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Episode:【RoP】後編

〈旧校舎3階階段〉



カルサイトが階段の上から、少しずつ実習室の方へ視界を伸ばして行くと、生徒は準備室の前に待ち構えていた。


「—――だりぃ......」


「ハッ!!そこだなァ!!!!!」


「地獄耳かよ!?」


生徒はカルサイトを追って階段を駆け上がる。だが、生徒が踊り場に立って、上を見てもカルサイトは居なかった。そして、生徒は階段を駆け上がり、死角となっている場所を見渡したが、やっぱりカルサイトは何処かへ消えていた。そして、生徒は再び徘徊を開始した。


「—――バレてねぇな。」


カルサイトは生徒が階段を駆け上がると共に、生徒の死角に入ったタイミングで階段を飛び降り、準備室へと入った。


「—―――――さてと、ブツを探すか。あんま考えたくねぇが、最初準備室の前に居たのは担任だろうな。んで、アイツと会った時片手を切られたのが実習の先生と言った所か。それだけでもいくつか仮定は経つが、核心には至らねぇ。後はあの剥製の生徒達だ。全員居る訳では無かったみてぇだ。席が余ってたからな。ん?って事は生き残りが居るかもしれねぇのか?」


カルサイトは頭を回転させながら、実習室を漁る。そして、カルサイトが冷凍庫を開けると、うずくまった形の死体がこちらへと倒れて来た。


「—―――あ?......似てるな。だったら大分見えて来たぞ。」


カルサイトは死体の目元を少しだけ温め、瞳を閉じると、その場を後にした。

その後、反対側の実習室も見たが、特に眼に留まるものは無かった。



〈旧校舎2階、3年2組〉



「—―――」


生徒は必死になってカルサイトを探す。カルサイトは生徒に背後から近づくと、窓が割れないように椅子を投げつけた。

生徒は直前になって気付き包丁を振ったが、それが椅子だとは気づかず、顔面から食らい倒れた。


「てめぇ――――!!!!!」


「復讐ってのは、どんな形であれ、許されるもんじゃねぇ。まぁ、しかるべき機関の俺らが、何も出来なかったのもある。だから、俺らにも非はある訳だ。」


「うるせぇ.....!」


生徒は立ち上がると、怯みながらも、包丁を向ける。


「お前に何が分かる!!!!」


「やり方を間違えた。結果がどう伴ったかは知らんがな。だったら、何故手遅れになるまで動けなかった?」


「うるせぇうるさいうるさい!!!!分かったような口を利くんじゃねぇ!!!」


「分かった。だったら、どうして欲しい?」


「—――は?」


「やっぱりな。」


カルサイトは壁に背中を預けると、包丁を前に何一つ物怖じせず続ける。


「そう、これは負の連鎖だ。一度回り始めたら、誰かが止めねぇと絶対に終わる事は無い。だが、ほとんどの場合、それを止める英雄は現れない。今の社会と同じだ。お前は一人で、それを断とうとがんばってたんだろ?だが、ダムは永遠にそこに溜まる水をせき止められる程頑丈じゃねぇ。この世界に絶対は無い。だから、結局お前も負の連鎖に巻き込まれたんだ。」


「っ―――」


生徒にはカルサイトの言葉の1つ1つを、どういった敵意なのか考えると言う思考しか残っていないはずだった。だが、そんな生徒の目には確かに、涙があった。


「心の中で、何度だって慰めた。自分を説得し続けた。それが爆発した結果、こうなった自分の行動に対する免罪符として働いてしまった。お前は、担任と自分の母親を殺して、自分をいじめたクラスメイトも手にかけた。とんでもねぇ悲劇の殺人鬼になっちまった。」


「黙れ!!!俺の制裁は間違ってない!!!どうせ俺がお前らに助けを求めたって!!!あいつらが苦しみながら死ぬ事なんて!!!!俺みたいに苦しみながら生きる事なんてない!!!!!俺は......どうせ.....何も成し遂げられない......だから殺すんだ!!お前らもやらないような酷いやり方で!!!そして!!!!俺は夢を叶えてやる!!!死んだ奴らを見下せる!!ざまぁみろってんだ!!!!!!」


「—――もう喋るな。」


カルサイトは廊下に出る。それを追う様に生徒はカルサイトに斬りかかると、不思議な事に、カルサイトは背中からの刺し傷をあっさりと受け入れた。


「—―――」


「は?」


「へッ、ビビったか?だったら所詮、お前の覚悟はいじめっ子と同じだな?」


「黙れ!!!!」


カルサイトは挑発に乗った生徒の攻撃を軽くあしらうと、そのまま新校舎へと向かった。


「1発はサービスしてやるよ。流石に今のお前を見てると哀れでしょうがねぇからな。」


「死ね!!!!!!」



〈新校舎2階〉



カルサイトが3回を経由して新校舎まで辿り着くと、実習室から続く異臭がここまで来ている事に気付く。


「へッ、もう少しだ。だったら――」


カルサイトは振り返ると、生徒の方へ構えた。


「あぁ?」


「来いよ。」


「舐めやがって!!!」


生徒はカルサイトへまっすぐ伸ばす。だが、それよりも速くカルサイトは生徒の腹に一撃入れると、そのまま生徒を突き飛ばした。


「ぐっ!!!!?」


「全部ぶつけて来い。死ぬつもりで来ないと、俺には勝てんぞ。」


「くそっ!!」


生徒は起き上がると、再び正面からカルサイトへ向かう。今度はカルサイトの腹部に向けた攻撃を警戒してか、カルサイトの横側へ回り込んだ。


「悪くねぇな。だがまだ足りねぇ。」


カルサイトは生徒の顎を蹴り上げると、生徒のナイフをはたき落とし、そのまま生徒を回し蹴りで蹴飛ばした。


「さて、お前の頼みの綱だった武器が俺の近くにあるぞ?どうする?」


「くっ、」


生徒は既に壁に数回身体を打ち付け、体の軸が歪んでいた。

だが、それでも生徒はカルサイトに向かって来る。カルサイトは足元のナイフを蹴飛ばすと、生徒の脚に命中し、生徒はその場に倒れた。


「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」


「ハァ、まだ分からねぇか?」


「黙れ黙れ黙れ黙れ!!!!」


「チッ」


カルサイトは生徒に近付くと、生徒の声帯を奪った。


「っ――――!!!!!」


「ハァ、ったく、はじめてだぜ?俺の腕を切断してきた野郎は。しかも年下に。だっせぇな、俺」


生徒は尚も叫び声を上げようとする。カルサイトは抵抗できなくなった生徒の横に座ると、ポケットから棒付きキャンディーを取り出した。


「お前も食うか?」


「っ、」


生徒はそっぽを向く。どうやら観念したらしい。


「ま、受け取り辛いだろうよ。色々蒸し返して正気になりかけてる今のお前じゃな、」


カルサイトはキャンディーを口に咥えると、片手を懐に突っ込んだ。


「じゃあ、どっちがいい?」


「っ―――?」


カルサイトが懐から取り出したのは、ライターだった。


お前にも分かるだろ?それとも、さっきまで料理してたから嗅覚が鈍ってるか?


「—――――――!?」


「へッ、気付いたみてぇだな。」


カルサイトのライターの前で目を見開きながら、生徒は必死に声を上げようとする。


「—――まぁ落ち着けって。まだ着火しねぇよ。話聞けや。」


生徒は怯えていたが、それでも聞く耳は持ってくれたようで、大人しくカルサイトの隣で俯きながら座った。


「よし。そんで、どうだ?「まともなカウンセリング受けた気分は?」」


「—―?」


「担任の生徒とお前の母親が同時に学校に居るタイミング。ぱっと浮かぶのは授業参観か、なんかでけぇ行事ごとだが、それらしい装飾はねぇし、高校じゃ授業参観なんてやんねぇだろ?そんで、次に浮かぶのが、お前が何かやらかした可能性だ。まぁ、実際やらかしてはいるな。だがそれはここに来た後だ。」


「—――!!」


「正解みてぇだな。あの教室にある剥製。歴史に名を刻む程のサイコキラーじゃねぇ限り、よっぽどの恨みが無けりゃああんな事はしねぇ。だが、素のお前は俺と意思疎通できるみてぇだった。こうして話を黙って聞けてるのがその証拠だ。」


「—――!!!!」


「ハッ、言いたい事は分かるぜ?お前の声帯を奪って一方的に俺が喋ってる。これじゃあ説教みてぇだもんな。んで、話を戻すと、俺の推理が正しければ、お前はいじめを受けていた。ただやり返すだけなら、先生に相談するとか、自分でやり返すだけでいい。だが、こんだけの事になっちまってるって事は、相談しなかったか、相談するだけ無駄だったんだろう。んで、我慢の限界に達したバケモンが誕生しちまった訳だ。」


「......」


生徒は酸欠を起こしながら、それによる独特な音を発しながら涙を流す。身体が人形のように言う事を聞かないのか、その涙を隠そうとも、拭おうともしなかった。


「—――後悔、してるんだな。安心しろ。尊厳くらいは守ってやるよ。少なくとも今のお前は、人間なんだから。」


カルサイトは、自身の前にライターを伸ばす。


「もし、お前が地獄で、自分のした事を悔い、改めようとしているのなら、俺はお前の事を、忘れねぇ。」


生徒はふとある思考に至ったのか、カルサイトの方を向く。


「へッ、そんな事をしたらお前も死ぬぞ!!と言わんばかりの視線だな。」


「—――」


生徒は心を見透かされてる気分に陥り、少しだけカルサイトを睨んだ。


「俺の仲間に心が読める奴が居んだ。そいつから読唇術齧らせてもらってな。任務じゃ結構役に立ってる。んで、お前の疑問に答えてやろうか?おかしいな、俺の左腕、もう再生してやがる。」


「!?」


「へッ、種と仕掛けしかねぇぜ。もやもやしたまま死にな。左腕の仕返しだ。んじゃ、もういいな?」


「—―――――」


(私は、心を打ち明けられる誰かが欲しかった。誰でもいい。黙って寄り添ってくれるだけでもいい。ただ、この孤独を、癒したかった―――――)


「スゥー―――――気合い入れろよ。カルサイト。」


カルサイトは腹を括ると、ライターの火を点けた。


「―――なぁ姉貴。俺、ちゃんと出来てたか?」


―――


次の瞬間、カルサイトの視界を覆う暖かい色。それは外に居た2人にもはっきりと見えていた。


「!!!!???カルサイトさん!!!!」


「はぁ!!!??馬鹿じゃないの!!!??っ!?まさか―――」


ゾイサイトは戦慄した。建物を密閉したのは2人の役目。目の前で起こっている大爆発は、この手で、自身の先輩にあたる人物を手にかけるも動議だったからだ。


「—――違う、こんな事がしたかったんじゃない。違う――――!!!!」


ゾイサイトは発狂しそうになっていた。まさか初仕事で、こんな事をするとは思わなかったからだ。


「ゾイサイトさん!!落ち着いて下さい!!!」


「落ち着いてられる訳無いでしょう!!!!???むしろどうして貴方はこの状況を可笑しいと思わないの!?」


「とにかく落ち着いて下さい!!!!説明しますから!!!!」


「はぁ!!!??目の前で人が死んでるのよ!?出来る訳無いでしょう!!!!???」


「カルサイトさんは!!大丈夫ですから!!!!」


「—――――は?」


「—――――」


ゾイサイトがパニックになっていると、玄関の陰に人影が見えた。


「っ!?」


「ゾイサイトさん待ってください!!危ないですよ!!!」


ゾイサイトはマーカサイトの制止を無視して、玄関へと向かう。ゾイサイトが割れたガラス張りの玄関から中に入ろうとした時だった。

もう一度爆発が起こると、中からガラスの破片がゾイサイトへと飛んで来た。ゾイサイトはそれを躱そうとしたが、次にゾイサイトが見たのは、足元に転がる誰かの右手だった。


「—――は?」


「—――――だから、外で大人しく待ってろと言ったろ。」


「え――?」


ゾイサイトが声のした方を向くと、陰に居たのは全身風穴だらけのカルサイトだった。正直、なんで生きていられるのか、どうして平然と喋れているのか、カルサイトですら分からなかった。


マーカサイトさんは状況を察し、黒いシートでカーテンを立てると、カルサイトの傷口に刺さるガラスを冷静に抜き始めた。ゾイサイトは今だ目の前の光景が信じられず、その場に立ち尽くしていた。途中、マーカサイトが説得しようとしたが、彼女の言葉すら一言も耳に入ってくる事は無かった。


  Episode:【RoP】、完。

互いが互いを蝕む呪い、人が望んで侵される呪い

死して尚、それは受け継がれて行く

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