたね、本当に。」


「なぁ、マーカサイト。」


「どうかしました?」


2人が話していると、前に居たカルサイトが歩きながら振り返り口を開く。


「やっぱアレあったか?」


「あ、はい」


マーカサイトはポケットから文様の付いた結晶を取り出し、カルサイトに手渡した。


「その結晶って―――」


パールが結晶の事を聞こうとした時には、作戦室が目の前にあった。


「お前にも説明してやる。中でな。」


カルサイトは扉の横のパネルに指で触れると、スライド式の頑丈な扉が開き、1同は室内の机を囲うように入る。中ではエリナが待っており、皆の帰還を待っていた。


「うむ、ご苦労だった。特にパール、戦闘訓練も無しにいきなり実践だったが、怪我は無いか?」


「うん!大丈夫!」


「お前まさか試験も無しにぶっつけ本番だったのか?」


「普段なら任務が終わったら現地解散だが、皆に集まってもらったのは無論、パールの事でだ。」


「この娘、何者なんですか?」


ゾイサイトの問いに、パールはなるべく顔に出ないようにしていたが、それでも冷や汗が出ていた。


「それはだな―――」


「秘密だ。」


エリナの回答に、パールは束の間安堵しため息を漏らした。


「こう言っちゃあ何だが、素性も知らない奴と仕事しろってか?」


「まぁまぁ、彼女にもプライベートな事情ってものがある。そういう事は、きちんと守られているべきだろう?」


「まぁ、それもそうね。変に疑っても今後の任務に支障が出るでしょうし。じゃあ、これからよろしくね!パールちゃん!」


「はい!...あ、そうだ。カルサイトさん......だっけ。あの結晶は何?」


「あぁ、これな。」


カルサイトは結晶をポケットから取り出すと、机に置く。


「やはりあったか。」


「あぁ。そんで、こいつは神子石ってんだが、その者とはちと訳が違ってな。」


「神子石と言うのは本来、人の意思に呼応し姿形、その性質を変える石だ。まだそれほど普及しておらず、これを扱えるのは私達やごく一部の人間だけなのだが......」


「どういう訳か、ここ最近この石が絡む事件が立て続けに起きてやがる。本能の街の連中が、理性の街に現れ始めた頃だな。」


「これが、キミに力を借りたいと言った理由だ。事態は一刻を争う。まだ甚大な被害が出た訳ではないが、如何せん代物が代物だから、少しでも戦力が居ると言う訳だ。さてと、とりあえず今日は他に無ければこれで解散とするが、構わないかね。」


「あぁ。」


「それじゃあ、皆、ご苦労だった。そうだパール、あのスクーターは移動手段として自由に使ってくれて構わない。」


「やったー!」


「スクーター......?」


「そういえば、パールさんはどうやって博物館に来たんですか?」


「あぁ、埃を被った布が被さってたものだ。」


「やっぱりアレかよ.....」


「カルサイト知ってるの?」


「まぁ......なんつーか、そうだな。パール、壊したら承知しねーからな。まぁ、あれも神子石で出来た代物だから、事故る事はほとんどねぇけどよ。」


1同は各々の帰路に着き、カルサイトは1人地下の研究室に籠った。



〈理性の街、デパート〉



モノクロの世界では、触覚、特に、足元の感覚が敏感になる。

クリスは初めての外出で、タイルに躓きかけながらも、2人に手を引かれながら、街の西部にあるデパートに来ていた。


「ここ、前に電車の窓から見かけて来てみたかったんだ!」


ライラに案内されたその建物は、周りのビルと比べてもあまり差異は無く、それでいて横にもかなりの大きさがあった。ルピナスは建物の端から端まで見渡しながら、心躍らされていた。

クリスの無機質な世界でも、他の建物と比べて装飾が沢山施されたその建物は、魅力的な印象を残した。


「すごい...デパートなんて初めて来ました」


「まぁまぁ、感動するのはまだ早いよ!中はもっとすごいんだから!!」


ライラは2人よりも少し先に、デパートの入口に駆けて行った。


「あはは......あの娘、体力凄くって。しばらく家の中に居たものですから、元気有り余っちゃってるみたいです。私達も行きましょうか」


ルピナスはクリスの手を握りながら、ライラの後を追った。



〈デパート2階、クローズドエリア〉




「ねぇねぇルピナス、このもこもこルピナス似合うと思うんだけど」


「えぇ~、確かに可愛いですけど...恥ずかしいです。」


「そうだ、クリスは気になるのある?」


「......」


クリスは数多並ぶ服を見渡す。正面から見ないとどんなデザインなのかが分からず、とりあえず適当に手に取ってみては元の場所に戻す。それを繰り返す中で、1つ気になるものを見つける。

それは、自身の瞳と同じ、銃のサイトが描かれた半袖の黒い服だった。


「おぉ...かっこいいね。クリス背高いし似合いそう!」


「そうか、」


「そうだ、この店試着できるみたいだからしてみる?」


「あぁ...」


ライラはクリスを試着室まで案内すると、ライラはカーテンを閉め、待ってる間に近くの服を漁る。


「ライラ、これ...どうかな?」


「えぇかわいい!!どこで見つけて来たの!」


「さっきの場所から、ここに来るまでの所に。」


「私も欲しい!まだあった?」


「はい。ありましたよ」


「やったー!取って来るね!」


ライラはそう言うと、そそくさと駆けて行った。


「店の中で走らないでください!!......全く、」


ルピナスが振り返ると同時に、クリスがカーテンを開けルピナスの方を見た。


「わぁ...!似合ってますよ、クリスさん。」


「そうか......」


「この店、着て行く事も出来るみたいですけどどうします?」


「......そうだな。着て行くのはこう......なんと言うか―――」


「あはは...じゃあ、とりあえず会計済ませちゃいましょうか。」


クリスが元の服に着替えると、ライラと合流し、1同は会計を済ませ店を出た。



〈デパート4階、アミューズメントエリア〉



複数の学生が固まり話す音、筐体から発される電子音、軽い金属が当たる音。


「沢山の音...」


「そういえば、クリスさん人酔いとか大丈夫ですか?」


「あぁ、この位なら大丈夫だ。」


「こういう場所、気付いたら財布がすっからかんになっちゃうから、予算決めないとね。とりあえず、10回やって足りなかったら5回ずつ足していこう」


「それ、やめられなくなる人の典型じゃないですか。10回だけです!」


「あはは...だよね。クリスでも、ここは楽しめると思うよ!じゃあ、後でエレベーター前に集合ね!!」


そう言うとライラはまた、店の中に姿をくらました。


「だから建物の中で走らないでください!!...はぁ、行きましょうか。」


2人は主にクレーンゲームを周り、たまにライラが合流しては、アドバイスがてらあっさり2人の狙う物を取って手渡し何処かへ行ってしまう。しばらく遊んだ後、2人の前に大きな袋を肩に掛けたライラが現れた。


「ライラさん?」


「ごめんって。でも、これだけ取れたしちゃんと元は取ったよ?ダメ?」


「......」


「分かったから。睨むのやめて」


3人はエレベーターに乗り、1階へと向かった。



〈デパート1階、フードコート〉



「好きなの言って。奢るから」


たくさん並ぶテーブルを囲うように、様々なフードチェーン店が店を構える。


「そうだクリス、折角だから全員で違うの頼んで、シェアしよう!そしたら色々知れるし、好きなものもあるかも!」


「じゃあ、私はこれで!」


3人は頼んだ品を盆に乗せると、紙皿を貰い、互いの食べ物を分け合った。

あっさり腹は満たされ、皆充実したひと時を過ごした。



〈黄昏時、理性の街、デパート前〉



「んー!楽しかった!またいつか来よっか」


すっかり日が暮れようとしており、周りの客達も、買い物袋を持ち帰路に着く人が多かった。


「......」


「どうしました?クリスさん。」


クリスは1つの方角を見つめる。ほんの1舜だが、世界に再び彩りが与えられたような...?


「...パールと、目が合った......?」


「もしかして、色が見えたんですか!?」


「マジ!?それって離れてても見えるんだ」


「多分......」


クリスはパールの事を考える。もし私が、こんな世界でなく、皆と同じ世界に生まれていたら、


(......そんな世界に生まれたとして、パールが見せてくれたあの世界を、綺麗だと思えるのだろうか?)


「...パール、ちょっと可哀そ―――」


ライラが言い切る前に、ルピナスがその口を手で押さえる。


「クリスさん、」


「......?」


「もし、パールさんの事を想っているのでしたら、パールさんが帰ってこれる場所を作ってあげられるのは、貴方だと思います。」


「帰ってこれる......?」


「人と言うのは、個の力だけでは、どうしても限界があります。もし、その限界を迎えそうになった時、そばに居てあげられるのは、生まれた時から一緒に居た、貴方だと―――って、ごめんなさい。余計なお世話...でしたね」


クリスは生まれた時の事を思い出す。パールの水槽越しに手を合わせ、通じ合っていたあの頃。

そして、パールに刃を立てようとした暴徒へ、向かった、私の力。


「......いいや、ありがとう。」


クリスの表情が、少し和らぐ。


「良かったら、サプライズでも考えてみます?」


「私もやりたーい!!」


「いいですけど、ちゃんと秘密にしといてくださいね?」


「分かってるって!」


3人は夕日を背に、帰路に着いた。


  To be continued.

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