#28『Cock the hammer.』
展望室に戻った一同は、ゾイサイトから飲み物を受け取ると、1口飲み、口を開いた。
「俺らは今、この神子石って言う石について調査してる。」
「......ネックレス。同じ見た目の石でした......」
「......あぁ。そんで、こいつは本能の街から流れて来てて、最近これの事件が多くなって来ている。今日の昼間も、それでそこそこでかいのに巻き込まれた。んで―――その、あんたの妹さんも、本能の街に通ずる何かしらで、この石を受け取ったんだろう。神子石って石は本来、こんな文様無いんだがな。あんたの周りで奇妙な事が起きてたってのは、予想通りこいつの仕業だ。」
「......私は、どうしてもここに来てはいけないのでしょうか?」
「ん?」
「勿論、この場所が好きだからって言うのもあります。ですが、それは妹も同じだったからです。幼い頃、よく妹と一緒にここに連れて来てもらってました。親の元を離れてからも、2人で来てて。ここに居る間は、こんな姿の妹とも、なんとなく、話せてる気がして......」
「うーん......どうしよ」
「さすがに止めづらいですね。」
「とりあえず、この件は持ち帰る。後日また来る事にしよう。構わないか。」
「分かりました。」
「そんじゃ。」
カルサイトが軽く手を振ると、一同は少女に別れを告げその場を後にした。
〈翌日—――暁の館〉
「にしても困ったね。」
「あぁ。さすがに命の危険を冒すリスクのある人を放ってはおけない。」
「ん?どうしたの?2人ともそんな悩んで」
「え?」
2人が自室の入口を見ると、ライラが開けっぱなしのドアから中を覗き込むようにしてこちらを見ていた。
「あぁ、どう説明しようかな......」
「事故物件みたいな噂が出てる展望台があって、そこの常連の女性が、展望台に来る客が少なくて困ってるって。」
「それだ!」
「ふーん、じゃあいい事思いついた!」
「良い事?」
「2人共、スマホ持ってる?」
「うん、持ってるけど―――」
「じゃあ、数日後にニュース見てご覧?全部解決してるから♪」
「......?」
2人はきょとんとしていたが、ライラの事を信じて待つ事にした。
〈数日後—――〉
≪チィーッス!クレマチスちゃんのおでましだよ!!初めての人も居るだろうから私の事教えちゃうね!!私は、理性の街のいろんな場所にある、有名な観光スポットから珍しいスポットまで!幅広く紹介しちゃう旅する系の女の子!!今日はこの場所!理性の街の西南西部にある天文台に来てまーっす!!—――≫
「ん?それあれか、最近話題の、」
「はい、インフルエンサ―のクレマチスちゃんです。今日上がった動画で、先日行った展望台が紹介されていたもので、少し気になりまして。」
「ほーん、」
≪ねぇねぇ展望台さん!私とコラボしよっ!こう見えて私、宇宙とか詳しいんだー!—――≫
「それ、動画で言っていいのかよ......」
「こういう、所謂メタい所も、魅力の1つだそうで」
「まぁ、欲望に忠実なのは、人間らしさが出るし、ある意味見る人に近い存在として良いのかもしれんな」
その後、クレマチスの訪れた展望台は、聖地巡礼や追っかけのファンにより、再び元の客足に戻るどころか、それ以上にまで昇るのだった。
「確か、ニュースがどうって言ってたね。」
「あぁ、そういえば。何々?「正体不明の気まぐれ旅系女子、クレマチスが展望台をジャック。事故物件の噂も嘘の様に、売り上げが滝登り」」
「え?」
「人を隠すなら人込みの中。どうよ☆」
「あぁ、確かに。ありがとう。でも、クレマチスって?」
「秘密ね♪私の通ってた学校の友達なんだ♪活動初期の頃に、私も動画に出てたりする♪」
「そうなんだ、すごいね!」
「でっしょー!私の見る目は間違ってなかったね。あの子は「でっかくなる」って」
〈理性の街西南西部、天文台〉
「っ―――」
あっという間にかつての賑やかさを取り戻し、星々は来るもの全てを、その温かい光で迎え入れる。
「—―ふふっ、ちょっと窮屈かもしれないけど、これなら、前よりは遥かに安心できるかもね。リナ!」
(周りに悟られない声量で嬉しそうに鳴く声)
〈さらに数日後—――ペグマタイトタワー地下1階、作戦室〉
エリナに呼び出され、作戦室に集った一同は、机を囲み、中央に置いた神子石を眺めていた。
「とりあえず、状況を整理しようか。君達は先日、西にあるデパートにて無差別の襲撃に巻き込まれ、さらにその夜には天文台で襲撃にあったと。」
「本当にもう時間が無いって感じだな。今すぐにでもなんか動かねぇと。」
「そこでだ。ひとまず街中にこれを張ると共に、ネットにも拡散する事にした。」
エリナが差し出した紙には、自分達が追っている神子石についている文様に関する注意書きが書かれていた。
「逆にやって無かったのか......」
「何かあってからじゃ遅いよな。私も反省している。それともう一つ。神子石絡みの事件の増加に伴い、君達を二組に分ける事にした。」
「えぇ?まぁ確かに。毎回5人で1件ずつ回ってたら効率悪いわね」
「あぁ。そんで、どう分けるんだ?」
エリナは手の平を横向きにして、カルサイトとパールが座っている席の間に伸ばした。
「えぇ!?さすがにパールさん達の方に、私達の誰かが要るんじゃないですか?」
「まぁそれも考えたが、この方が色々と都合が良くってな。理解してくれ。」
「まぁ、ある程度2人の腕は買ってる。実際デパートんときは2人が解決したようなもんだしな。」
「よし。では早速、3人には任務を与える。2人はこちらの指示があるまで、パトロールにでも行ってきてくれ」
「はーい!」
「あぁ」
〈理性の街中央南部、商店街〉
「パトロールと言っても、何すればいいんだろ。」
「うーん、散歩?」
2人は街中を見渡しながら、気まぐれに各所を巡っていた。
「それだとサボってるみたいになっちゃわない?」
「でも今の私達、やってること大して変わらなくない?」
「それもそうか......じゃあ、その辺でなんか買って食べ歩きする?」
「いいね!名案!!でも、さっき昼ご飯食べちゃったから、半分こね」
2人は近くにあった肉屋でコロッケを買うと、半分に分けた。
商店街を抜ける直前、2人は見覚えのある張り紙を目にする。
「ねぇ、これってさっきの?」
「あぁ。もうここまで張られてるんだね」
「あれ?」
2人が張り紙の前で立ち止まっていると、聞き覚えのある声がした。
「2人共なにしてるの?」
声のした方を振り向けば、やっぱりライラが居た。
「あぁ、奇遇だね。」
「その張り紙は?」
「今、私達が調査してるもの。危ないからこういう文様見かけたら、近付かないようにね」
「ふーん、ねぇ、それってどういうものに付いてるの?」
「うーん、今の所、石とかかな」
「それって、空き巣が目星をつける為に置く奴みたいな?」
「あー、大体合ってるかも。」
「それならさっき、おめめがそんな文様?になってた人とすれ違ったよ?」
「「え?」」
To be continued.




