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[愛の形、孤独の形]Episode Crys&Pearl  作者: 情緒不安定
1章『愛を望む双子』
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#5『客人』

〈暁の館、客間〉



「おぉ...!!」


クリスとパールは、暁とルピナスが用意した衣服を着用すると、客間に姿を見せた。ライラは目を輝かせながら、2人をまじまじと見つめる。


「似合ってるよ、クリス」


「ありがとう......パールも、似合ってる」


「ありがとう♪」


「サイズは問題無さそうだな」


隣のシンクから、洗い物を終えた暁が戻ってきた。パールは暁を見ると、思い出したかのように暁に質問する


「ねぇ、1ついい?私達ってなんでここに居るの?」


「あー、それはだな」


(条件がある。)

(条件?)

(あぁ。もし吞んでくれるなら、その2人を命として認め、生かす事を許可する。)


「......1つは、あんたらが俺の娘の、遺産だってこと、面倒見てやれるのが、俺しかいないからな。」


「1つはって事は、もう1つあるの?」


「...まぁ、どのみち知る事になるだろうしな、今言ってもいいだろう。この街は理性の街って所でな、この街の主の、透輝(とうき)エリナって人と一緒に、あんたらが生まれた研究所で、俺の娘の研究資料を回収しに行ったんだ。そこであんたらと出会った。もう察しは付くだろうが、あんたらは人造人間なんだ。そいつぁ自然の法則を乱すだけでなく、様々な観点から禁忌とも呼べる存在とされてる。」


「だが、どうしても俺はあんたらに刃を向けられなかった。」


「私達を造った人のこと?」


「...あぁ。俺は結果として、こうなる事を止めらんなかった。だから、せめてあいつの遺した、あんたらをこうして預かる事で、その罪を償いたかったんだ。」


「ってな訳で、今あんたらはここに居る。そんでこっからだ。あんたらを俺が生かすのを、エリナが黙ってる訳が無いんだ。俺もその時は、最悪死ぬ事さえ覚悟した。だがエリナは、あいつを手伝うのを条件に、あんたらを生かすってな。」


「手伝い?」


「簡単に言えば治安維持だ。エリナが何を企んでるのかは知らんが、あんたらにはエリナから依頼が来るだろう。それを手伝うのを条件に、あんたらの生きる権利ってのを保証するそうだ。」


「ふーん......」


パールはクリスと目を合わせる。色盲の彼には、治安維持なんてものは困難を極めるのではないのだろうか。


「あー、クリスだったか、確か色が見えないんだったな。」


「......はい。」


「暁さん、」


パールはクリスの1歩前に出る。


「私がクリスの分までがんばる。それじゃ駄目かな」


「えっ.....でも......」


前に出たパールを引き留めるように、クリスは口を開く。


「大丈夫、研究所での私見たでしょ?この力があれば、楽勝だって!」


暁は無意識に、半年前の事が頭によぎる。あの2人の事や、カイヤの事を考えると、引き留めたい気持ちも山々だが、そうすれば2人共殺されてしまうだろう。そんな事を考えていた矢先、暁のポケットから着信音が響く。


「わり、電話だ。」


暁は廊下に出ると、それに応答する。エリナからだ。


「もしもし、エリナだ。暁君の番号であってるかね?」


「あー、教えた覚えはないんだが......」


「私の手にかかれば特定など朝飯前です。」


通話越しに秘書の誇らしげな声がした。


「それで、あの2人の様子はどうだね」


「2人とも目を覚まして、今は娘と一緒に居る。」


「そうか、良かったらペグマタイトタワーまで連れて来てはくれないか、君達に頼む依頼の、詳しい話をする」


「あぁ、ちょうど相談したいこともあったんでな、こっちから行こうとしてたんだ。」


「相談したい事?」


「まぁ、詳しくは会ってから話す。そんじゃ、後でな」


暁はそう言うと電話を切った。切る間際、エリナが何か言おうとしていたが、空耳だと思う事にした。

部屋に戻ると、電話の内容を聴いていたのか、2人はとっくに支度を済ませていた。


「そういう訳だ。外出用の鞄取って来るから、先に玄関に行っといてくれ」


「「分かった」」


2人は暁の両脇から部屋を出て、玄関へと向かった。暁も自室に向かおうとした所で、ライラに呼び止められた。


「そういえば父さん、ルピナスちゃんは?」


「あぁ、ルピナスなら、食器を洗うの手伝ってもらった後、自分の部屋に戻ったよ。」


「そっか、ありがと」


「仲良くしてくれてあんがとな」


そう言うと暁は、客間を後にした。



〈暁の館、玄関前〉



玄関に着くと、ライラと暁、ルピナスの靴の他に、新品の靴が2足置かれていた。


「これってもしかして」


「私達の?」


2人は足の大きさを比べ、それぞれに合ったサイズのものを履く。案外履き心地が良く、あっさり足に馴染んだ。2人が靴を馴らしている内に、暁が鞄を肩から掛けてやって来た。


「似合ってるじゃねぇか、やっぱこういうのはライラに選んで貰うのが1番だな。よし、それじゃあ行くぞ!」


暁が玄関を出て、2人を連れてペグマタイトタワーへ向かおうとした時、館の正面にある門の外に、1台の車が止まっているのが見えた。3人が車に近付くと、運転席に秘書が乗っていた。


「さっき切る間際に言おうとしたのはこれか......」


「これです。さぁ、どうぞ乗って下さい。」


暁は助手席に、クリスとパールは後部座席に座ると、秘書は勢い良く車を走らせた。速さの割に乗り心地は悪くなく、パールは次々と変わりゆく窓の外の景色に心躍らせていた。一方クリスは、走り始めてすぐに乗り物酔いしていた。


「クリス、気持ち悪いなら遠くを眺めてるといい。」


「窓は自由に開けて構いませんよ」


「クリス、大丈夫?」


「あぁ......窓を開けたら、少し楽になった。」


「あと少しで着きます。もう少しの辛抱ですよ」


秘書はそう言うと、より速い速度で目的地へと急行した。



〈ペグマタイトタワー、エレベーター〉



目的地に着いた一同は、この街のどのエレベーターよりも長いエレベーターで最上階へと向かう。


「すごい...街を一望出来るよ!」


「あんまはしゃぎすぎるなよ、」


「ご心配なく、このエレベーターは安全性に優れておりこの中でいくら暴れようがびくともしません。」


「はぁ......」


「そういえばクリス、具合は大丈夫?」


「もう...大丈夫。少し、体が驚いただけ」


「そうか、もうそろそろだな」


エレベーターの電子音が鳴る。扉が開き、一同が最上階へ足を踏み入れると、目の前に外を眺めるエリナが居た。


「エリナ様、連れて来ました」


「うむ、ご苦労だったな」


エリナは振り返ると、暁に同行している2人を見つめる。エリナが次に目配せをすると、秘書は茶を注ぎ始めた。


「とりあえず座りたまえ。話はそれからだ」


一同は横長のソファーに腰掛ける。エリナも対面のソファーに座り、机を囲んだ。


「さてと、じゃあ、さっそく本題に入ろうか。」


エリナは姿勢を整えると、顔つきを変える。


「最近、本能の街のゴロツキ達が、この理性の街で目立って悪さする事案が増えてきている。そこで、君達にその治安維持を手伝って欲しいと言う訳だ。」


「なるほどな。ところで、もしかして前に研究所跡で見たのってよ」


「あぁ、恐らく本能の街からやって来たのだろう。確かにあの痛ましい事件は、本能の街の住人にとっては縄張りを広げる絶好のチャンスだろうさ。だがそこが妙な点でもあるんだ。一体あの研究所で何が......?」


「その事なんだがよ」


暁は裁縫針で覗いた記憶を思い出す。だが、これを話して本当に良いものか?そう考え、ひとまずは黙秘の選択を取った


「いや、やっぱり何でもねぇ。そうだ、電話で話した件なんだけどよ」


「あぁ、何かあったのか?」


暁はクリスを指す


「クリスってんだが、目を覚ました時に色盲だって事が分かってな。」


「そうか......私も障害を持った者に、このような危険な依頼を任せる程酷ではない。しかし困ったな......この任務は1人でも戦力が多い方が良いんだが......」


「その事なんだが、」


今度はパールの方を見る。パールも意図を組んだのか、エリナに口を開く。


「私がクリスの分までがんばる。それじゃ駄目かな」


「どの道、君にも頼もうと思っていた。協力的な姿勢を向けてくれるのは頼もしい。だが同時に、最悪命に関わる事案に発達しかねないという事を、理解して欲しい。」


クリスは、パールに心配の眼差しを向ける。


「大丈夫。研究所でも見たでしょ?私強いから、安心して」


「それでは、改めてよろしく頼むよ。それじゃ、今日の所はこれでお開きにしよう。パール君、君には明日、任務の詳しい説明と、実務が待っている。君の活躍、期待しているよ」


一同は席を立ち、エレベーターへと向かう。


「今日は遠くから足を運んでもらって感謝する。それじゃあ、また会おう。」


エリナはエレベーターの戸が閉まるまで、彼らを見送った。


「さてと、どう隠蔽したものか......」


   To be continued

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