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[愛の形、孤独の形]Episode Crys&Pearl  作者: 情緒不安定
1章『愛を望む双子』
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#8『疾風怒濤』

〈数分前、恐竜博物館、倉庫前〉



任務で現場に到着した3人は、裏口から中へ侵入する。その時、カルサイトは倉庫の前にあった業務用大型送風機を見つけていた。



「あった!」


カルサイトは2人を連れて倉庫前に辿り着く。


「あったって、何が?」


「こいつを運ぶぞ」


「はぁ......?まぁ、確かに有効打になるかもしれないけど、それまであの子に1人で相手させるの?」


「仕方ないだろ!他に何も思いつかなかったんだからよ!!」


「分かったわ......マーカサイト、やれる?」


「はい、やってみます...」


3人は裏口の隣にあったシャッターをこじ開けると、業務用送風機の車輪のロックを外し、手押しで中に運び始めた。



〈恐竜博物館、中央エリア〉



翼竜の骨格は逆上し、パールに向かって突進しようとするが、継続的にパールが起こす結晶の風圧で近づく事すら出来ずに居た。


「はぁ......もしかしてずっとこれやってたらこいつ動けないの?...まぁ、ちょっと疲れてたから、体力の節約にはなるか。ところで、なんでこれは勝手に動き出したの?しかもやたらしぶといし......あの人達はどこ行ったのかな......」


パールの起こす爆風によって、肋骨や関節が少しずつ外れて行く。気付けばその身体には、頭、背骨から尻尾、脚、翼の骨しか残っていなかった。だが、爆風に触れる身体の面積が少なくなった事により、骨格は爆風を受けても仰け反らなくなってしまった。


「あっ、もしかしてこれ、まずい?」


骨格の感情は読み取れなくなっていたが、只ならぬ殺気はなんとなく感じ取れた。翼竜はパールに少しずつ近付いていくと、尻尾を振りかぶり、思いっきりパールに向かって薙ぎ払った。


「まずいっ!!!!」


パールは向かって来る尻尾が触れると同時に、触れた場所で結晶を破裂させ、大きく後ろに飛ばされた。

パールはなんとか壁にめり込む前に踏み留まり、態勢を立て直す。


「ちょっとへましちゃったな......と言うかこれだけやって倒れないってどういう事?どうしよう―――」


「あの!!!!」


パールが次どう動くか考えている時、マーカサイトがパールを呼ぶ声がした。


「あの骨格の!足の根元を見てください!!」


「ん?」


パールは暴れ狂う翼竜の左脚を見る。黒い骨の根元に、何か光るモノを見つける。


「あれは?」


「もしかしたらあれ!神子石(かんこせき)かもしれません!!!!」


「神子石......?って?」


「説明は後です!!あれを落としてみてください!!」


「何か知らないけど、そういう事なら!」


パールは結晶を辺り一帯にばら撒く。中央エリアの広間は一面地雷原になったが、翼竜はそれを踏む気配は無い。


「あの!!どうするんですか......?このままだと損害がえらい事に......」


「俺らに任せろ!!!!」


マーカサイトとパールが翼竜と睨み合う中、カルサイトとゾイサイトが到着する。


「ちょ、これマズくない!?」


「最大出力だ!!全部吹き飛ばせば起爆するまでも無いだろ!!!!」


カルサイトは骨格に送風機を向け、起動すると、結晶丸ごと翼竜が反対側の壁まで吹き飛ぶ程の風が発生する。


「そ――新―!!や―る―!!!!」


「なんて......?...でも、これなら行ける!」


パールは風の中に入り、追い風に乗ると共に、足元で結晶を起爆させ宙に浮かぶ。次に翼竜の足元にある結晶へ向かって手の平から出した結晶を投擲する。投擲した結晶は目標を外れたが、翼竜の足に命中し、そこから連鎖爆発が始まった。


「このまま突き抜ける!!」


パールは左脚の根元に近付く。身動きが取れない骨格から紺色の結晶を回収すると、そのまま連鎖爆発の爆風と送風機の風でその場に着地した。カルサイトは連鎖爆発で博物館の壁が砕けると同時に、送風機のスイッチを止めた。


「えっと......壁の修繕費って...いくらなんでしょう......」


「...まぁ、あの翼竜以外の展示品は大丈夫みたいだし、それで済んだだけマシだと思いましょう。」


翼竜は完全に動かなくなり、建物の外に砕けた壁の瓦礫と混ざってバラバラになっていた。


「初仕事から大手柄だったな。」


カルサイトは送風機が完全に停止したのを確認すると、パールの方へ歩み寄った。


「あぁ、どうも。」


「俺ん名はカルサイト。そこのちっこいのはマーカサイトで、その隣に居るうるさいのがゾイサイトだ。」


「ちょっと、うるさいってどういう事よ。」


「いっつもいっつも俺の上げ足を取るなって言ってんだ!!」

「あんたが勝手に突っ走るから制御してあげてるんでしょ!!」

「あんだとコラ!!!!」

「またやるの!!!!」


2人はパールの事など気にも留めず、口喧嘩を始めた。それを横目に、今度はマーカサイトがパールに歩み寄る。


「すみません、いつもの事なので、気にしないでください。これでも2人とも優しいので。」


「アハハ...賑やかな組織だね。」


「そうですね......あぁそうだ、名前聞いても良いですか?」


「私はパール。えっと、思いっきりやっちゃったけど、怒られるよね?」


「ご安心ください。建物自体の修繕費はエリナさんが負担してくれますから。まぁ、翼竜の方は分かりませんが......」


「だよね......」


そんな話をしている中でも、横からの耳をつんざく声は鳴り止まない。


「...あの、パールさん、少し耳を塞いで、私の後ろにいてくれますか?」


「え?うん、わかった」


マーカサイトはパールが耳を塞ぎ、自身の背後に回ったのを確認すると、懐からメガホンを取り出した。


『—―――――!!!!!!』


マーカサイトがメガホン越しに何を言ったのかはそばに居たパールさえ分からなかったが、少なくともその音量は外に避難していた人々を通り抜け、近隣住民さえうるさいと感じる程だった。マーカサイトのメガホンをもろに食らった2人は白目を向き少し固まった後、すぐに頭を振り正気を取り戻した。


「ってぇ......まだ耳鳴りしてやがる......」


「はぁ......ごめんなさい、マーカサイト」


「謝るならパールさんにです。」


「ごめんなさい、こんな私達でも良かったら、仲良くしましょうね」


「はーい!って、そういやこれどうしよ......」


パールは頭を掻きながら大穴が開いた博物館の壁と、その向こう側にあるバラバラになった翼竜の骨格の山を見る。


「心配しないで、初仕事でこの成果なら十分よ。っと言うか、装備無しでよくやれたわね。」


「まぁ...身体頑丈なんだ」


「ほぉん、まっ、そん位出なきゃ俺らと肩並べらんねぇか。」


≪皆、よくやってくれた。アフターケアは私がやっておく。帰還してくれ。パールの紹介も兼ねて集合だ≫


≪≪了解≫≫


パール以外の一同は耳にはめてる装置に指を当て、そこから聞こえるエリナの声に応答する。


「そういえばパール、足はあるの?」


「うん!エリナさんからスクーター貰ったんだ!」


「スクーター?」


カルサイトは少し考えた後、あからさまに顔をしかめた。


「はぁ......まぁ、少なくとも足には困らなそうだな。んじゃ後でな、俺は怒った館長に捕まる前に先行くわ。」


カルサイトが博物館に空いた穴からその場を去ると、残った一同は顔を見合わせ、顔を青くしながらそそくさとその場から逃げ去った。


  To be continued.

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