#34『祭礼者と無垢な邪心』
〈本能の街、ライブステージ〉
「何があったの?」
「見りゃあ分かる。行くぞ!!」
カルサイトは4人を連れて、ライヴステージに戻った。そこには、本能の街の住人達が地に伏す姿と、この世のモノとは思えない光景が広がっていた。
空を飛ぶ無数の黒い鳥、宙吊りのブルーローズ、セットの上に立つ、それらの元凶。
「お前だな。こんな騒動起こしたのは。」
『騒動?皆と遊んでただけ。ほら、楽しそう。』
少女が操作盤を鳴らすと、カラス達は人の声で鳴き空を舞う。
「—――正気じゃねぇ。」
「お、おい、兄妹。気を付けろ―――」
『私が喋ってる。あの子と私が喋ってる。邪魔しないで。』
「ぐっ!!」
男は少女に糸で首を絞められ、そのまま吊られそうになる。カルサイトは咄嗟に状況を見抜くと、男の頭部より上に向かって思いっきりナイフを振りかざした。すると、吊られかけた男はその場に伏し、絞めていた糸も消えた。
『咄嗟の判断、タダ者じゃない。でも、まだダメ。』
「ん?うわっ!?」
「カルサイト!!」
カルサイトはナイフを持った手首を糸に捕まり、そのまま引っ張り上げられると、ステージの隣にある建物の壁へ勢い良く投げ飛ばされ、そのまま砂埃と共に壁を突き抜けて行った。
『—――貴方達は?何処まで出来るの?』
「舐めた真似をしてくれるわね!」
ゾイサイト達は地に伏した男の前に立つと、それぞれの武器を構えた。
『—――じゃあ、遊んであげる。』
少女は再び操作盤を鳴らす。すると、空を舞っていたカラスが退路を断つように着地し、建物の陰から一斉に、人型の人形が飛び出して来た。
「多くない!?」
「集団戦なら、こっちのが!!」
3人はそれぞれの武器を振るい、次々と人形を片付けて行く。
『—――1人は破裂する結晶?破裂したら熱い。火薬?1人は、筋肉?ふぃじかる?おもちゃをいっぱい持ってる。もう1人は―――』
クリスはパールと連携して、糸を焼き切って行く。そんな中、背後からクリスへ魔の手が迫る。
『遠距離は、厄介。先に仕留める。』
人形がクリスの脊髄に手を伸ばした、その時だった。
「—――いつ武器が1つだけだと言った?」
クリスは懐から拳銃を取り出すと、2丁の銃を同時に発砲した。
『—――前言撤回。ふぃじかるが2人。』
「ねぇ、上に居るあの娘をどうにかしないとなんじゃない?」
「—―どうする?」
「私に任せて。2人であっちに!!」
『—―ばか?』
クリスとパールは互いに少女をロックオンすると、結晶と共に少女に向かって一直線に跳び上がった。
『空中において、貴方達は私の傀儡と同義。綺麗な目―――コレクションしてあげる......ん?』
少女は2人を迎え撃とうとする。だが、それと同時に何処からか響く異音に気付く。
「—――に乗ってんじゃ、」
「ねぇ!!!!」
『—―――!?』
カルサイトが跳ばされた建物の中から、全身火だるまの男が飛び出してきた。
『—――は?』
「「(えぇ!?)」」
さすがの仲間もこれには驚愕し、目標から目を逸らしてしまった。少女もそれらに対応するどころでは無く、後方に下がり全身を燃やしたカルサイトの攻撃を回避すると、この場からの逃走を試みた。
「ちょ、何してんの!!!??」
「悪いがこれしか浮かばなかったんだ!!俺はあいつの後を追う!!お前らはそいつらを安全なとこに連れてけ!!!!」
クリスとパールが地面に着地すると、少女の後を追うカルサイトが建物の陰に消えるまで視界に捉えていた。
「—――ハァ、どうしていっつもこう無茶な事ばっか......2人も後を追って。この人達は何とかするから。」
少女が去ったと同時に、カラス達は糸が切れたかのようにその場に伏し、それは人の形を取り戻して行った。
「—―幸い息はあるみたいね。気を失ってるだけ。さぁ、早く!」
「「分かった!」」
クリスとパールは建物の屋根の上に昇ると、遠くに見える火とその煙を追った。
〈本能の街北東部〉
「待ちやがれ!!!!」
『火遊びは久しぶり――フッ、貴方面白い。どれだけ遊べる?』
カルサイトは屋根から屋根へと跳び移り、全速力で少女を追う。既に車の如きスピードを出していると言うのに、まるで少女との距離が縮まらない。
『そうだ、悪いこと思いついた。悪い事は好き。ここでは、怒られる心配はない。だから好きなだけ出来る。』
「あァん!!!?」
『これでもくらえ―――』
少女は屋根の下へ無数に糸を伸ばすと、路地からカラスが数羽姿を現し、それは真っ直ぐとカルサイトへ向かって来た。
「はぁ!!!!???ぐっ!!」
カルサイトはその内の2羽に当たると、その重さで路地裏へと落下した。
「クソが。しまった!?」
カルサイトがカラスを見ると、既にそれは人の姿に戻っており、自身の身体の火が彼らに移っていた。カルサイトは咄嗟に気絶している2人をどかすと、たまたまあったドラム缶を蹴り倒し、中の水を2人にぶちまけた。
カルサイトが再び屋根の上へと復帰すると、既に少女は自身の人差し指程の大きさになっており、少女はその先にある工場に着くと、パイプの森を縫って行った。
「まずい、ここは見失っちまう――!」
「カルサイトさんだっけ!?なんで燃えてんのか知らねぇが、イカしてんな!!」
「あの工場はもう機能を停止してる!!好きに暴れて構わねぇよ!!」
「—―!!そうかよ。じゃあ、」
「お言葉に甘えさせてもらおうかァ!!!!」
カルサイトは勢いのままパイプの森に突っ込むと、頭突きだけでそれらを破壊して行った。
「死ねェェェェェ!!!!!!」
カルサイトは脳を焼かれているからか、ハイになったまま視界に映る障害物を全てその身一つで破壊して行く。そうして少女を探して奥まで進んで行くと、束になった糸に足を取られてしまった。
「は?」
『糸はそんなすぐには燃えない。そういえばそうだった―――』
「クソがァァァァァ―――――!!!!」
カルサイトは振り返ると、次第に遠く離れて行く少女に向かって叫びながら、穴に落ちて行った。
〈本能の街北東部、工場跡B3F〉
カルサイトは穴の底に溜まっていた水に勢い良く飛び込むと、薄暗い中何とかそこから上がった。
「はぁ―――はぁ―――流石に調子乗り過ぎたな。次やる時は―――いや、気持ち悪ぃ、やっぱもう二度とやらねぇ。」
カルサイトは懐から懐中電灯を取り出すと、壁が昇れないか確認し、近くにあった扉の奥へと進んだ。
〈工場跡〉
『—――すとーきんぐ?消化はしたけど、暗くって狭い所は嫌い。太陽、あったかい。』
「見つけた!!!!」
クリスは工場の高所から、少女に狙いを定める。
『......もう一人は?まぁいい。どうとでもな―――』
少女が言い終える直前、パールは少女の懐に潜り込むと、少女の顔面に向かって思いっきり結晶をぶつけた。
「手応えが―――無い!?」
『ばかばっか。』
少女はパールの背後から姿を見せると、そのままパールへ糸を伸ばした。
「させない!!」
クリスは咄嗟に少女へ発砲する。だが、それもまた偽物であり、本物はカルサイトが落ちて行った穴から姿を見せた。
『—――ちぇっくめいと?』
To be continued.




