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[愛の形、孤独の形]Episode Crys&Pearl  作者: Emotional
3章『法ここに非ず』
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#48『マリオネットの慟哭』

〈スズメウリ教会、エリア前〉



「......」


次々と片付けられて行く翼竜達。尚もその場で座り込み、脱力したように天を仰ぐトリカ。

そんなトリカに気付いたのか、オーキッドが駆け寄って来た。


「トリカさん?」


「—――」


反応が無い。気絶しているのだろうか。


「......もう!!」


オーキッドは手の平を掲げると、そのまま思いっきりトリカの頬に向かって振り下ろした。

パァン!と言う子気味の良い音が響くと共に、トリカは我に返る。


「—――オーキッド、だったか。」


「叩いてしまったのは後で詫びますわ。ですが、ここは少なくとも戦場ですのよ?この場において、自分の命より大切なものがございまして?」


「...そうだな。だが、どうしたもんか......」


「クリスさんとパールさんから軽く事情は聞きましたわ。もしや、彼らがそうなんですの?」


「あぁ。間違えもしない。私があの時、あの場所で見たそのものだ。クソが。」


「—――始末、しますの?」


「そこなんだよな......あぁもう!!難しい事考えんのは苦手なんだよ!!ったく、とりあえず、こいつらが私らを始末しに来たと言う前提で、今珊瑚らを手伝いに行けば、この数の人造人間に自ら囲まれる事になる。消耗しちまってる私らが、この数を仕留め切れるかどうかだ...」


「課題が多いですわね...ところで、クリスさんとパールさんも「そう」なんですわよね?」


「んぁ?」


「彼ら、見るからに普通の人ではありませんでしたわ。彼らは違いますの?」


「あぁ、そう言う事か。あの2人を造ったのはトリカじゃねぇ。私の娘だ。って、その話は長くなるから後な?んで?あの2人がどうした」


「でしたら、どうして目の前に居る彼らは、パールさん達みたいな力でなく、ああいった人海戦術を取っているんですの?」


「—―――ん?」



〈スズメウリ教会、大聖堂〉



聖堂の割れたガラスが跡形も無くなり、窓枠のみが残る程の咆哮を上げる。

鼓膜を破りかねない音圧と共に、全身の骨が砕けた翼竜が2人に襲い来る。


「クソが、このデカさじゃとても核を叩けねぇ...どうすりゃいいってんだ!」


少女は尚も不敵な笑みを浮かべる。口元が動いているようだが、何と言っているのかまるで聞き取れない。


「何とか隙を見て叩き込んではいるが、再生力と硬さが段違い過ぎる。頼む、早く終わってくれ――」


絶えず響く叫び声。仲間達が駆けつけてくれることを願い、隙を伺う。

カルサイトが翼竜の脚を切断しようとした途端、翼竜は一瞬にして身を翻し、カルサイトの視界を尻尾が覆った。


「チッ、」


カルサイトはそのまま弾き飛ばされ、聖堂の壁を突き抜けた。


「カルサイト!!!!くそっ、どうすりゃいいんだ」


「っ――――」


カルサイトは隣の建物の壁に全身を打ち付けられた。流石の再生力を以てしても、カルサイトの視界はぼやけ、全身が麻痺してしまった。


「—――?」


カルサイトはふと、目の前の景色が目まぐるしく変化して行くのを感じる。


「......へッ、久々に見たぜ、走馬灯。珊瑚が1人で戦ってるってのに、さっさと起き上がれっての。それとも何か?あの翼竜を倒す方法を見れるってのか?」


(その石の力にも限度がある。命が惜しいならさっさと出て来い。)


カジノの記憶。オーキッドを助けた。


「って、直近過ぎるだろ。もっと他に無いのか?」


(—――私と、来るといい。)

(君達は―――を――――――――か?)


「......昔過ぎだろ。って、何を俺にツッコんでるんだ俺は。そんな暇があったら身体を起こしやがれってんだ。」


(珊瑚とトリカがお尋ね者になった、とかな。何があったかは知らんが――)

(とりあえず、本能の街の連中は―――――)

(ゾイサイトが―――――――――――――――)


―――――――――――


(お前は間違ってない。だからもうこの話はこれっきりだ。いいな?)


「......」


走馬灯はやがて砂嵐の様になり、少し経つとその中から1つだけ、目の前に映し出される。


(その...あの時は、ちょっと言い過ぎたわ。私も悪かった。)


「......馬鹿が。結局一番背負い込んじまってんのはお前の方じゃねぇかよ。勝手に俺の荷物を重そうに背負って。」


(—―――貴方は、優し過ぎるのよ。冷静で居たいならもう少し、裁判官みたいなイメージで)


「......?いつの記憶だ?」


(でも、正直それに助けられてるわ。だから、お互い頑張りましょ?結構、いいチームになれるんじゃないかしら、私達。)


「—――今思えば、お前は俺の事何も知らないままだったな。優しさか......」


カルサイトの記憶。その中に、再びいくつかの景色が浮かぶ。

そして、ふと気づくと、視界が元の景色を映し、次第に耳をつんざく轟音が戻って来た。


「......ひっでぇ事思いついちまった。まぁ、これしかねぇよな。」


カルサイトはゆっくりと窓枠に近付くと、珊瑚が必死に翼竜の攻撃を躱しているのが見えた。


「さてと、やるか。」


カルサイトは珊瑚が翼竜を惹きつけている間に、翼竜の背後に回った。翼竜は少女と感覚を共有しているのか、翼竜の上に立つ少女の眼に、涙があった。


「—――っ!!!!」


カルサイトは翼竜の尻尾に触れぬ様、翼竜の腹部へと向かう。そして、翼竜が足を地面に着くと同時に、翼竜の脚に思いっきり掴みかかった。


『—――?』


少女は珊瑚を追いながら、ふとカルサイトを突き飛ばした方を向く。そして、既にカルサイトがそこから離れているのと、翼竜の足元に違和感があるのを感じた。

カルサイトは自身の胸部を軽く傷付けると、露出した体内の結晶を翼竜に当てた。


『!!!??』


途端、翼竜は少女と共に焦り始めたのか、珊瑚を追うのを止め、その場でのたうち回り始めた。


「...!!カルサイト?」


「......言ってしまえば、テメェらは生き地獄を味わってんだろ?だったら、すぐに楽にしてやるよ。」


カルサイトの神子石の力。それは、持ち主に絶大な再生力をもたらす。だが、それはカルサイト以外にはとても制御できぬ力であり、容易く過剰回復によって生物を殺めかねない力でもある。


暴れまわっていた翼竜は次第に動きが鈍くなると、そのまま倒れ、全身の至る所が膨れ上がりそのままはじけた。


『—――――』


カルサイトは翼竜だったモノを全身に浴びると、そのまま起き上がった。


「はぁ、ったく。面倒くせぇことしやがる。」


「カルサイト、大丈夫なのか?」


「へッ、俺の回復力はお前もよく知ってんだろ?」


『—――――』


少女は翼竜がただの水溜まりになった後、その場に座り込み動かなくなっていた。


「......」


珊瑚はそれに気づくと、懐から裁縫針を取り出す。


「何するんだ?」


「この針は記憶を抜き取れんだ。答え合わせしなくていいか?」


「—――趣味わりぃな。なんか嫌な事でもあったのか?」


「まぁな。」


珊瑚は針を少女の額に当てる。針は次第に白く輝き始めるが、次第にその輝きに、黒いもやが覆い被さる。


「—――?なんだ?」


「どうした?」


「いや、まさかな......」


珊瑚は懐からもう1つ針を取り出す。その針を少女の額に当てると、もやは少女へと戻り、もう1つの針を黒く染めた。


「こいつは......」


―――


都合良く鳴る、それでいてその扱いに抵抗を示さない。そんな風に育てられてしまった。

頼れる人なんて居ない。そう言った事柄に関して意思を持っても表現できない。

誰も私を、人として見る事なんて無い。

ようやく分かった。

ならどうして、この不条理に、公平と言うものは手を差し伸べてくれないのか。

それは私が声を上げない。上げられないから。


負の連鎖は、いつも私の中で完結する。

あぁ、私も、あの娘と同じ家に、生まれられたらな。


ねぇ、ルピナス。


  To be continued.

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