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[愛の形、孤独の形]Episode Crys&Pearl  作者: Emotional
3章『法ここに非ず』
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#41『意志の力』

(何と言うか...身体が、軽い?)


パールは風圧とそれに身を任せる事による慣性によって、素早く複数の相手に対応していく。


「そうか――!!」


「へっ、遊びはもうこの辺で良いな。」


トリカ達は渦を解き、一斉にパールへと襲い掛かる。パールはパールを軸として対称の位置にいる2人ずつを順に処理して行く。たまにやって来る対象の位置に何もないトリカに対しては、横からの攻撃を命中させ、その勢いで回転しながら仕留めて行く。攻撃を喰らったトリカ達は次々と後退して行き、気付けば少しずつ群れの勢いが収まって来ているように感じた。

だが、その勢いは少しすれば再び増し始め、ダメージを受けたトリカが再生し、再び襲い掛かっているように見えた。


「こんなにずっとこの量を相手にしてるのに、全然疲れない......!そうか!!」


クリスは遠くからパールをサイト越しにみつめる。パールの視点は次々と移り、ますますクリスの銃口に迷いが生じる。


「—――パール、なんか楽しそう?,,,,,,」


クリスのグリップを握る腕から、少し力が抜ける。


「......私、いる?」


「っ!!!」


パールは遠くで佇むクリスの弾丸に助けられずとも、華麗にトリカ達を捌いて行く。クリスは落ち込みかけながらも、今のパールの姿から目が離せなかった。サイト越しに映る世界が、パールの視界の変遷と共に、絶えずステージの照明の如く小刻みに掻く方向を照らし、チカチカと点滅を繰り返す様に。


「はぁっ!!!」


「—――へッ、上等だ。じゃあ、これならどうだ!!」


トリカはパールへの攻撃を一斉に止めると、今度は1方向から全員でパールに飛び掛かる。


「—―!!」


パールは体をねじり、トリカ達をしっかりと視界に捉える。そして、懐に蓄えていた結晶を全て自身の後方に向けると、向こう側で見惚れていたクリスと目を合わせた。


「っ!!」


クリスは咄嗟にグリップを握り、パールの意図を汲むと、銃を自身の右側へ向け、左に瞬時に薙ぎ払うと同時に発砲した。

弾丸はパールの遥か右へ向かったが、急激に軌道が変わり、パールの後方へと延びて行った。


「これでも―――くらえっ!!!!」


パールは懐の結晶を全て固めて自身の後方に落とすと、それに弾丸が触れると共に思いっきりトリカ達へ向けて蹴り上げた。

地面が揺れる程の衝撃。クリスとパールが放った閃光は、パールが一斉に破裂を始めた結晶の風圧で地面に仰向けになると共に、飛び掛かろうとしたトリカ全員に向かって、風圧でブレる事も無く、むしろ勢いの増した真空の弾道と共に、高温の熱波と無数の破片を浴びせた。


トリカ達は全て撃ち落とされると、そのまま黒い結晶となった。


「っ!?これって!!」


クリスは自身の近くに落ちて来た結晶を凝視する。幸いと呼ぶべきか、その結晶に文様は無かった。


「っ」


クリスは反応する間も無く、懐から拳銃を取り出し背後から自身の肩に触れようとした者へ銃口を向ける。クリスが振り返ると、そこにはトリカが居た。トリカは銃口を避け、その手首を逸らして背中側に回っていた。


「あんたすごいな。5感の内の1つが鈍ると、他の4つが冴えるって聞くが、そこまでなれるもんなのか?」


「—――?」


「安心しろ。試すのは終わり。ここに居るのは、戦意喪失した本物だ。」


「はぁ—―――」


クリスは肩の力を抜く。ふと天を仰いでいるパールの方を見ると、案外平気だったようで、あっさり起き上がると、こちらへ向かってサムズアップとウインクをしてみせた。

パールがこちらにゆっくりと歩いて来ると、トリカは近くに散乱している結晶を拾い集め、2人に背を向けた。


「んじゃ、私はちょっと行くところがあるから行くわ。そんだけ立ち回れんなら、あんたらの心配はする必要なさそうだしな」


トリカはそう言うと、手を振りながら、路地裏へと消えて行った。



〈本能の街東部〉



「—――あ?」


カルサイトは砂浜からの轟音で目を覚ます。意識がはっきりしてから、もう一度同じ音が鳴ると共に、それが仲間のものであると悟った。


「っ、敵か?いや、だったら外がもっとうるせぇはずだ。――特訓でもしてんのか?ったく、やるんだったら日が昇ってからにしやがれ......ハァ、叱りに行くか?」


カルサイトは体を起こし、そのまま背伸びをすると、洗面台に向かう。電気とガスの供給が、理性の街の管轄外な事もあり完全に止められているが、幸い水道だけは本能の街の管轄内にあった。

カルサイトは街並みに反して綺麗な洗面台で顔を洗う。



―――



(ねぇ、次の任務まであまり時間が無いし、髪乾かすの手伝ってくれない?)


「—―――」


カルサイトはタオルで自身の顔を拭く手を止める。


(別に良いじゃない。マーカサイトは喜んでやってくれたのよ?それに、私がこうして頼み事をするなんて、そうそうないんだからね。感謝しなさい?)


「—――何寝ぼけてんだ、俺」


(まぁ、別に嫌なら無理強いはしないわ。)


「......」


タオルで拭う手を下ろし、鏡を見つめる。


「...そういやお前、親が有名な化粧品の会社のお偉いさんだったな。なんで俺らの仲間に入ってたんだっけか。」


鏡像は曲がりうねり応える。


(人があの時折角かっこつけて言ったのに忘れたの!?だから幼い時に、親とはぐれた挙句事件に巻き込まれた時に、貴方達の仲間に助けてもらったの!!その人を探してるのよ。いつになったら会わせてくれるわけ?)


「......っ」


(父上は、貴方方よりも前に、RoPのメンバーだった方ですの)


「—――まさかな。ってか何見てんだ、俺は。なんで幻覚なんか」


「先程から何を話してるんですの?」


カルサイトの後方から、先日から嫌と言うほど耳にし、馴染んでしまった声がした時には、鏡像は姿を消していた。


「—――」


カルサイトは口を漱ぎ、口元を拭うと、背を向けたまま洗面台を譲った。


「なんでもねぇよ。俺は行く所があるから先に出るぞ。」


「—―ふーん。分かりましたわ。もしまた膝枕が恋しくなったら、別にやぶさかではございませんことよ?」


「......っせぇ」


カルサイトは必要な荷物だけ手に取り、住人に貸してもらっている家を後にした。



〈本能の街中央部、倉庫跡〉



カルサイトは迷う事も無く真っ直ぐと、クリスとパールが最初に呼び出された倉庫へと向かう。

途中ドロマーに呼び止められたが、カルサイトは気にも留めなかった。



「—――」


カルサイトは目的の倉庫に着くと、スクラップの山を見上げる。まだ早朝と言うのにそこには目的の人物が鎮座しており、その麓には大柄な男が居た。

大柄な男は何か言葉を発する事も無く、ただカルサイトを横目に見つめていた。


「......おい、」


カルサイトはトリカに向かって呼び掛ける。だが、尚もトリカは表情1つ変えず、カルサイトを見つめ鎮座していた。


「ハァ、なんだ留守かよ」


「—―お前、トリカを知っているのか?」


カルサイトがため息交じりに発した言葉に、男は聞き耳を立てた。


「知ってるも何も元同僚だ。ってか誰だ?」


「プランツ。そう名乗っている。トリカに何の用だ?」


「別に?ちょっとこれをな。」


カルサイトはそう言いながら、拳を手の平に打ち付けて見せる。


「ほぅ?なら俺が相手になろうか?」


「やめとけ。俺は簡単に言えばそこの高みの見物してる奴と大体一緒だ。」


「随分と大きく出るな。少なくとも、俺は護衛を任されている。その意味が分かるなら、俺が相手として不足しているなんて事は無いと思うが?」


「ハァ、」


カルサイトは目的の前に立ちはだかろうとする壁に、ため息を零した。


「じゃあ、そこの偽物とやり合ってるとこ見て判断しやがれ命知らず。別にそいつなら減るもんじゃねぇだろ。」


プランツはトリカの方を向く。トリカは尚もカルサイトを見つめているが、彼女の左手は、プランツに下がれと言っている。


「—――そうだな。ならば、お手並み拝見としよう。」


「......見るのは構わねぇが、俺は今酷く気分が悪いんだ。ここが色んな意味で修羅場になるかもしれねぇ。それでも良いんだな?」


「......」


プランツは表情一つ変えず、絶えずこちらを見つめているが、こちらに向けているのが負の感情である事は伝わって来た。

トリカの分身もそれを悟ったのか、スクラップの山から下りて来ると、カルサイトに手招きしながら倉庫を出て行った。


  To be continued.

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