#43『Destination』
〈本能の街、?????〉
『ん?どうした』
ダマスケナが祈りを捧げる中、ふと背後から気配を感じ振り向く。するとそこには、操作盤に吊られた烏を1羽引き摺る少女が居た。
『リマイトが死んだ。』
『こらこら、あまり神聖な聖堂の中でそんな直球な言葉を吐くんじゃない。』
『...ごめんなさい』
『分かればいいんだ。それで、それだけじゃないんだろう?』
『—――そろそろ、襲撃が来ると思う。』
『......そうか。』
『—―?驚かない?』
『あぁ。まぁ、少なくとも、今の俺達に太刀打ちできる手段は無い。だが、策が何もない訳では無いからな。そうだろう?』
『—―――!!忘れてた。』
『ハッハッハ。それに、エリナも協力してくれるだろうさ。まぁ、その先に待つのは奴らにとっての破滅、俺達にとっての救済だけだがな』
〈本能の街、入口〉
再び街の入口の戻ったカルサイトは、無線でエリナと繋ぐ。
「—――って訳だ。んで、ちょっと頼みついでにいくつか聞きてぇことがあってな。」
≪あぁ。どうした?≫
「あんたの言う情報筋ってやつは、人で合ってるか?」
≪あぁ、人だよ。ただ戦闘には向かないから、諜報員として雇っている。≫
「んじゃあよ、さっき言った奴で、情報を集めて貰うのって出来るか?」
≪うーむ......敵地のど真ん中とまでは難しいかもしれんが、相談してみよう。≫
「んじゃあ、一応もう一つな。珊瑚とトリカは、生存していた。ってか、本能の街の主がトリカだ。」
≪—――そうか。≫
カルサイトからの1報に、エリナはしばらく黙り込んでいた。
≪カルサイト。≫
「なんだ?」
≪—――いくら時が経ったとしても、彼らが謀反者である事には変わりない。本能の街は、そうして出来たのだからな。だから、後は分かるな?≫
「.........あぁ。」
≪頼んだぞ。≫
エリナはそう言うと、無線を切った。
「—――結局、分からずじまいか......俺は、どうすりゃいいんだ?」
カルサイトはしばらくここからも見えるタワーの頂上の方を見つめた後、本能の街に戻った。
〈本能の街中央部、武器庫前〉
「っすー......」
トリカは街の人々を全員集めると、武器庫の前に配置した木箱の上に立ち、メガホンを構えた。
その中にはオーキッドもおり、彼女は見慣れない黒い装甲を纏っていた。
「あれ、その装備どうしたの?」
「あぁ、これですの?これなら、ドロマーと言うおじさまが、わたくしの機関銃を改良してくださいましたの。ボディーガードに護られずとも、これなら機関銃を握るよりも素早く動けますし、ある程度の攻撃なら防げますわ!」
「鎧、重くないのか?」
「機関銃って1発撃つだけで人によっては余裕で後ろに倒れますのよ?それを普段から扱っているのですから、これくらいドレスを着るより軽いですわ!」
「かっこいい!」
「ふふっ♪初めて言われましたわ!」
「はいそこ!人が折角指揮を執って喋ろうとした時に喋らない!!」
「あ、すいません...えへへ」
トリカは改めて一呼吸置くと、メガホンのスイッチを入れた。いつの間にかカルサイトも街の入口から戻って来ており、珊瑚の居る位置とちょうど反対の建物の壁に寄り掛かった。
「さてと、俺らは本能の街の連中だ!!堅苦しいしきたりだの何だのはめんどくせぇから、こういう段上での社交辞令だのなんだのは全部端折る!!言いたい事は一つだ!!貸したもんはきっちり返してもらう!!いいな!!!!」
「「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」」
「うるせぇ!!騒いだら今からカチコミに行くのがバレんだろうが!!!!!!」
「えぇ......」
「何のための指揮だよ......」
「ふふっ、本能の街の主って意外と面白い方なんですのね」
「とにかく!!返しさっさと済ませんぞ!!!!決行は夕方!!解散!!!!」
トリカがそう言うと、本能の街の住人達はぞろぞろと元の場所に戻って行った。トリカが木箱から降りると、珊瑚とカルサイト、クリス、パール、オーキッド達が残った。
「そんで、なんで夕方なんだ?」
「こんだけ騒いだら連中も警戒すんだろ。だから、そっから少し経った後なら、ちょっとくらいは油断して、そっからパニックにでもなってくれてたらラッキーってだけだ。大した意味は無いさ。そんで?あんたらはなんかあんのか?」
「......なぁ、俺らって、あの石に関する事件を巡って、その元凶を討つってのが目的だったよな?こんなあっさりいけるもんなのか?」
「さぁな。でもよぉ、これ以上なんか出来るか?街の人間の中にも、行方不明になった奴が少しずつ増えてってるし、急いだ方が良いだろ。」
「—――それもそうだな。」
カルサイトは頭の中の問いを1つ消化したが、それでも頭のもやは晴れずに居た。
「—――なんか悩みがあるなら言え。これでも、元同僚なんだしな」
「—――だったら、俺らはなんでこうして目的を同じにして、同じ方向を向いて、同じもんを相手してるってのに、対立しなきゃならねぇんだ?」
「......」
トリカは沈黙を貫く。隣に居た珊瑚は少し考えた後、口を開いた。
「なぁトリカ、」
「ん?どした」
「俺はよ、そろそろ話しても良いんじゃねぇかって思うんだ」
「—――理由は?」
「これは仮説の話だが、これだけ何も動きが無いにしてもだぞ。『もし、続いてるとしたら』だ。それに、俺らは俺らが正しいと思った事をした結果、今の俺らがある訳だ。だったら、今のカルサイトになら、話しても良いと俺は思うんだが。」
「......そうか。」
トリカは微笑むと、ポケットから棒付きキャンディーを取り出し、1度噛み砕いた。
「—―じゃあ、カルサイトに1つだけ質問だ。」
『お前はエリナを裏切れるか?』
「—――あ?」
「どういう事ですの?」
「オーキッド、ちょっとこっち」
クリスとパールは3人の置かれている状況を悟ると、オーキッドを他の場所に移すと共に、本質には触れず軽く事情を話し、戻って来た。
「あんたが知ろうとしてる事は、それと同等の事だ。これを知れば間違いなくあんたも私達みてぇに始末される。それと、あんたは、「私らを」裏切らねぇ保証があるか分かんねぇからな。」
「......」
「カルサイト......?」
「...俺は、何にも知らねぇよ。いつもそうだ。皆、俺の知らねぇ所で、どっか行っちまう。だから、そうならない様に指揮を執っていた。姉貴も、お前らも。ゾイサイトも。皆俺に何も言わねぇでどっか行っちまった。誰も俺を信用なんかしちゃあくれねぇ。なんでだ?俺が、「エリナに拾われた赤子」だったからか?」
To be continued.




