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[愛の形、孤独の形]Episode Crys&Pearl  作者: Emotional
3章『法ここに非ず』
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#38『告解』

〈本能の街南西端、防波堤〉



防波堤にある、水面近くから延びる階段からカルサイトが上がって来ると、オーキッドは肩からぶら下げる鞄からタオルを取り出し、カルサイトの頭に被せた。


「だから風邪を引くと言っているでしょう?」


「っせぇな、お前が後ろに立ってたら普通驚くに決まってんだろ!!」


「ふふっ!驚いて下さったのなら、サプライズ大成功ですわね!」


「あぁ?ったく、そんで、このタオルはなんの真似だ?」


「それを説明しに来たとも言えますわね。まぁ、ここだとただ冷えるだけですし、近くの砂浜で話しませんこと?砂浜なら、日光に照らされた熱で温かいはずですわ!」


「あっ、ちょっ、待てよ!!」


カルサイトがオーキッドからの質問の回答を待っていると、オーキッドは突然駆けだした。



〈本能の街南部、砂浜〉



オーキッドは思ったよりも足が速く、カルサイトはあっという間に彼女を見失った。


「はぁ......砂浜って言ってたっけ?防波堤からも見えてたな。あそこか?」


カルサイトが想像する砂浜へ着くと、一足先にオーキッドは砂浜に座り込んでおり、カルサイトの到着に気付いたのか、こちらを見つめながら、自身の横の砂を軽く平で叩いた。


「—――なんの真似だって聞いてんだ」


「はぁ、中々打ち解けませんわね。あの時はあっさり名前まで教えてくださったのに...」


「あん時は―――はぁ。チッ、」


カルサイトは頭に乗ったままのタオルが落ちない程度に、タオルの乗っていない部分を器用に搔きながら目を泳がせた。


「どうしても警戒が溶けない様なら、これでどうかしら?」


オーキッドは一瞬だけフードを脱ぐと、ドリルサイドテールから最初に会った時と同様機関銃を取り出すと、それを軽々しくポイっと砂浜に投げ捨てた。


「......」


「これで、わたくしは武器を持っていませんわ。分かったら隣にお座りになって。」


「—―ハァ、」


カルサイトは渋々オーキッドの隣に座った。


「んで、何の用だよ。」


「先程話した説明と言うのもしたいのですが、結論から話しますわ。」


オーキッドは合掌すると、下目使いでカルサイトの方を向いた。


「匿ってくださいまし♪」


「は?」


「と言うお願いだけではその反応になると見越して、交渉しに来たのですわ」


オーキッドが元の位置に戻り、海を眺めると、カルサイトは俯いた。


「......今はそれどころじゃねぇってんだ。」


「—――貴方と会う前に、本能の街の方々を目にしましたわ。それと、貴方のお仲間が運ばれて行く姿も。—――親しい人を無くす気持ち。最近わたくしも知りましたの。本当に、酷い気分ですわね。」


「......ハァ、1人にしてくれ。」


カルサイトは立ち上がろうとする。が、オーキッドに肩を掴まれると、機関銃を片手で扱っているのもあり思ったより力が強く、気付けばカルサイトの頭はオーキッドの膝の上にあった。


「1度わたくしの隣に座り、貴方はわたくしと対等に話すという意思表示をしたんですもの。観念してくださいまし。」


「チッ。」


「まぁ、少なくとも悪い思いはさせませんわ。それに、もうわたくしは、貴方方の敵ではないんですもの。」


「—――は?」


「全く、どれだけ前置きを置かせるつもりなんですの?いい加減事情を話させてもらいますわ」



〈数ヶ月前―――翡翠家〉



カジノのあの一件の後、わたくしは専属のボディーガードに護られながら帰宅しましたわ。ですが――

お母様がどこにも見当たりませんでしたの。お母様は画家で、よく夜間にも出かけていたのですけど、数日たっても帰宅はおろか、連絡も付かないものですから、わたくし凄く心配で――

それで、ある日玄関のドアがノックされましたわ。ボディーガードがドアを開けると、そこには――


『タだいマ――オーきッド』


「っ!!!?」


.....そこには、全身が絵の具で汚れたお母様が居ましたわ。それだけだったらよかったのですが―――


「お嬢様下がって。あの絵の具、毒です。」


わたくしは、お母様を何とか助けられないかと思考を凝らしましたわ。ですが、お母様は数時間後に、帰らぬ人となりましたわ。それから、不可解な出来事が起こったんですの。

後日。わたくしが外から帰って来ると、ボディーガードどころか、執事やメイドまで消えてしまっていましたわ。もはや、屋敷に残ったのはわたくしだけ。わたくしは身の危険を感じ、それからお家には戻っておりませんの。


「それで、今こうして庶民の皆様方の恰好を真似て溶け込んでみてる訳ですわ。案外悪くない着心地ですわね。腹部への圧迫も無ければ、軽くて動きやすい。つい調子に乗って走り回ってる内に、カジノのVIPルームに居た方に変装がバレかけた時はさすがに焦りましたわ」


「本当に何やってんだよ......」


カルサイトは膝の上に囚われたまま、大人しくオーキッドの話に耳を傾ける。


「それで、わたくし決めましたの。このままいく先も分からないままにするより、真実を知りたいと。でないと、お母様の不審死が浮かばれませんわ」


「ハァ、事情は分かったが、まだ信用ならん。お前があっち側の可能性も捨てきれないしな。」


「手強いですわね....これだけ腹を割って話したと言うのに、まだ何か?」


「お前は初めて会った時、あの文様の付いた神子石を持っていた。何故だ?」


「—―もしかして、貴方方はずっとこれを追っていたんですの?」


「あぁ?」


「もしかして、カジノで聞こうとしてたのって―――」


「いいから答えろ。」


「もぅ、せっかちな方はモテませんわよ?」


「っせぇ」


互いに意味のない駆け引きを繰り返していると悟ったのか、2人の間に沈黙が訪れる。砂浜に流れて来るさざ波が、時折足を伸ばしているオーキッドのかかとに触れる。幸い靴の中までは入ってこないが、少し冷たくくすぐったい。


「—――これは、この本能の街から北西端。理性の街からも東北端から通じてますわ。そこに大きな教会がありますの。その周りにある建物は全て、その教会の私有地に建てられていますわ。」


「.....それで?」


「貴方方が文様付きの神子石と呼んでいるものは、その私有地の中でわたくしが買い取った代物ですの。」


「—――――やっぱヤクじゃねぇか。」


「そうなんですの?」


「あの石を持ってる人間がやたらとギャンブルで大勝ちしてたのは偶然じゃねぇ。石の力だ。お前の投げたそこにある機関銃も神子石で出来てる代物だ。まさか、あの石の力を知らないのか?」


「あの機関銃は、父上から授かった代物ですわ。父上は、貴方方よりも前に、RoPのメンバーだった方ですの」


「っ!?今なんつった!?」


「あら、御存じありませんでしたの?まぁ無理もないですわ。もう50年以上も前の話ですもの。」


「—――お前意外と年食ってるのか」


「はっ倒されたいんですの?」


「もうとっくにお前のせいで横になってるよ。」


「—――わたくしはまだ20代、ピチピチのレディですわ.....もしかして、それは「友人同士での独特なコミュニケーション」と言うものなのかしら?」


「あぁ?」


「親しき中にも礼儀あり。ですが、それすら打ち解けた先にある友情というのは、わたくし知りませんの。カルサイト、でしたわよね。匿ってくださると言う事でよろしくって?」


「なんでそうなんだ......」


「少なくとも、今のわたくしは貴方方に協力的ですわ。とは言っても、少し中立寄りですけど。取引ですわ。協力してくださるのなら、わたくしの知ってる情報を全て差し上げますわ。その代わり何度も言いますわ。匿ってくださいまし♪」


最初に言った時と同じトーン、目線で、オーキッドはカルサイトに頼み込む。「はい」と頷くまで、カルサイトは折れるまで、この鉄壁の牢獄から抜け出すことは出来ないらしい。


   To be continued.

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