#10『平衡保つ賭博の宮殿』
〈深夜、暁の館、クリスとパールの部屋〉
「起きてても良いが、あんまでかい音出すんじゃねぇぞ?」
「はーい!」
「あぁ。」
自室と言っても、今は寝室としての機能しかない。2人はそれぞれのベッドに腰掛け、今日の出来事を話し合う。
「今日ね?動くおっきい翼竜と戦ったんだ!本当だよ?仲間達も頼もしくって、それに、結構余裕だった!」
「そうか―――」
クリスはパールの元気な姿に安堵した。
「それで...クリスは今日、何してたの?」
「私は、ライラと、ルピナスと、デパート?って場所に行ってた。2人共優しく私の手を引いてくれて、沢山の発見があった。」
「外に出れたんだね。大丈夫だった?」
「あぁ。2人が付きっきりで居てくれたおかげで、私も楽しめた」
「......そっか。ねぇねぇ、今度私もいっしょに行ってもいい?」
「勿論!今度は一緒に行こう」
2人はもう少し盛り上がるかと思ったが、案外あっさり話題が尽きてしまった。
「...まぁ、夜も遅いし、寝よっか。」
「そうだな―――」
2人は布団に潜り、そのまま夢の中に沈んで行った。
〈翌日、理性の街北東部、〉
≪理性と本能の街双方の狭間にあるカジノにて、妙な噂があるとの事で、調査を頼みたい。≫
エリナからの通信を受け取った1同は、街の北東にあるカジノへと向かっていた。
≪噂?本当にあった事なんですか?≫
≪そのカジノは理性と本能双方から客が訪れるんだが、噂によれば、そのカジノでは最近、理性の街からの客のみが負けて帰っているらしい。≫
≪それ、余計に信用できないんですが≫
≪偶然ではない。調査を依頼した所、本能の街の住民の一部から、妙な信号が無線に入ったとの事だ。≫
≪はぁ...まぁ、やるだけやってみるけどよ。≫
〈理性と本能の街、カジノ〉
昼でも陽の光より輝くその建物は、理性に準ずる人々でも、たちまち本能に従うように、その命と財を秤に賭けて行く。
「...着いたは良いんだけどよ、この恰好じゃ怪しまれねぇか?」
「そうね...近くに服屋があったし、多少変装して溶け込んだ方が調査しやすいでしょう。」
「エージェントみたい!かっこいい!」
「では、寄りましょうか......とその前に、皆さんどんな格好してるんでしょう?」
「そりゃあ、派手なドレスとか?」
「お前は映画の見過ぎだ、よく見てみろ。確かに服装には法則性が見られるが、そこまで変に目立つ恰好じゃなくって、自然体でもっと素朴な格好が多いだろ」
「本能の街?の人って、もしかして、ボロボロの服装の人?」
パールは研究所で遭遇した暴漢を思い出し、それを問う。
「貴方、会った事あるの?...って、最近物騒だから、見た事はあるか。そうよ。でも変ね。ここって本能の街からも客が来るはずなのに、誰がそうなのか分からないわ。」
「あくまでここは中立の立場を護るって体でのドレスコードか。まぁとりあえず、ここで話してるだけじゃ進まねぇ。とっとと服買い揃えて、中入るぞ。」
4人は服屋それっぽい格好に着替えると、カジノへ向かった。
〈カジノ1階、エントランス〉
高級感あふれる装飾が落ち着いた雰囲気を醸し出し、迷い込む人々を出迎える。
「......そういやすげぇ今更だが、パール、お前2個目の任務がこれか......」
「気を付けてね、中立の立場の施設とは言え、私達がやろうとしてるのは、下手したらそれを壊しかねない事だから。」
「大丈夫...とも言い切れないか。結晶使えないもんね」
「まぁ、いざとなったら使う時が来るかもな。俺らも念の為武器を持って来てる。あとは......」
カルサイトは無線をしまっている内ポケットに手を当てる。
「そういえば、変な信号がどうとか言ってたよな。だったら無線は使えなさそうだから....じゃあ、こんだけ広いのを固まって動いてると日が暮れちまう。2:2でどうだ?」
「じゃあ、パールさんは私が!」
「分かった...チッ」
「何か?」
「なんでもねーよ。さっさと行くぞ。」
こうしてマーカサイトとパール、カルサイトとゾイサイトは手分けして調査を行う事になった。
〈カジノ1階、カードゲームエリア〉
ポーカー、バンカー、ブラックジャック等。エントランスでは分からなかったが、いざ入ってみると、案外様々な人が居る。常に余裕を見せながら、ゲームとして楽しむ人。手を出してはいけないお金に手を染めているのか、常に焦りと怒りに飲まれている人。そして、それを前にただ黙々と、ゲームを進めるディーラー。
「それで、まずはどうするの?」
「まぁ、とりあえず、」
カルサイトは懐から財布を取り出し、紙幣をチップと交換した。現在チップ数:10000
「ちょっと?任務で来てるの忘れた訳じゃないでしょうね?」
「あぁ。これはあくまで任務だ。そして、」
カルサイトはずらりと並ぶテーブルを見渡すと、1/4だけ埋まってるブラックジャックの卓に着いた。
「噂が本当かどうかは、やってみないと分からんだろ?」
「貴方、やった事あるの?」
「まぁ、PCでたまに遊ぶくらいだ。未経験よりはマシだろ?」
「お客さん、もしかして初めてですか?」
ディーラーは落ち着いた声で優しく語り掛ける。
「まぁ、リアルでやるのは初めてだな。」
「と言う事は、ルールはお分かりで?」
「まぁな。」
「それでは、始めましょうか。」
「ヘッヘッヘ、新入りか。まぁちょっとは手加減してやるよ。俺の運に歯止めが効けばの話だがなァ?」
同じ宅に座る細く白い棒を咥えた男が話しかけて来る。それを横目に、ディーラーはカードを2枚ずつ配る。
配られたカードを見るなり、カルサイトは渋い顔をした。
「KとJ......弱ぇ......」
「へッ、もう負け腰かァ?そんなんじゃああっという間に財布が空になっちまうぜェ?」
カルサイトは目線だけでディーラーと隣の男のカードを見る。ディーラーは片方は裏面、もう片方は5だ。
そして、男のカードは、カルサイトと同じ値になる、JとQだった。
「お2人共、スタンドでよろしいですか?」
「「あぁ。」」
ディーラーが裏面のカードをめくる。そのカードは9で、ディーラーがさらに1枚引くと、Kが出た事でバーストし、2人の勝利となった。現在チップ数:10500
「では、こちらチップとなります。」
「ねぇ、これってどういうルールなの?」
「なんだ、知らねぇのに付き添い出来てんのか。お前も大変だなァ?」
「...なんか、勘違いしてない?」
「こいつは確かに連れだが、まぁ、これから学びに来たって方が合ってるかもな。」
「でしたら、私達がお教えしましょう。よろしければ、こちらのチップをお使いください。」
ディーラーはゾイサイトにチップをいくらか渡すと、ゾイサイトは卓に着かされた。
「まだやるって決まった訳じゃ―――」
(うるせぇとにかく合わせろ)
「...あとで覚えていなさい。」
1同がチップを賭け、ディーラーが再びカードを配ると、チュートリアルが始まった。
To be continued.
ブラックジャックのルール
まず、ディーラーとプレイヤーにカードが2枚配られる。(この時、ディーラーのカードの内1枚は裏面にして伏せられている。)
プレイヤーは配られたカードの数字の合計が「21」を上回らないように、
ヒット(1枚ドロー)、スタンド(現在の数字で確定)、ダブルダウン(賭ける金額を2倍にし、1枚のみドローする)を駆使し、21またはなるべくそれに近い値を目指す。
(1は1としても11としても扱える。J、Q、Kは、いずれも10として扱う)
最終的な数字が21に近い人が勝ち、21を上回った人は当然負けとなる。




